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(2021/9/29 UP)

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『読む筋トレ』
[著]森俊憲 [発行]扶桑社


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 私は、1971年に福岡県で生まれ、大学まで地元で過ごしました。今でこそ、人から「筋骨隆々」と言われるようなカラダをしていますが、高校生の頃までは一般人と大差ないカラダつきでした。

 しかし、大学に入ってすぐのこと。当時の私は、何となく物事が自分の思い通りに行っていないのではないかという、焦りとジレンマがないまぜになったような感覚に駆られていました。いつも「本当の自分はこんなもんではないはず……」というストレスと、「自分が自分らしく生きていない」という、どこか所在ない感覚を抱えて、毎日を過ごしていたのです。

 今思うと、大学に入って、あらゆる意味で自由度が広がった半面、どこを向いて生きるべきかを見失っていたような気がします。次第に私は、気持ちに余裕がなくなり、自分に対する信頼、すなわち自信もどんどん失っていきました―。

 そんな拠り所のない生活を続けていたある日、偶然手に取った雑誌の1ページに、こんな言葉を見つけました。うろ覚えですが、確か日体大ライフセービング部の監督(当時)のインタビュー記事だったと思います。
「人は、鍛えれば鍛えるほど『強くなる』。そして、強くなれば強くなるほど『優しくなれる』」

 この一文を見た瞬間、私の心は大きく揺さぶられました。特に、最後の「優しくなれる」というワードに惹きつけられました。

 自信を失い、自分に余裕がなくなり、周りに対して優しく振舞うという、本来の自分らしさをなくして、何かもやもやとした感情を抱えていた。そんな私の心に、この言葉はまっすぐ突き刺さってきたのです。「自分が求めていたものはまさにこれだ!」と、本当に目からウロコが落ちたようでした。


著者近影(2010年4月撮影)


 私はいてもたってもいられなくなり、すぐに下宿近くのスポーツクラブに入会します。それがすべての始まりでした。

 ところが、そこから順風満帆にトレーニングを続け、現在に至るのかというと、そうではありません。今でこそさまざまな経験を経て、自分を高めることができています。しかし、始めたばかりの当時は、トレーニングに目覚めた多くの人と同じ気持ちでした。ウェイトトレーニングの辛さや面倒くささのほうが先に立ってしまい、なかなか続けて通うことができませんでした。スポーツクラブに行く時は、毎回モチベーションを上げることに必死。スポーツクラブに行くだけなのに、「よし、今日もなんとか頑張るぞ!」と、一大決心をしていたくらいでした。

 おそらく、その頃の私は、まだ自分の努力の成果に確信を持てていなかったのでしょう。「孤独にがむしゃらにやってはいるけど、本当に成果が出るのだろうか……」という、疑いのような気持ちが、ココロのどこかにあったのだと思います。

 とはいえ、途中でやめるのだけは悔しかったので、頑張ってなんとか半年ほど通い続けました。そのかいもあって、少しずつではあるけれども、カラダつきにも変化が出てきていました。

 そんな時、私の心に火をつけて、今日までトレーニングを続けるきっかけとなったある出来事が起こります。

 いつも通っていたスポーツクラブの更衣室で、見知らぬ男性が、すれ違いざまに声をかけてきたのです。その見知らぬ男性(年齢はおそらく60歳くらい)は、私に向かって、こう言いました。

「君はとても良い筋肉をしている。だから、トレーニングは一生続けなさい」


 当時の私は、まだまだ自分のトレーニングのスタイルを確立するのに試行錯誤している段階。それなりに筋肉はついていたものの、今のように、ある程度完成されたカラダではありません。にもかかわらず、そのような言葉をかけてもらえたのです。

 ただ、あまりにも唐突に言われたもので、私は「ありがとうございます」という言葉を返すのが精いっぱいで、それ以上会話を続けることができませんでした。

 どこがどう良いのか、なぜそんなことを言ってくれたのかなど、詳しい話はまったく聞くことができませんでした。それ以後も、聞くチャンスは訪れていません。なぜなら、その初老の男性とは、それ以降一度も顔を合わせることがなかったのです。

 今でも時々、不思議に思うことがあります。結局、自分の何が良いのかはわからないまま、その一方で、見知らぬ男性からのメッセージは、とても大きな力になりました。わざわざ声をかけるくらい、評価してくれているという嬉しさ。しかも、「一生続ける」価値があると断言してくれた。それから私は、その言葉を、ことあるごとに何度もかみしめて、ずっと自分の行動の支えにしてきたのです。


