タキトゥスが『ゲルマーニア』を書いたときは、やはりローマと比べて書いていると思います。ローマ人の教訓になるようなことを、教訓という形ではなく、書いているような気がします。
では、具体的にはいったいどんなことが書かれているかというと、次のようなことです。
「ゲルマーニア諸族は、何ら異民族との通婚による汚染を蒙らず、ひとえに本来的な、純粋な、ただ自分みずからに似る種族として、みずからを維持してきたとする人々の意見に、わたくし自身も同じるものである」(タキトゥス『ゲルマーニア』泉井久之助訳注・岩波文庫・四〇~四一頁)