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プロ野球にとって正義とは何か―落合解任と「プロの流儀」vs.「会社の論理」
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「補強凍結」の裏にあった落合の美学

『プロ野球にとって正義とは何か―落合解任と「プロの流儀」vs.「会社の論理」』
[著]手束仁 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:3分
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 土壇場になって苦肉の策のような形で成立した落合博満の新監督就任だったが、それでも、球団は次の指揮官が決まったことで安堵(あんど)していた。

 当初はまったく予定していなかった落合の就任だ。たしかに選手としての落合は三冠王を3度獲得しているし、獲得タイトルは首位打者、本塁打王、打点王がそれぞれ各5回、最多勝利打点も5回記録している。さらにはMVPも2回受賞し、ベストナインには10回選出されている。選手としての実績は文句をつけようがないすばらしいものである。

 しかし、1998年に現役を引退したあとは、わずかに臨時コーチを務めただけで、正式なコーチ経験はない。果たして指揮官としてどうなのかという不安が球団にあったのはたしかであろう。

 とはいえ、中日は表向き2年契約をしていたが、次期監督の目処(めど)がついたら2年、場合によっては1年でもかまわないという腹もあった。外様の落合は、あくまでも窮余の一策の代理監督という発想だったのだ。それに落合の監督としての力量がどれくらいなのかということはわからないというのが本音でもあった。

 だから、その場しのぎというわけでもないが、手っ取り早く結果を出したいであろう指揮官に対して戦力補強を打診した。とくに卓越した打者だっただけに、大砲などの派手な選手は必要なのではないかという配慮もあった。

 ところが、落合は監督に就任して、球団に対しては取りたてて新戦力を求めなかった。
「特別な補強はいりません。現有勢力で十分戦える。いまの力を10%底上げすればいいんじゃないの」

 ということまで公言。とくに周囲をビックリさせたのは、強力な四番打者について問われたときに、高橋光信(たかはしみつのぶ)幕田賢治(まくたけんじ)田上秀則(たのうえひでのり)(現ソフトバンク)らの若手を育成する方針を打ち出したことだった。いずれもほとんど実績のない若手選手である。それを四番候補として指名して競わせたのである。あれだけの打者だった人がそういうのだから、彼らの中から大化けする選手が現れるかもしれないという期待感も高まった。

 落合監督の「現有勢力で十分」という発言の根底には、選手の能力を引き出すのが監督の仕事だという考え方があった。そして具体的な形で選手にも課題が与えられた。これも周囲を驚かせた。

 そのひとつは、「キャンプ初日に紅白戦をやって、それで判断するから、それまでにしっかり体をつくってきて挑んでくれ」ということを伝えたことである。つまり2月1日には万全の状態であることを求めていたのである。

 さらには、キャンプでは通常の3勤1休というシステムをやめて、6勤1休というハードなものとなった。
「いまのプロ野球は1週間のうちに6日は試合があるのだから当然のことでしょ」

 という発想だった。

 これらを「奇をてらったもの」として捉えるマスコミ報道が多かった。それでも「現有勢力の10パーセントの底上げ」という落合の考え方にブレはなかった。
「プロに入るような選手はみんな能力を持っている。それを見きわめないで、よそから補強するというのが、オレにはわからない」

 そんな発言をしたこともあった。それは大型補強を推進しているチームに対しての痛烈な皮肉にも取られたが、自分が社会人野球から見いだされたこともあって、落合自身の実感だったろう。

 そうした落合監督の本気の姿勢に危機感を持ち、井端弘和(いばたひろかず)荒木雅博(あらきまさひろ)といったピークを迎えようとしていた中堅勢が必死に練習した。この年の中日は間違いなく12球団一の練習量だった。

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