◎神話と歴史がつながっている日本
日本の体質、国柄、成文化されざる憲法とは何であるかというと、ひとつには、王朝が一つであること。これは戦前に「万世一系」という言葉であまりに強調されすぎたため、今、日本の王朝が一つであるということを言ったりすると、いかにも反動と思われがちだが、戦前の右翼が日本の皇室を悪用し、日本を敗戦の混乱に導いたということと、日本の王朝はただ一つであるという事実は違うわけで、事実は何度繰り返しても、反動ということとなんの関係もない。
一つの王朝であるということが何を意味するかというのは、隣りのシナとくらべてみればよくわかる。シナ大陸には伝説的な堯、舜の時代から現代まで、無数の王朝が繰り返されている。十二世紀以降の比較的新しい時代においても、元は蒙古族、明は南方漢民族、清は満州族によって建国されている。すなわちモンゴール、漢、ツングースと三種族が同じ地域に国家を建てている。使っていた言葉も元来は違っていた。
主な文献が漢文で表現されているので、われわれはなんとなく一つの国のように思いがちだが、民族、言葉の系統さえも違った王朝を持っていた。
そのような国民の王朝に対する態度と、神話時代から現代まで、王朝が絶えたことがないという国民の態度とでは、まるで違ってくる。
では、なぜ、日本の王朝が絶えることなく現代にまで続くことができたのか。
その理由は、建国神話が歴史時代にそのまま入り込んでいることにある。多くの民族の場合、建国神話を持った民族が、後に異民族に取って代わられているので、神話が単なる神話になってしまう。