失意のままウルムチに到着。ウルムチは世界でもっとも海から遠い街と呼ばれるほど中国でも最内陸部に位置する街で、ここまでくると、日本人は極端に珍しい存在となる。
今回は天安門での失敗を生かし、さっそく宿探しをすることにした。選んだ宿は一泊数百円で泊まれる八人部屋のドミトリーで、パキスタン人の四人連れの行商と同室だった。中国とパキスタンは標高約五千メートルの山脈で国境が繋がり、ウルムチを拠点にパキスタンとの商業ルートが確立している。そこで中国製品を仕入れるために、パキスタン人の行商が、しばしばウルムチを訪れるのだ。
しかし、その道のりたるや日本の最高峰である富士山を越えるよりも、遥かに厳しい道のりである。パキスタンから中国に入るには、K2を有する巨大なカラコルム山脈を越えなければならない。登山が好きな人にとって、K2という名前はあまりにも有名だろう。急な傾斜や不安定な天候から、世界一の標高を誇るエベレスト以上に登頂が難しいと言われているのだ。その山越えには車でも三~四日は必要になる。