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ルポ・エッセイ
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第11章 「溢れる情報」 求人掲示板で仕事を探す

『おいしい話に、のってみた。』
[著]多田文明 [発行]扶桑社


読了目安時間:11分
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 長引く不況の中、仕事につけない人たちが増えている。しかし無職のままでは生活が困窮するばかりである。そこで手っ取り早く稼ぐには、やはり時間の融通がきくアルバイトをするのが一番だ。私も不安定なライター業の収入ばかりをあてにしてはいられない。

 ネット上には、さまざまなアルバイト募集が載っているが、迷惑メールを通じた求人には怪しいものが多いので注意したほうがよい。

 例えば、月に数十万円を稼げる「メールカウンセラーをしないか」という求人メールに応募すると、知らない間に出会い系サイトに登録させられ、「報酬とともに通信料を支払う」という言葉を信じて有料メールのやりとりをしていると、のちに高額な請求がくるといった被害も起きている。では、ネットの求人掲示板はどうなのか? ここにもいろんな募集で溢れているが、一見しただけではどんな仕事なのかわからない怪しいものも多い。

「名義人になれば一件あたり3万円」


 求人掲示板で私は「ウィークリ―マンションの名義人募集」の書き込みを見た。メールで問い合わせてみると「名義人になってくれれば、一件あたり、3万円のアルバイト料を支払います」と言うのだ。名前を貸すだけで3万円がもらえるとは、おいしい話である。だが、「待てよ」と思いとどまり、私は質問をした。
「借り主が家賃を滞納してしまうと、その請求が私に回ってくるのではないですか?」と疑問をぶつけてみると、相手は「こうしたマンションは前払い制になっているので、家賃の滞納は絶対にない」と断言する。確かに家賃の滞納はないかもしれないが、トラブルに巻き込まれることはあるのではないか。

 そう思ってた矢先、マンションの一室が振り込め詐欺のアジトとして使われていたというニュースが流れた。この事件では、名義貸しの業者から名前を借りて、部屋の契約をしていた不動産業の男が逮捕されている。名義貸しアルバイトでは、違法な活動に自分の名前が使用される可能性があり、かなり危険にさらされそうである。

 この求人話に応募せずにいると、今度は「郵便物を受け取る仕事をやらないか」ともちかけられた。どうやら、自分の家を私書箱にして荷物を受け取る仕事のようだ。そこで私は「代引きの郵便で、料金が発生することはありませんか?」「違法なものが送られてこないのか?」と聞いてみると、「そのようなものは一切ない。企業から送られてくる書類なので安心なものばかりだ」と答える。

 しかし家に届いた書類を引き渡す際にもらえるお金が、1件につき2000円と聞き、かなりの金額でどうにもまっとうな郵便物ではなさそうに思えた。もしかすると、振り込め詐欺などでお金を郵送させる住所に使われてしまう可能性だって十分に考えられる。当然ながら、断った。

 アルバイトを雇う側の身元がはっきりしていれば、トラブルに見舞われた際の責任を持ってくれるだろうが、メールだけのやりとりだけで、相手の身元がわからないまま仕事をすることは極めて危険である。

「面接にてすべてお話します」


 では、勤務先などの身元がはっきりしている、一般の求人サイトや求人情報誌の募集は安心なのだろうか。必ずしもそうとは言えない。

 ある求人サイトには「データ入力」のアルバイト募集があった。ここには未経験者でも時給1500円以上を稼ぐことが可能とある。

 これまで私はハローワークなどを通じて、入力業務の仕事をしてきたが、よほどのスキルがない限り1500円をもらえることは、まずない。未経験者での入力業務では、高くても1000円ほどになればいいのではないだろうか。

 未経験者で1500円も稼げる入力アルバイトとはどんなものか。求人先に電話をして仕事内容を聞いてみたが詳しい話はされず、「面接にてすべてお話をします」と答えられるのみだった。やましい仕事なのか、概略さえも教えてくれない。それでもしつこく尋ねると「メールオペレーターのような仕事になる」という答えが返ってきた。メールオペレーター!? さらに、わからない答えである。

 過去に、こうしたアルバイト面接を受けた人に話を聞いてわかったのは、これは出会い系サイトのサクラのアルバイトだということである。第5章「『FB』であのタレントと友達になる!」でも、私のもとにいろんな芸能人を騙るメールがきたが、こうしたメールを送るのがサクラの仕事である。

