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経済・金融
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まずは「フーゾク」の話から始めよう

『夜の経済学』
[著]荻上チキ [著] 飯田泰之 [発行]扶桑社


読了目安時間:4分
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 本書のタイトルは「夜の経済学」なんだから、まずは夜の世界、フーゾク業界のお話から。経済的動機づけに還元することが憚られている分野ほど、経済の観点から語る利点は大きい。その典型が夜の世界である。

 フーゾク産業の市場規模は、(うわさでは)年間5兆円とも8兆円とも言われるようだ。他産業──百貨店の売り上げが年間6・1兆円、旅行業が年間6・7兆円といった数字と比較すると、フーゾク産業は日本の一大産業ということになる。あくまでうわさが正しいとしての話だけど。

 その一方で、フーゾク産業は対象が対象なだけに公式の統計調査に乏しく、その実態は個人的感想や有識者の印象論で語られるのみだ。しかしフーゾク産業は、スルーしてしまうにはあまりにも大きい産業であることは確か。そして実は、経済的な価値観から語らずして何から語るんだ!?というくらい経済的な分析になじみやすい業界でもある。


 公的なデータのない課題について、データで考えるためにはけっこうな手間をかけなければならない。でも、予算や時間が無限にあるわけではない以上、官庁統計のようにデータを偏りなく大量に集めることはできない。ここが個人による分析の泣きどころなわけだけれど……このような環境での分析にあたっては、仮定に仮定を重ねて話を進めていく必要がある。

 このように書くと「結局のところ、夜のビジネスをデータで分析することなんてできないんでしょ」と思われるかもしれない。しかし、そうじゃないんだ。なんらかのベンチマーク(比較参照の対象)となる分析結果によって、仮定に仮定を重ねながら、ある真実に近づくことはできる。

 ちなみにフーゾクに関する分析から始めるのは、データ収集が比較的容易で、次章に続く、その他の業態・業界を分析するベンチマークともなると考えられるから。つまり、本章はフーゾク業界を経済的視点で見ていくと同時に、2章・3章と続く分析の“出発点”を構築することを目指している。


 これまでも「夜のビジネス」について、数字を示しながらの解説が行われることはあった。例えばエコノミストの門倉貴史氏は、一連の著作で大胆な仮定のもとに、フーゾクで働く女性の年収や市場規模を推計している。例えば『世界の[下半身]経済が儲かる理由』(アスペクト)では、2005年のデータを用いて、「ソープランド業界の市場規模/約1兆円」と見積もっている(1)。


 ・一日の客数 41

 ・平均料金  5万円

 ・店舗数   1306軒

     →41×5万円×1306×365日=9772億円/年


 ここで用いられているデータのうち、公式な統計があるのは警察白書などに記載された店舗数のみ。その他の数字は、門倉氏が数十店舗に電話で問い合わせたものを独自に集計したものである。

 この推計の欠点を批判するのはカンタンだ。僕自身、今回の調査にあたりフーゾクの各業態について女性従事者、オーナー、店長、専門誌ライターにヒアリングを行ったけれど、平均料金と回転率についての門倉推計は、「少々過大では?」というのが正直な感想ではある。

 でも、ひとまず数字を出したってことはものすごく大切なことなんだ。このような「ざっくりとした数字」があることで、その数字をどのように「より正確な数字」に置き換えていけばいいかと「考える目安」ができるから。

 本章や続くいくつかの章では公式統計・アンケート調査をできる限り利用して議論を進めているが、その過程で門倉推計以上に大胆な仮定に基づく推計値に頼らざるを得なかった部分も少なくない。しかし、まずは可能な範囲の数字で定量的な把握をすることが今後の研究の「とっかかり」を得ることにつながる。

 提示される数字にどんどん「ツッコミ」を入れて、より正確な数字に置き換えていく。このプロセスが繰り返されることによって、より充実した現状把握が可能になる。より正確な推計方法・推計値を編み出したという人はぜひとも僕たちにメンションを飛ばしてほしい。

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