カンボジアの首都プノンペンから約一一〇キロメートル、車で約二時間半離れたプレイベン州プレイクラー。二〇一〇年一一月、僕が三四歳の秋。僕はこの地域に一棟の小学校を建設した。三角屋根の校舎のなかには、五つの教室に三つのトイレ。日本の学校に比べたら小さいけれど、村民が力を合わせて作りあげた念願の学校だ。今後、ここから多くの優秀な少年少女が巣立ってゆくのだろう。
話はさかのぼって同じ年の四月、僕は学校建設地を視察するため、この場所を訪れていた。二五年前に建てられたという掘立小屋同然の校舎は、見るも無残な姿で佇んでいた。木造の校舎は、老朽化によっていまにも折れそうな柱や、土台部分から外れて柱の役割を果たしていない柱にかろうじて支えられている状態。