読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

犬耳書店はRenta!へ統合いたします

(2021/11/26 追記)

犬耳書店の作品をRenta!に順次移行します。
詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

0
-1
kiji
0
1
1055022
0
この世界はあなたが思うよりはるかに広い
2
0
28
0
0
0
0
雑学
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
体罰を肯定する人の二つの特徴

『この世界はあなたが思うよりはるかに広い』
[著]鴻上尚史 [発行]扶桑社


読了目安時間:4分
この記事が役に立った
28
| |
文字サイズ





 やっと5月に公演する『キフシャム国の冒険』を書き終わりました。書き終わった翌日、体重を量ったら、2・5キロ、やせていました。相変わらず、執筆は重労働だなあと思います。


 さて、何週間か前、「体罰」について続きは来週と書いたまま、ずっとほったらかしにしてました。


 あの続きはどうなったの?という問い合わせは、ツイッターでもフェイスブックでももらってはないのですが、書きたいので書きます。

「あなたは体罰を肯定しますか?」と聞かれた時、「肯定する」と答える人には、二つの特徴があると思っています。


 ひとつは、体罰を受け、それを我慢し、それは必要なことなんだと自分を強引に説得してきた人が「肯定する」と答えるということです。


 自分はそれが必要だと思って我慢したのに、今、「体罰は不必要だ」と答えてしまったら、自分の忍耐や努力自体が無意味になる、そんなことは嫌だ、この質問自体、耐えられないという考え方です。


 親の言う通り自分の夢を諦めて就職し、親の期待通りの人と結婚した人が子供を持ち、子供が夢を追う職業につきたいと希望した時に感じる「私は(あきら)めてきたのに、ここで子供の自由や夢を認めてしまったら、自分自身の忍耐は一体なんだったのか」という感覚に近いだろうと思います。


 もうひとつは、体罰を「親子関係」で考える人は体罰を肯定する傾向がある、ということです。


 虐待はもってのほかですが、子供があんまり聞き分けがないので思わずお尻を叩いたとします。小学生になる手前の時期が多いと思います。言葉ではうまく伝わらない3歳から5歳ぐらいまでの期間でしょうか。その時、お尻を叩いても、その夜、親と子供は一緒に食事をします。次の日も、同じ時間を過ごします。


 これが「ラポール」、つまり、信頼や親愛の情を生みます。(この単語は社会心理学的に基本の言葉で、間違っても、自己啓発セミナー専門の言葉ではありません)


 お尻を叩いた親に反発しても、同じ家に住むことで、相手との信頼関係が修復され、続いていくのです。


 親子だから親愛の情が自然に浮かぶのではありません。同じ時間、同じ空間を共に生き、最低限の言葉でも交わすから、(多くの場合)信頼が再び生まれたり、修復されたりするのです。(もちろん、程度によります。日常的に叩き続けていれば、信頼は壊れ、回復しません)


 繰り返しますが、それは、親子だからというより、同じ時間・空間を過ごすことで、相手との親和的な感情が生まれるということなのです。


 これが、一か月に一回しか会わない親にお尻を叩かれたとしたら、簡単には、「ラポール」の感情は修復されないだろうと思います。叩いた夜に別の家に帰る親なら、信頼の感情を回復する時間がないのです。


 そもそも、共に過ごす時間の少ない相手には、たとえ親であっても、お尻を叩いても壊れない強い「ラポール」の感情が浮かぶことは難しいだろうと思います。


 つまり、部活の時間しか会わない教師には、そもそも、この「ラポール」の感情が自然発生的に生まれると思ってはいけない、ということなのです。

「体罰を肯定しますか?」という質問を受けた時、親子関係の体罰を手掛かりに考えてしまうと、クラブ活動やスポーツチーム内の体罰とはまったく関係のない回答になってしまうのです。親子関係ほどの時間や空間を共有してないのに、親子関係の体罰の記憶だけを抜き出して肯定しても意味はない、ということです。


 親子関係でも、物心がついて、言葉がちゃんと通じるようになると、頭ごなしの体罰に対して、子供は反発するようになります。体罰の後、信頼関係を修復するのは、難しくなるのです。


 教師やコーチが指導する相手は言葉がうまく通じない幼児ではなく、一人の人間なのです。


 思わず手を上げてしまう人は、自分の過去の体罰の記憶に頼って、なんとかなると思っているか、「ラポール」の感情がないのに親子関係を持ち込んでいるのだと思います。


 どちらも、うまくはいかないだろうと僕は考えるのです。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
28
残り:0文字/本文:1646文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次