トキーラの育った村では、祖父も父親も「貧しいままでいるのは嫌だ」と言いながら一生を終えていく。そんな現実を見てきたからこそトキーラは、生きることに対するアプローチがストレートなのだ。彼らは世界には裕福な暮らしをしている人がいることを知っていて、自分たちが貧しいことも知っている。普通に生きているだけでは、永遠に貧しい暮らしから脱出できないことも知っている。脱出できないどころか不安定な暮らしは、いつ破たんするかもわからない。それが村の歴史であり、国の宿命であるならば、貧しさから抜け出すチャンスさえあれば、善悪や良心の呵責に躊躇することなく、豊かな世界に向かって一瞬でも開いた扉を一気にくぐり抜けようとする。