試験勉強にはげみながらも、いつも頭の片隅には、旅で助けてもらった人々へ恩返しをしたいという思いがあった。日を追うごとに色濃く思い出される、あんなエピソードや、こんなエピソード……。「彼らはいまもチャンスに恵まれず、危険と隣合わせの世界をかけずり回っているのだろうか?」そう思うと、日本という平和で自由な国にいながらも、何もできない自分がはがゆかった。「僕を助けてくれた人へ直接恩返しができなくても、せめてその人の家族や友人、恩師など間接的にでも何かできることはないだろうか?」そんな考えを巡らせつつ、いっこうに行動を起こせない自分に焦りすら感じていた。