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おいしい話に、のってみた。
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ルポ・エッセイ
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はじめに

『おいしい話に、のってみた。』
[著]多田文明 [発行]扶桑社


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――不安は煽られる。欲望でカモられる。






    近年、景気がなかなか回復しない中で、私自身も日々の食いぶちを稼ぐのに必死である。おいしい話がどこかに転がっていないか、いつも目を皿のようにして見ている。特にインターネットには、私たちの冷えきった懐を温めてくれ、お得そうに見える情報がたくさん載っている。

    通信販売で商品を買う場合、ネット上で価格を比較すれば、より安い値段で商品を手に入れることができるし、外食の際には、割引になるクーポンを出しておけば、割安で食べられる。しかし、これだけではちょっとお得なだけである。そこで、さらなるおいしい情報を求めて、メールマガジン、SNS、検索サイト、ネット掲示板に至るまで、手当たり次第にあたってみた。ときに、パソコン画面にこれ以上進むと、セキュリティ上危険だという表示も出たが、あえて進んでみた。

    それにしても、今はネットにアクセスしただけでポンポンと情報が入ってくる便利な時代である。ただし、こうした情報はウマイもマズイも一緒くたになっているので、眉唾な情報を排除していかないと、とんでもない目に遭う。

    例えば、私のパソコンには違法なアダルトDVDや偽ブランド品を買わないか? といったメールが頻繁に届く。もしこれらを気軽に買ってしまうと、しばらくしてNPO法人や女性人権団体を騙った「告発状」が送りつけられる場合がある。

    そこには「以前にあなたが買った児童ポルノなどのわいせつなDVDを販売していた業者が警察に逮捕された。違法な商品を購入したあなたも刑事告訴する」といった内容が書かれている。慌てて、この団体に連絡を取ると、告発取り下げの費用を請求される。もちろん、これはウソなのだが、心のどこかにうしろめたさを抱えているため、つい払ってしまう人は多い。

    このような一目で違法とわかるものには手を出さない人でも、コミュニティサイトで友達になった人から「簡単に稼げるアルバイトがあるよ」と言われれば、思わず話を聞いてしまうのではないだろうか。この種の勧誘で問題になったものに、携帯電話を契約すると一台につき数千円のお金がもらえるといったアルバイトがある。今でも時折、この種の募集を掲示板で見かけるが、求人側に詳しく話を聞くと「こちらのほうで携帯料金の支払いを持つから安心してください」などと言われる。この言葉を信じて契約した携帯電話を先方に渡してしまうと、確かにアルバイト料はもらえるのだが、数か月後にそれを超える額の請求書が届くことになる。しかも、こうした携帯電話の多くは振り込め詐欺に使われてしまうので、犯罪の片棒を担ぐことにもなる。ネット上の情報を取捨選択する力がないと、“知らなかった”ではすまされない、とんでもない事態に陥ってしまう。



   時代とともに変化する悪質商法

    2002年に私は「キャッチセールス評論家」の立場で『ついていったら、こうなった』(彩図社)を著した。このときはキャッチセールスなどの強引な勧誘が全盛だったが、悪質商法を取り締まる法律が厳しくなり、次第にこうした勧誘は下火になっていった。しかしそれに代わって、ネットを通じた悪質商法が跋扈するようになった。もちろん、旧来の勧誘もなくなったわけではなく、法律の網の目をかいくぐりながら、私たちのもとにやってくる。

    今回、私は幸運をもたらすというグッズを買ってみた。そのとき、一社からしか商品を買っていないのに、同様な商品を扱う複数の業者から次々とダイレクトメールが送られてきた。その後、私は「効果の感じられないグッズだ」と、購入した業者へたびたび文句を言うと、この業者から一切の連絡がこなくなった。それとともに、あれだけ頻繁にきていた他の業者からの手紙も一通も届かなくなったのだ。要は、ひとつの業者が、複数の会社名を名乗って、ダイレクトメールを送っていたのである。

    なぜ、このような手を使うのか? 消費者を守る法律に、特定商取引法がある。悪質商法の巧妙化とともに法律が改正されて、勧誘に対して厳しい規制がかけられている。例えば、勧誘を断った人に二度と勧誘をしてはならないという「再勧誘の禁止」が定められている。しかし悪質業者にとって、一度でも商品を購入した人は、カモである。断られたとしても、二度三度とアプローチをしたい。そこで、社名を変えるという手に出る。事前に、私のもとに複数の業者名でダイレクトメールを送っておくことで、ひとつの業者名で断られたとしても、今度は別の社名で再び勧誘できるというわけだ。



   不安が渦巻く社会の中で

    今は、不況の波の中で多くの人が職を失っている。さらに東日本大震災が発生し、原発事故が起き、多くの人が目に見えない不安に直面しながら生きている。これまでの日本は経済的にも比較的安定した社会だったので、人々はそれほど過度な不安を抱くことがなかった。

    商品を販売する悪質業者にとって、不安というものは、購入させるための大きな動機になるものだ。例えば、点検商法を行う悪質なリフォーム業者は、「柱が腐っているので、家が倒れる」などと脅す。それを聞いた消費者は不安になり、その業者に家のリフォームをお願いする。また霊感商法では、過去に悪事を働いた先祖の霊が、今のあなたに影響を及ぼしているので不幸が起きていると、深刻な不安と恐怖を作り出して、悪霊を払うツボなどを売りつける。

    安定していた社会状況のもとでは、悪質業者は先のような不安を作り出す必要があった。しかし3・11以降、状況は一変した。そんな手を使わずとも、多くの人々の心に、地震や放射能への恐怖、今後の生活への不安がすでに渦巻いており、こうした心にある不安をつつけば、簡単に騙し売りができてしまうのだ。悪質業者の目線からいえば、今は不安を作り出すというワンステップが不要で、実に騙しやすい時代なのである。


    今回、体験してみたさまざまなおいしい話は必ずしも金銭面だけの話ではなく、仕事での成功や幸せといった心の充足感をもたらすものもある。不安感を抱える中で、業者がひけらかすおいしい話は、私たちの目にとても魅力的に映り、つかみ取ってしまいたくなるものだ。しかし、そこにはどんな危険なワナが潜んでいるのか、わからない。本書を通じて、現代の詐欺や悪質商法から身を守るための知恵をつかみ取っていただければ幸いである。
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