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(2021/11/26 追記)

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男しか行けない場所に女が行ってきました
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ルポ・エッセイ
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風俗だからって超絶テクニックを受けられるわけではない 人妻アロマオイルマッサージ

『男しか行けない場所に女が行ってきました』
[著]田房永子 [発行]イースト・プレス


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 2005年、エロ業界は空前の“人妻ブーム”だった。「人妻と温泉デートグラビア!」「新婚美人妻のはじめての不倫!」「官能若妻劇場 全然たりないの……ねえ、もう一回して?」「素人妻ナンパ外伝!」「H大好き人妻3人組との極限4P!」など、AVでも風俗でもエロ本でも、やたらと「人妻」の文字が踊り狂っていた。


「田房さん、『(いっ)(とう)()()(さん)(しょう)()()()(さい)』っていう昔の言葉、知ってますか。男が興奮する相手の順位です。1位が他人の女を『盗』む状況のことです。つまり人妻というのは、大人の男にとって最高のブランドなんですよ」


 エロ本の男性編集者がレクチャーしてくれた。2位の「卑」は家政婦や使用人、「妾」は愛人、「妓」は娼婦、「妻」は自分の妻のことだという。


 確かに「男は自分の女になったと思ったとたん興味がなくなる生き物」とかよく言うし、「奥さんとはもうできないよなあ~」みたいな言い草は、昔からよく聞く。しかし、こんな言葉があるなんて知らなかった。しっかり覚えてつっかえることなく口から発する編集者のことを軽蔑しかけたが、こういった情報はとても重要なものだった。読者が何を求めているのか分かれば、何を描けばいいのか見える。「男はとにかく、人妻が大好き」。自分の頭に叩き込んだ。


「人妻アロマオイルマッサージ」という風俗店を見せてもらうことになり、池袋へ向かった。私の仕事は、この店の様子を漫画に描くこと。その漫画が宣伝にもなるので、風俗店の人たちは気を使ってくれることが多い。


 まずは店長と従業員である人妻さんと駅前の喫茶店で待ち合わせ。ケーキを食べながらお店のシステムを聞いた。


1・客がお店に電話し、予約

2・人妻さんとホテルの近くで待ち合わせ

3・ホテルに行き、人妻さんと一緒にシャワーを浴びる

4・2時間のうち、1時間は全身オイルマッサージ

5・そのあと、ちょっと手でしごいてもらって射精する

価格:2時間1万8千円



 元プロ野球選手の金村義明に似ている店長が、店のシステムや客層などの話をしてくれた。だが、話はちょこちょこ横に逸れ、結局半分くらいは店長の武勇伝を聞いていた。店長は35歳で独身、関西弁でよく喋るタイプ。人妻さんは、身長が150センチに満たないくらいの小柄で優しそうな感じの32歳の女性だった。


 話だけでなく、実際の様子も見せてくれるというので、店長、人妻さん、私の3人で池袋のレンタルルームに入った。レンタルルームというのは、雑居ビルのワンフロアをいくつかの個室に区切った、ラブホテルの安いバージョンみたいなところである。一応、表向きは「性交するための場所ではない」ということになっているが、性交が前提の場所である。ベッドとソファだけが置いてある殺風景な4畳半ほどの個室で、プレイ見学がはじまった。


 店長自身が服を脱ぎ、マッサージを受けている様子を再現してくれることになった。店長は男性用のTバックパンツ(黒)を着用していた。

「これは加藤鷹とかAV男優御用達メーカーのパンツなんですけどね」とか「30枚は持ってますけどね」とか、得意げに言ってくる店長。そのご自慢のパンツを脱ごうとしたので、「あ、別に脱がなくてもいいですよ」と言うと、「平気ですよ全然。チンポ見られるの慣れてるんで」と言い、脱ぎ始めた。私のほうは見慣れてないのだが。


 男性のアソコは、積極的に見たいものではないな、と、店長が脱ぐのを見ながら思った。ポロンと出たチンポコをチラ見すると、色は黒めだが、そんなに大きくはなかった。例えば、酒に酔ってふざけてパンツを脱がされた男の子が、「うわー」とか言ってチンポコを手で隠していたら、「なんか、見たい!」と思ってその手で隠された股間を目で追うと思う。だが「見て見て☆」という感じでポロリンと出されたチンポコからは、目を逸らしたくなる。


