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脳には妙なクセがある
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雑学
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●不安の脳回路が活性化するとき

『脳には妙なクセがある』
[著]池谷裕二 [発行]扶桑社


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 (ねた)みや劣等感は、社会的感情と呼ばれるカテゴリーに属します。自分一人しか存在しない場合では生じることはなく、あくまでも他人と比較することによって生じる感情だからです。サルやイヌにも嫉妬(しっと)に似た行動が観察されますが、なんといっても私たちヒトに強烈に(そな)わった心情であるといってよいでしょう。

 つまり、こうした心のルーツを探索する研究は、やはり、ヒトで実験する必要があります。最近の興味深い研究を紹介しましょう。

 まずは、ロンドン大学キングス・カレッジのフリードリチ博士らの研究から。彼は、女性たちがスリムなボディに(あこが)れるメカニズムに着目しました(9)

 自分の身体に対する不満感は、先進国で育った女性にとくに強いといわれています。実際、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の活動を調べると、身体にまつわる言葉への反応が女性の脳は独特です10。こうしたデータから身体的な劣等感は、社会文化的な環境によって後天的に植え付けられた心理であることがわかります。いうまでもなく主因はメディアにあります11。ファッション誌やテレビなどに出てくる、極度に細い女性モデルのスタイルを、多くの一般女性たちは「よいスタイルだわぁ」として理想化しています。

 ケビン・トムソンは著書『Exacting Beauty』で、「女性の理想美は、極端に(つまり、ほとんどの婦人たちには達成できないほど!)痩身(そうしん)であることが強調されている」と述べています。これを社会比較論風に拡張すると、「結果として、こうした外的な価値基準が自尊心を減じてしまう」となります。この症状が過度になると、拒食症やうつ傾向に結びつくこともありますので、笑い話ではすまされません。

 さて、フリードリチ博士らは、16歳から35歳までの女性18人を(つど)って研究を行いました。彼女たちのBMIは17・5〜25・0と平均的です。博士らはモデルあるいはインテリアデザインの写真を見せて、自分自身と比較するように(うなが)しました。そして、彼女たちの脳活動をMRIで記録します。

 すると、モデルの身体を見たときに、より強く活動する脳部位がいくつかありました。「前帯状皮質(ぜんたいじょうひしつ)」や「扁桃体(へんとうたい)」などです。こうした脳部位は不安情動や苦痛に関与することがよく知られています。

 他者との比較が「不安」の脳回路を活性化させるのは面白いことだと思います。私たちは皆、自分の内面にある劣等感や嫉妬が、いわゆる不安とは異なった別の感情であることを知っています。私自身もそうです。だからこそ、わざわざ「不安」とは別の表現として、「劣等感」「嫉妬」といった単語が存在しているわけです。

 しかし、脳活動のデータは、不安と劣等感は、じつは、共通した動物的な情動であることをほのめかしているようです。案外、進化的には共通のルーツを持っているのかもしれません。こうした視点から、フリードリチ博士らは、論文の中では「劣等感」「(ねた)み」ではなく「不安」という表現を頻繁(ひんぱん)に用いています。

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