 私が提唱しているボディデザインの法則の中に「カラダを動かす前にココロを動かせ!」というものがあります(詳しくは第三章で解説します)。

 動機を明確にすることで気持ちを鼓舞して、モチベーションをキープする。気持ちが維持できれば、トレーニングは続けられるという法則です。

 私は、このモチベーションのキープを「言葉」を使うことで可能にしています。自分自身への語りかけ、他人からの言葉、どんなものでもいいのですが、ポジティブな言葉を繰り返し自分に言い聞かせるよう、クライアントのみなさんにも勧めています。

 言葉には、人間に勇気を与え、ココロを大きく動かす力があります。だから、私はブログやメルマガで、「エナジーワード」という、ココロのスイッチを入れるためにコラムを配信し、ワークアウトを続けられるようにココロを動かすためのノウハウを提供してきました。

 私がそこまで言葉を大事にする理由――、それはきっと、見知らぬ男性からかけてもらった言葉を支えに、ここまでトレーニングを続けることができたという経験があるからです。今となっては、その男性の顔も覚えていません。でも、ココロの中ではずっと感謝し続けています。

 さて、こうしてモチベーションのキープに成功し、トレーニングを続けることができた私は、結果的に1年ほどで体重が約10kg増えました。それはもちろん、ぜい肉ではなく、筋肉による体重増です。

 その後、大学を卒業して、京セラに就職。携帯電話の商品企画業務に従事するのですが、社会人になった私を待っていたのは、学生時代に流れていた時間がウソかと思えるような、時間的にタイトな日々でした。当時の私は、朝7時に会社の寮を出ると、帰ってくるのは終電。趣味どころか、テレビを見る時間もない。ジムに行く時間をとるなんて、夢のまた夢。それでも、学生時代につけた筋肉は、落としたくなかったのです。

 ジムに行けないなら、自分で道具を使わずにできる運動を考えるしかない。そこからは、限られた時間の中で効率よくカラダを鍛える試行錯誤の日々が始まりました。

 当時の社員寮は、新入社員は原則全員入寮。3人一部屋で、与えられたスペースは、四畳半の居間と二段ベッドがふたつ置いてある部屋のみでした。ベッドにカーテンはついてましたが、プライベートなんてまったくありません。何より困るのが、狭い空間に大の男が3人もウロウロ、ゴロゴロしているわけですから、筋トレをする場所がないのです。

 しょうがなく私は、夜中、誰も通らない階段の踊り場で、傾斜を利用して腕立て伏せをしたり、部屋の入口の(さん)に指をかけて懸垂をするなどしてカラダを鍛えました。

 元パイレーツの桑田真澄投手は、ジャイアンツ時代、肘の故障で1年以上2軍で調整していたことがありました。その時、毎日走っていた場所の芝生がはげて、「桑田ロード」と名付けられて話題になったことがありました。桑田投手と比べるのはおこがましいかもしれませんが、私が居た部屋の入り口の桟には、私の指の跡が残っていました。

 この時積み上げたノウハウの数々が、後にボディクエストのワークアウトメソッドの原型となりました。その効果は、自分のカラダの変化が実証してくれます。また一方で、学生時代に鍛えたカラダを維持し続けた、筋肉を落とさなかったからこそ、仕事でも結果を残すことができるようになってきました。

 私はマーケティング部で企画を担当していたので、営業や開発などに比べてノルマや納期など、数字のプレッシャーがあまりない仕事でした。メーカーの社内は、プレッシャーや責任の大きい部署の方が発言権も強いようなムードがあります。そんな中で、あるべき戦略を示して旗振り役として、関連部署を鼓舞していくのが私の部署の役割です。そこでは、理屈を超えたリーダーシップも求められます。私の場合はそれを、カラダを鍛えることで身につけていったのです。

 もはや、カラダを鍛えることは、趣味の領域を越えて、自分が毎日をアグレッシブに生きていくために欠かせなくなっていました。どんどん忙しくなって、自分の時間がなくなっていく。そうなればなるほど、技術を磨いて、手段を試行錯誤して、確実に成果を出せる筋トレのメニューを増やしていったのです。

 ところが、ふと周囲を見渡すと、世の中は生活習慣病や、ダイエットの失敗に苦しむ人たちで溢れかえっていました。ひょっとしたら、自分が実践してきた成功メソッドが、他の人にも役立つのではないか。悩み、苦しんでいる人を救えるのではないか――。

 自分で言うのも気がひけますが、サラリーマン人生において、問題は何もありませんでした。もとはベンチャーですが、今は誰でも名前を知っているような大企業です。そのまま仕事を続けていれば、出世も望めたでしょう。

 それでも、私はカラダを鍛える魅力にとりつかれていました。自分が大好きなことをして、それが人の役に立つのなら、サラリーマン人生を捨てるのに、まったく悔いも迷いもありませんでした。
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