 全裸でうつぶせになった店長を指さし、人妻さんが言う。

「店長はお尻がすごくキレイなの! 触ってみて!」


 なんで初対面の金村似の男の尻を素手で触らなければならないのか分からないし触りたくなかったけど、仕方ないので人差し指と中指の先で触れてみると、ホントにスルスルとしていた。


 そしてやっとマッサージがはじまったのだが、そこは簡単に省略し、メインのチンポコ手揉みタイムになった。店長を仰向けに寝かせ、人妻さんは棒と球、いわゆる男の野球グッズ全体をゆっくり揉みはじめた。店長は「何もしなくても3秒で勃つんで」と言った。別に勃たなくていいよ、と思ったが、徐々に勃起していた。「勃起したらものすごい大きさになるのかな」と思ったが、そうでもなかった。



 マッサージについては、ちゃんとプロの講師を呼んで勉強しているということだったが、チンポコ揉みマッサージについてはどうなのだろうか。「独自のテクニックでやるんですか?」と人妻さんに聞くと、「俺が教えてます」と店長が答えた。


 これが店長直伝テクニックだ。


 【人によって()り具合や、勃起角度(お腹とチン棒の間の角度)が違うので、反り具合に沿って手を動かす】



 つまり、女の人が自分のやりやすいように手で持つと、勃起角度が大きくなってよくないので、「本来の角度」を守りながら、とのこと。2時間1万8千円も払うんだから、日常では味わえない失神寸前の桃源郷的テクニックなのかと思ったら、基本マナーみたいなことだったので拍子抜けした。しかし私はそんなマナーは知らなかった。女性誌のセックス特集に書いてあっただろうか。「反り具合に沿って」というのがどの男性にとっても大切なことだとしたら、もっとちゃんと誰かが教えるべきなんじゃないだろうか。正しい手マンの仕方と共に……。


 女性誌のセックス特集と言えば、「風俗嬢に学ぶ極上テクニック!」とか「風俗嬢が教える正しいフェラチオ講座」とかがあったりする。女の感覚だと、彼氏や夫が風俗を利用するのは、自分の体やテクニックに満足していないからであり、自分に非がある、という前提で考えがちだ。しかし男性は「別にそういうわけじゃない」とよく言う。何がそういうわけじゃないのか、この店長テクニックの視点から考えてみると、風俗だからって必ず特別な超絶気持ちいいサービスが受けられるわけではない、ということが分かる。


 仲良くおしゃべりしながら店長のチンポコを揉む人妻さん。「人妻」と名乗っているだけで、実際は独身なんじゃないだろうか、と思っていたのだが、5歳の子どもがいて、夫には内緒でこのバイトをしていると言っていた。客が女の子に触るのは禁止されているお店なので、気軽な気持ちではじめたと言う。マッサージの知識も身につき、エステティシャンの資格を取る夢ができたそうだ。「いい仕事だよ」と明るく話していた。


 店長のチンポコは幸い、ギンギンレベルまでは到達せず、射精にも至らなかった。私が気を利かせ「お出しになってください」とでも言えば射精していたかもしれない。しかし、そこまでの気は回せなかったし、回したくなかった。


 取材が終わり、「ありがとうございました」と言うと、

「いえいえ、こちらこそ粗末なもん見せちゃいまして」と店長が言うので、

「いえいえ、ご立派でらっしゃいました」と言うと、

「ま、大きさはね……肝心なのは舐めですから」と店長がおっしゃった。

「舐め? ああ、大きさはフェラチオの上手さ次第ってことですか」と問うと、

「いやいや、その逆です」と店長が返す。

「ああ、男は大きさより、クンニの上手さが重要ということですか」と問えば、

「そうです。やはり、そちらのほうが重要でしょう」と言いますもんで、

「そうかもしれませんね。店長はクンニに自信がおアリなんですか」と聞きますと、「ええ、まあね」と、お答えになった。


 唐突なる、クンニ自慢。どういう意図があるのかわからないその言葉に、この年一番の放心を味わった。



 そして、この取材をもとに描いた漫画を再現したのが下のものである。



 私が現場で感じたこと、「堂々と出されるチンポコは見たくない」とか「別に超絶テクニックを受けられるわけではない」などは、男性にはまったく必要ない情報だった。

「本当のこと」は、私の中に虚しさと共に降り積もっていった。

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