いま異国のこの場所には中国人しかおらず(あたり前だ)、ひとりだけ日本人の僕が混ざっている。日本で両親や恋人、友人がいなくて寂しいとか、国内をひとり旅していて孤独を募らせても、結局は日本語が通じる土地で日本人に囲まれている。だから、その時感じる孤独の奥底には、自分も周りも日本人だという安心感がある。ところが異国の地では、日本人同士なら感じることのない言葉や文化の壁が山ほど生まれる。「トイレに行きたい」「コップ一杯の水が飲みたい」なんて簡単なことでさえ意思表示できない。さらに旅先では、バスに乗り、日が暮れたらどこかに泊まり、どこかでごはんも食べなければならない。