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中国のマスゴミ ジャーナリズムの挫折と目覚め
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政治・社会
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第四章 巧みにしなやかに抵抗せよ

『中国のマスゴミ ジャーナリズムの挫折と目覚め』
[著]福島香織 [発行]扶桑社


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記事原稿が新聞に掲載されるまで



 記者が原稿を書く時に心がけるのは、わかりやすくシンプルに、読者に届くように書くということだ。伝えたいことをより多くの人にわかってもらうように。だいたい中学生の教育レベルで理解できるように書く、というのが一つの基準だ。だから漢字は常用漢字を使い、固有名詞の表記や専門用語は統一され、いわゆる一般記事スタイルという文体が決まっている。


 見出しになりそうな、一番ニュース価値の高いフレーズを最初の段落のリードに入れ、重要な確認できる事実から書いてゆき、見方や分析、識者のコメントなどでまとめる。誰が書いても一定水準以上のわかりやすい原稿になるような「記事の書き方」「マニュアル」というものがある。私の場合、この一般記事スタイル原稿を書くのが苦手で、事件原稿でもマクラとオチがあるコラム風や、いきなり情景描写から入るカバーストーリー風に書いて怒られることもあれば、そういう風変わりな原稿が面白い、とそのまま使われることもあった。


 この原稿の好みというのは面担当のデスクが決めるので、慣れてくれば紙面を見て、今日はどのデスクが担当した、というのがわかる。どの面にどの記事をどの位置にどれくらいの行数(字数)で出すかは、午後4時くらいまでに記者らから寄せられる出稿表をもとにデスクが部長と相談して決め、その後、各部部長や編集長らの打ち合わせでほぼ決まる。もちろん、早版、遅版、最終版などと新聞は発行地域によって版が変わり、締め切り時間が違うので、記事の差し替えが次々と行われる。


 この記事にどんな見出しをどんな字体でつけ、決められたスペースにどう配置するかを最終的に決めるのは整理記者で、やはり記事内容をわかりやすく示し、なおかつ好奇心をそそる読みたくなる見出しをつけて組むのに苦心する。


 本来は校閲記者といって誤字脱字、固有名詞間違いなどをチェックする記者もいるのだが、新聞づくりの省エネ化の中で校閲記者そのものが減らされており、現在は、多くの原稿の校閲が、校閲記者ではなく、書き手である記者自身と、その原稿を編集するデスク、編集局にいる夜勤や泊まり勤務の記者によって行われている。校閲というのは本来、言葉の知識・雑学勝負の仕事なので、校閲記者がいなくなると、私のような無知な記者の負担は結構大きい。私の原稿は自分でも気をつけているのだが誤記、誤字、脱字がなぜか多く、面倒くさいから嫌だ、と使いたがらないデスクもいれば、やっぱり面白いから使うと言ってくれるデスクもいた。


 そういうわけで新聞記事というのは、多くの人の手を経て作られる共同制作の商品で、署名原稿であっても、その商品の品質への責任というのは書いた記者だけでなくデスク、部長、編集長も一緒に担保してくれるのだ。何か重大な問題が起きれば、記者もそれなりの処分があるが、矢面に立って責任を追及されるのは普通、編集長以上のクラスだろう。


報道統制の目をかいくぐるテクニック



 中国の新聞づくりのシステムも同じような流れで、新華社が配信する通稿を使う以外は、「取材」(記者、特派員、通信員、カメラマン、特約記者が取材し原稿を送る)、「写稿」(デスクと校閲記者が、原稿を審査、チェック、整理記者が見出しもつける)、「編集」(編集長ができた記事をどの場所にどの大きさで使うか決定し、内容をチェックして責任を持つ)の流れがある。もちろん、この作業の前にいろんな形の打ち合わせがあり、編集会議前に記者が直接、編集長に記事を売りこんだり打診したりもする。


 日本の新聞と明らかに違うのは、一つは「わかりやすい原稿を書かねばならない」という意識があまりないことだ。最初は私の語学力の問題かと思ったのだが、記事を訳出してみると、やはり日本の記事ほど簡潔ではない。あと誤字脱字誤表記は少ない。週刊誌などは結構、誤字脱字はあるのだが、新聞ではめったに見かけない。人民日報や新華社の配信で誤表記などがあったら、それ自体がニュースになるくらいだ。


 この原因としては、一つには記者の給料が字数による原稿料で決まること。だから記者は字数稼ぎの長い原稿を書きたがり、結果的にまどろっこしい、繰り返し表現が多くなったりする。もう一つは誤字脱字あるいは中国特有の政治的誤りには、1か所あたりいくら、の罰金が科され、校閲記者は1か所の誤りを見つけるたびにボーナスが加算されるという給与システムが大きい。


 だが、中には、わざとわかりにくく書いたり、誤表記を見逃したりすることがあるようだ。それは、第二章で紹介したような党中央宣伝部の厳しい報道統制をかいくぐり、記者や編集長ら新聞の作り手たちが、読者に本当に伝えたいことを伝えるための工夫をこらしたテクニックなのだ。


 第四章では体制内新聞人独特のテクニックを駆使し、ひそやかに、あるいは大胆に、報道統制をあざむいた抵抗例を紹介しよう。



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