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神社ツーリズム
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生き方・教養
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まえがき

『神社ツーリズム』
[著]東條英利 [発行]扶桑社


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 近年、「パワースポット巡り」が息の長いブームとなるなど、神社が脚光を浴びる機会が増えている。大女優、吉永小百合さんが、JR東日本「大人の休日倶楽部」のCMを務めたことで、中高年の観光客が多数詰めかけた長野県は戸隠神社(とがくしじんじゃ)をはじめ、カリスマモデルとして人気だった“エビちゃん”こと、蛯原友里さんが、良縁をブログで報告したことから、年頃の女性参拝客が殺到した箱根の九頭龍神社(くずりゅうじんじゃ)、人気アニメ『らき☆すた』(原作=美水かがみ)の“聖地”として紹介され、以来、多くのアニメファンの誘致に成功した埼玉の鷲宮神社(わしのみやじんじゃ)、さらには、外国人観光客から圧倒的な人気を誇る宮島・厳島神社、「日本最古の神社」と謳われ一年を通して参拝客が絶えない奈良の大神神社……など、その枚挙に暇がないほど、近年、老若男女を問わず、多くの方が神社を訪れるようになっている。


 実際、私が長年お付き合いさせて頂いている神職の方に話を聞いても、ここ数年は、年2〜3割のペースで参拝客の数は増え続け、「スタンプラリー」に興じる感覚で、各寺社で受けられる御朱印(ごしゅいん)集めに奔走する参拝客の姿も数多く見かけるようになったという。お宮参りや七五三といった人生儀礼を熱心に受けられる若いファミリー世代や、神前式の結婚式を選ばれるカップルも年々増加傾向にあるそうだが、実際に、リクルートの「ブライダル総研」の調査を見ても、平成16年(2004年)の時点では神前式の占める割合は全体の8・2%程度だったが、一昨年の平成23年(2011年)には、16・7%とほぼ倍増している。

 そう、今日本では、神社への関心が単なる一過性のブームから、日本人の心の奥底に長年大事に仕舞われていた本質的な原点回帰の時代へと移行しつつあるように感じるのだ。


 しかも、今年は伊勢神宮(三重県伊勢市)と出雲大社(島根県出雲市)が、60年ぶりに同じ節目で遷宮の年を迎えている。「60年ぶり」という数字だけを見ると、一生のうち一度くらいは拝める程度にしか感じないかもしれないが、意外にも、出雲大社の遷宮は定期的なものではないので、過去1500年以上の歴史を振り返っても、両社が同じ年に遷宮を迎えるのは、今回を含めてたった3度しかない。言うなれば、今年行われる両社の同年遷宮は、私たちが思う以上に貴重な歴史的瞬間なのだ。

 加えて、これは余談になるが、前回の同年遷宮が行われた昭和28年(1953年)の翌年には、日本の高度経済成長の黎明期である「神武景気」に突入し、前々回の同年遷宮が行われた慶長14年(1609年)の翌年には、「寛永通宝」が鋳造されたことでも知られる足尾銅山が開山。江戸時代の経済発展の礎が築かれている。つまり、伊勢と出雲が同時に遷宮を果たした翌年から、いずれも日本は経済的に大いなる躍進を遂げることになるのだ。


 さらに、今年に限って言えば、日本を代表する霊峰、富士山も「信仰の対象と芸術の源泉」との名目で念願の世界文化遺産登録を果たしている。伊勢、出雲、富士山……とくれば、まさしく、これらは日本を象徴するランドマークそのものであり、何とも縁起のいい話である。もちろん、これは偶然の巡り合わせにほかならないが、安倍政権が主導する「アベノミクス」も、現段階では堅調に推移しているように見える。加えて、平成32年(2020年)に東京オリンピック・パラリンピックの開催も決まるなど、あながち「偶然」のひと言では片付けられない、何か歴史の大きなうねりのようなものを感じてしまうのは私だけではないだろう。

 そもそも、歴史の節目というものは、その時代、時代を生きる人々の心理に、大きな変化をもたらすとも言われている。そう考えると、「パワースポット巡り」などのブームがきっかけとなり、我々日本人のルーツとも言える神社をはじめ、日本の伝統や文化に対してより知識を深めようとする動きが自然発生的に生まれることは、非常に喜ばしい流れと言えるだろう。


 ただ、せっかくこういった新しい動きが出てきても、素直に喜べない問題も山積している。というのも、日本人である私たち自身が、日本のことをもっと知りたいと素直に思っても、これに応える仕組みや場所など、受け皿が慢性的に不足しているからだ。本来ならば、こうした伝統的な価値観を筋道立てて伝えていこうとするなら、国が中心となって動いてもいいのではないかと思うが、残念なことにわが国にはそうした制度が、学校教育も含めて、ほとんど見られないのが実情なのだ。私が、神社専門のポータルサイト「神社人」を4年ほど前に始めたのも、まさに、この文化的基盤のインフラ不足に危機感を抱いてのことだった。


