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なぜ上司とは、かくも理不尽なものなのか
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ビジネス
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第五章 ネガティブにダメな上司の合理性

『なぜ上司とは、かくも理不尽なものなのか』
[著]菊澤研宗 [発行]扶桑社


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1・都合の良い人ばかりをメンバーに選ぶダメ上司

 
◆子飼いの部下からなるプロジェクト・メンバー

 

 新規事業の開発や恒例のプロジェクトの指揮を任された管理職は、そのための委員会やプロジェクト班のメンバーを選ぶ際、「使いやすい」という条件を第一に優先させることが多いものです。
「使いやすい」メンバーとは、いわゆる「子飼いの部下」のことです。要するに、自分に服従することが一〇〇パーセント期待できる、その上司にとって非常に都合のいいメンバーたちです。

 北京オリンピックに向けて、日本の野球チームの監督に星野仙一氏が指名されました。選手の選抜はこれからですが、いわゆる星野ジャパンのコーチ陣は、すでに発表されています。山本浩二、田淵幸一、大野豊の三氏です。プロ野球にくわしい人なら、この顔ぶれを見たとたんに、思わず苦笑するところでしょう。

 山本浩二氏は、六大学野球以来の星野氏の親友で、田淵幸一氏は、星野氏が阪神の監督となってペナントを制したときにバッティング・コーチを務めて以来、星野氏の崇拝者になっています。
「仲良しクラブだとは思わないでください。この首脳陣で、ビシビシときびしくやります」

 星野氏は、報道陣の機先を制するかのように、自らそう言ったのです。そのあたりは、さすがです。自分からそう言い出されては、マスコミのほうは、その“情実人事”への批判を向ける気勢をおおいに削がれてしまうものです。

 ま、山本氏、田淵氏、大野氏の場合は、いかに星野監督にとって都合のいい人選であるとはいえ、優秀な人材には違いないので、一概に「情実」とは言い切れないでしょう。

 新規事業やプロジェクトのリーダーとなった上司の人選も、たとえ彼にとって都合のいい人間ばかりであっても、十分な経験と能力をそなえていることがはっきりしているならば、組織にとってもきわめて合理的と言えます。

 ところが、その人選が、上司にとって都合の良さだけを条件にしていることが明らかな場合が多く、こうした人選の発表がなされたとき、他の現場の社員たちは、たちどころに人選の意図を見抜いてしまい、フッと失笑する者もいれば、ハァ〜と脱力系のため息をもらす者もいるでしょう。

 しかし、新規事業やプロジェクトに関心と意欲を持ち、かつ経験と能力に自信を持ちながらも人選から外された社員にとっては、失笑やため息ですむことではありません。彼らのなかに生まれるのは、その上司への不信を超えた、組織全体への不信です。

 
◆イエスマン集団とルーティンの関係

 

 いったいどうして、そのようなダメな上司が大事なプロジェクトのリーダーに選ばれてしまうのでしょう? また、どうして、そのようなダメ上司は、能力や経験をそっちのけにして、自分にとって都合のいい部下だけを選ぶのでしょうか?

 その二つの問いについては、一つの答えで事足ります。一口に言えば、事業の方向がある程度決まっているような安定した企業では、あらかじめ定められた結論を会議の場でくつがえすような独創的な意見を述べる人間や、プロジェクトのリーダーの不備を指摘することが予想されるようなスペシャリストは、もともと必要ないのです。そのような人材は、このような会社の会議に向いていないのです。

 したがって、プロジェクトのリーダーには、あらかじめ決められた事業の方向をすんなりと受け入れる人材が必要なのであり、それゆえそのような人が選ばれるのです。よくしたもので、そういうダメなリーダーは、自分の言いなりになるイエスマンだけを周りに集めて、議論百出によって意見を調整するのに必要な膨大な「取引コスト」を大幅に取り除いてくれるのです。そして、そういったコスト節約に長けている人が、むしろリーダーに選ばれやすいのです。

 こうした予定調和による取引コスト節約制度は、ルーティンというキーワードによって説明することができます。進化経済学者のネルソンとウィンターによれば、組織は基本的に「ルーティン(routine)」によって動いているものとみなします。ルーティンは、「お決まりの仕事」を意味する横文字日本語になっていますが、ネルソンとウィンターの進化経済学では、とくに「規則的で予測可能な行動パターン」を意味しています。

 企業組織には、生産活動におけるルーティン、広告宣伝活動におけるルーティン、雇用と解雇におけるルーティン、そして企業戦略におけるルーティンなどさまざまなお決まりのルーティンが存在しています。

 それらのルーティンについてのネルソンとウィンターの考えは、マイケル・ポランニーが主張した「暗黙知」の考えによく似ています。ポランニーは、人間は話せる以上に知っていると言います。動作、運動、仕事は、一つ一つ言葉では十分説明できませんが、そこには非明示的な知識つまり暗黙知があり、それに従って人間は物事を認識し、行動していると主張しています。

 たとえば、アルトサックスでエクスプロージョン(即興)を演ずるチャーリー・パーカーも、ブラインド・タッチでパソコンを操作するビジネスマンも、自転車に乗る人も、いちいち自分の動作について考えることなく、身体にプログラムされた記憶、暗黙知によってそれらの道具を操っているのです。

 それらの自動的な動作、運動、仕事にほとんどミスがないのは、個人的なスキル(熟練した技術)のたまものです。ネルソンとウィンターは、そうした個人的スキルを組織のルーティンになぞらえています。つまり、組織の行動は、熟慮を重ねた合理的な計算や合理的な選択によって意思決定されているのではなく、その大部分は、スキルのようなプログラム化された自動制御装置つまりルーティンによって決定されているのです。
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