『脳の疲れをとるストレッチ〜1分でもできるイライラ解消術』
[著]美野田啓二
[発行]扶桑社
人は誰もが、心穏やかで機嫌良く過ごしたいと願います。
しかし、多忙、人間関係、将来の不安、過去の失敗などのストレスでその願いが阻害され、心や体を司る脳が疲弊し、そのため心身を健全な状態に保つために大切な自律神経の調整機能が低下して、イライラを募らせてしまう人が激増しています。
ところが、自律神経の問題は病院で検査を受けても身体的な異常が見つかりません。その結果、「悪いところはありません」などと言われ、具体的な改善策が示されないケースがほとんどです。心身に異常を感じている人にしてみれば、原因がわからないだけに、ますます不安が募るばかりです。また、体調の悪さや気分のすぐれないことを周りの人に理解してもらえないことで、孤独感や閉塞感が増し、つらい毎日を送る要因になります。
日本の抗不安剤・睡眠薬(ベンゾ系薬剤)の使用量は、驚くことに米国の6倍にもなり、長期常用者は相当数にのぼるとみられます。結果、その副作用に悩んでいる人も少なくありません。日本はストレス社会と言われて久しいのですが、改めてストレス被害の大きさがわかります。
人間関係や仕事によって生じる不安感や過度なストレスは、次第に個人の持つ適応力の限界を超え、自律神経のアンバランスを引き起こし、イライラを生む要因となっています。
私が代表を務めるBTU(バランスセラピーUniv.)では、独自のバランスセラピー学をもとにストレスケア教育と研究を行い、そのメソッドは全国の学校や福祉・医療機関、公共団体、また大手企業などで導入されています。これらの活動の過程でストレスを抱えて悩むさまざまな人と出会ってきましたが、先ほど述べたように自律神経の乱れの原因がわからずに苦しむ人、またイライラするのを「性格だから」「生まれつきだから」と悲観し、あきらめてしまっている人が非常に多いのです。
そしてイライラや不安、体調不良を「気のせい」にしてごまかそうとしたり、また「気の持ちよう」や「気分を変える」ことで無理やり解決しようとしてしまうのです。あなたも身に覚えがありませんか?
しかし、これらの問題を解決する科学的な方法がちゃんとあります。
自律神経のバランスを回復しイライラしないためには、まずその根本的な原因、つまり、過度なストレスや乱れた生活習慣などによって疲弊した脳を回復させることが重要です。そしてイライラの理由をちゃんと理解して、その原因を取り除く具体的な解決策、コントロールする方法を身につけることが大切なのです。
自律神経は、不随意神経といって自分の意志どおりに働かない神経です。不安や心配といったストレスが自律神経に想像以上の負担をかけ、自分の知らない間に機能が低下していきます。そして、いったん自律神経失調症になったらなかなか回復しないのです。
でも、安心してください。この自律神経系の乱れを改善してイライラしない心をつくる方法を、本書で紹介します。
自律神経系の乱れによるさまざまな症状は、私たちが「何か無理している」というメッセージです。そしてイライラは「無理しても思うようにならない」ことに対する反応であり、社会や人間関係などの外部環境から感情を支配されていることにほかなりません。
しかし私たちは、自分自身で感情をコントロールできるようになることができます。つまり、自分の感情は自分で決めることができるのです。
その方法が、イライラや自律神経の乱れを生む原因である「脳の疲れ」をとるストレッチです。とはいっても、直接頭をさわって脳を刺激するものではありません。全身にある筋肉を通じて、イライラを生む原因である脳の疲れに働きかけます。
私が本書でご紹介する「ホメオストレッチ」は、脳のなかでも特に自律神経の中枢である脳幹に深くかかわる「抗重力筋」を通じて、誰でも簡単にストレスケアをすることができるものです。
本書で、イライラと脳、そして自律神経や筋肉の関係について理解を深めていただき、ストレスフルな社会のなかでも、誰もがイキイキとした機嫌のいい生活を手に入れることを願ってやみません。