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脳には妙なクセがある
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雑学
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はじめに

『脳には妙なクセがある』
[著]池谷裕二 [発行]扶桑社


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 一等賞をとる気分は最高です。

 科学に(たずさ)わることの醍醐味(だいごみ)は、なんといっても発見する喜びでしょう。まだ誰も見たことのない事実に、一等で遭遇(そうぐう)する瞬間のゾクゾクする快感。

 この快感は、もちろん科学に限ったことではありません。運動会でも、テストでも、一番になることは気持ちがいいものです。

 え? 一番になるのは選ばれた人だけですって? いえいえ、そんなことはありません。誰もが一番になった経験があります。

 少なくとも一回はあるはずです。たとえば、自分がまだ若かった頃。あまりに昔のことなので記憶にないかもしれません。

 生まれるよりずっと前、そう、まだ精子だった頃です。水泳で一等賞をとりました。

 なんの因果か、その結果として、私たちはヒトとして生まれ、ヒトとして育てられ、ヒトとして生きてゆくことが運命づけられました。

 ヒトは、自分がヒトであることを自覚することで、よりヒトらしくなります。ヒト社会で()まれることでヒトになるのです。そして、ヒトらしく死んでゆきます。

 生きる意味はなんでしょう――大学で教鞭(きょうべん)をとっていると、若い学生からそんな問いを受けることがあります。私は決まってこう答えます。「その意味を探すプロセスこそがヒトとして生きる意味ではないでしょうか」と。

 生きる目的は人によってちがうはずです。いや、本当のところ、意味や目的なんて、はじめからないのかもしれません。ただ、それを一生かけて探す過程は万人に共通しているように思えます。

 ヒトを「考える(あし)」にたとえたのはフランスの哲学者パスカルです。しかし、考えるだけならばイヌやサルでもできます。むしろ、ヒトに固有な能力は、意味を問う疑問力ではないでしょうか。

 だからこそ、泣いても悲しんでもヒトとして生きることが定められている命でしたら、せっかくなら楽しくごきげんに問いつづけたい――そう私は願っています。詠嘆(えいたん)するもよし、厭世的(えんせいてき)になることもよし、苦悩するもよし。それでも下地では、つねに前向きな姿勢を貫いて、笑顔で生き抜きたいと。なぜなら、一等賞をとったからには、きっと気分がよいはずだからです。

 そんな思いでこの本を書きました。いつも通り、手を抜くことなく、時間をかけて書きました。だから本書には、たくさんの話題がつぎつぎと飛びだします。

 もしかしたら、情報の洪水で、書物としては焦点がボケてしまっているかもしれません。これを()けるためにも本の構図を明確にしておきましょう。

 本書のバックボーンは第11章、22章、そして26章です。この三つの章に、私の脳観を描きました。急ぎの読者は、これらの章から読んでいただければ、本書に込めた私のメッセージを(とら)えていただけると思います。

 時間のある方は、冒頭からゆっくり読み進めていただければ嬉しいです。脳科学の最新の知見を、本書全体にわたって、たっぷりとちりばめてあります。小ネタ集とはいえ、私のスタンスはブレていないつもりですので、終盤に向かって個々のメッセージが集約されていくのを感じていただけると思います。それに、案外、脱線話のほうが面白かったりするものです。

 本書に限らず、私のアウトリーチ活動のテーマは一貫して、脳科学の視点から見て「よりよく生きるとは何か」を考えることです。楽しくごきげんに生きる――この目標を達成するために脳科学の成果が活きるのなら、著者として、そして脳研究者として、このうえなく幸せです。





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