 例えば、全国の神社に即して言えば、その数はおよそ8万8000社以上にものぼるとされている。一方、街のそこかしこで目にするコンビニエンスストアはどうだろうか。全国の主要コンビニチェーン15グループの総店舗数を調べると、平成24年(2012年)の時点で5万店を超えるのがやっとといった程度で、これだけ見ても、神社のほうがコンビニエンスストアの数をはるかに凌駕している。しかもこれに、摂社(せっしゃ)、末社(まっしゃ)と呼ばれる、各神社に付随する大小さまざまなものを含めると、その数は実に20万から30万社にも及ぶと言われており、いかに神社という存在が、私たちの住む日本という国に深く関わっているかということがおわかり頂けるのではないか。


 しかし、これほどまでに神社が日本を象徴する文化的施設でありながらも、そのデータベースすら存在することはない。だから、日本のどこに、どんな趣向の神社があるのかもすぐにはわからないし、メディアに一時的に取り上げられるような神社に一瞬興味が向かうことはあっても、本来自分にもっとも関係の深い、地域の守り神である「氏神さま」にまで関心が及ばないあたりは少し残念なところでもある。


 神道は日本の文化のあらゆる源泉に関わるだけに、ある意味、日本文化のマスターピースと言っても過言ではないはずだ。それにもかかわらず、「一過性のブーム」しか取っ掛かりがなく、一部の神社に興味を抱くことはあっても、神道や日本の伝統文化、慣習といった歴史の本質の部分にまで思いが及ばず、体系立てて理解を深めることなどままならないのが今の日本の課題と言えるのだ。


 こういった背景から、私も何とかしてその架け橋となることができないかと思い、およそ4年前に始めたのが、全国に約8万社ある神社のデータベース構築を目指した神社情報ポータルサイト「神社人」であった。


 しかし、実際にこの活動を進めていくと、この問題は神社、神道だけで終わる話ではないということに気付かされる。日常に関わるあらゆる文化的習慣に対して、日本人は今、思いのほか「無知」になりつつあるのではないか……。そんな危惧を抱く瞬間がままあるのだ。これはある意味、日本人としての教養力が低下していると言い換えられるのかもしれないが、「日本」という大きなテーマに深く関わる活動をしていると、こうした由々しき事態に気付くのもまた必然だったと言えるだろう。


 例えば、正月を代表とする年中行事や祝祭日の成り立ちについて、その基本的な意味を説明することすら覚束ないのはその最たるもので、なかでも、大半の日本国民が「建国」の時期すら知らないというのはあまりにも情けない話なのではないだろうか。もちろん、国内にいると、そうした日本人なら知っていて当然の常識に、改めて深く考えるような機会などないため、自分の教養がどの程度あるのかさえ実感しにくい部分もあるかもしれない。しかし、一度海外に出た経験のある方ならおわかり頂けると思うが、そこでは、その人個人の考えや意志に関係なく、“one of them”、つまりは「数多いる日本人の中の一人」としての見識を求められる。このため、自国の文化すら雄弁に語ることができない人間は、「社会性に欠陥がある」とのレッテルを貼られかねず、恥ずかしい思いをすることも少なくないのだ。そういう意味では、私が言う教養力は「その人個人の社会的資質」を測る物差しの役割を果たすと言えよう。


 私が、最近、新たに一般社団法人国際教養振興協会という団体を設立したのも、こうした実情を踏まえ、自分なりにこの日本の持つ独自の魅力を、改めて世界に発信できないかと思ったからである。

 日本は紛れもなく世界有数の文化立国である。私たちはさも当たり前のように今の生活を享受しているが、そこに至るまでには、先人たちの生きた知恵と経験が数多く活かされている。神社とはまさにその中心的な存在であり、私たち日本人のアイデンティティの源泉にほかならないのだ。


 8万社のデータベース構築に向け、全国のみなさんに、地元の「氏神さま」の写真を送ってもらえないかとアナウンスを始め、2013年8月現在で、ようやく1万社を超える情報が集まった。私自身も、実際にカメラ片手に全国を巡拝し、訪れた神社の数はこの4年間ですでに1000社以上にものぼる。時には、「なぜ、自分はこんなことをやっているのだろうか……」と自問自答に駆られることもあったが(苦笑)、それでも、何とかコツコツやり続けることができたのは、先人たちが歩んできたその歴史的ダイナミズムに、健全な悦びと誇りを素直に感じ取ることができたからである。今では、毎月のように「神社人講座」という勉強会を開いているが、参加者のみなさんとの対話を通じてもやはり同じような想いを感じている。


 本書は、そんな私が、ただひたすら活動に没頭してきた4年間の軌跡であり、自分なりの神社、神道に対するひとつの“解釈”をしたためたものだ。もちろん、神社、神道の歴史は古く、必ずしも「これだ!」という定説があるわけではない。そのため、それぞれの解釈は読者のみなさまに委ねるほかないが、この神社に対する関心の先には、私たち日本人が生きていく上でのヒントが隠されていると思っている。本書のタイトル「神社ツーリズム」とは、そんな先人たちの遠い記憶に感謝の意を込めた「平成のおかげ参り」であり、自らのルーツを刻む日本人再生の旅でもある。


 私たちの生きる日本という国を見直すひとつのきっかけとして、本書が少しでもお役立て頂けるようであれば幸いである。
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