 しかし昨今、サクラサイト商法が騒がれており、摘発される業者も出てきている。警察に逮捕されて一生を棒に振らないためにも、このような仕事には手を出さないに限る。

「実は社長は有名人なのです」


 一般に頒布されている求人情報誌の募集を見て応募し、被害に遭った人もいる。

 今から4年ほど前、40代女性はある無料求人誌の広告に載っている「外国でのブランド品やアクセサリー買い付けアルバイト」の募集に目を奪われた。これは海外旅行をしながら「買い付けの手伝い」をする仕事で、旅費は会社持ちで日当は1万円ほどになる。

 ただで海外旅行に行けることに興味を持った彼女は応募してみた。当時、彼女はフルタイムで事務の仕事をしており、副業として行うのにちょうどいいと考えたのだ。

 3日後、都内のホテルの喫茶店で面接を受けた。30代の女性社員が面接官である。女性社員は彼女の履歴書と身分証明書を受け取ると、その中身をさらっと見て、「なぜ、現地での“買い付けアルバイト”が必要なのか?」の説明を始める。
「ブランド品を購入するにあたって、現地では一人が買える金額が決まっており、会社自体で買うことができる限度額も決まってしまうのです。そこで、アルバイトを募集しているのです。あなたにはクレジットカードを使ってブランド品を買い、仕入れの手伝いをしてほしい」と言うのだ。

 海外のブランド品にそれほど詳しくない彼女は、女性社員の言葉をすんなりと信じた。

 女性社員は「カードは何枚持っていますか?」と尋ねてきた。彼女は7枚ほど持っていることを伝えると、納得したように大きく頷く。さらに「あなたには、カードをもっと作って使える限度額を広げてもらえればと思います。そうすることで、アルバイト料も増えます」という説明がなされた。

 彼女が受け取るアルバイト料は、100万円の商品を買えばその金額に対する3%、3万円の手数料がもらえ、それにプラスして日当が支払われるというのだ。

 心配なのはブランド品を買ったあとに、支払いが滞ることがないかである。その点について、女性社員は「この仕事を何年もやっている人もたくさんいるので安心してほしい」と言い、会社案内のファイルを見せながら、説明をする。

 それを見て、彼女は「あれっ?」と思った。というのも、会社案内の代表者名が伏せられていたからだ。その理由を尋ねると「実は彼は有名人なのです。ブランド買い付けの仕事をしていることを一般に知られたくないので、お仕事をしていただくまでは代表者名は伝えられないのです」と言われたという。

 ひととおりの説明を終えると、女性社員は「やれるでしょうか?」と尋ねてきた。特に説明に不十分な部分を感じなかった彼女は「はい」と答え、面接は合格となった。

「ブランド品購入には上限があります」


 面接から1か月後、2泊3日でマカオに向かうことになった。航空券などは会社から郵送されてきた。マカオに着くと、5〜6名のアルバイトの人たちと合流した。そのうち、20代の主婦は夫とともにこの仕事を1年位していると言い、彼女はとても安心した。その他、30代〜40代の男性4人、50代女性といずれも何度か買い付けアルバイトをしている人たちだった。

 アルバイトたちを束ねるのは「I」という名の中肉中背の男である。鼻筋が通っていて、どことなく歌手の尾藤イサオに似ていた。

 彼はアルバイターたちを、ホテル内にある古美術店や宝石店に連れて行った。しかしながら、不思議なことに、この男は直接にカードで商品を買わせようとはせず、「クレジットカードのキャッシング枠で、現金に換えてほしい」というのだ。買い物だと思っていた彼女は不思議に思って尋ねると、男は「ここでは、一人一人のブランド品を買う上限が決まっているので、すべて現金にしてから買い付けに行くようにしている」という答えが返ってきた。

 キャッシングに対して、彼女は一瞬、躊躇したが、このビジネスの先輩アルバイトたちが当然のようにしているので、彼女もIの言葉に従い、持っているクレジットカードで現金化した。結局、彼女は3日間の滞在中、120万円ほどのキャッシングをした。帰りに日当として、まず男から3万円が手渡された。カードの代金120万円と手数料3%の3万6000円は、翌月末に振り込まれるということだった。

「国外にお金をプールしています」


 2回目の買い付けアルバイトは、翌月の初めに行われた。このときも、行き先はマカオである。ここでもやはり、Iがナビゲートする。現地では、30代夫婦、60代男性が合流した。前回同様、ホテル内のお店や両替所を回るなどして、3日間の滞在でカード6枚を使い700万円を現金化した。このときも、日当3万円をもらい、代金と手数料21万円は後日、振り込まれる予定であった。

 しかし月末になっても、1か月前の120万円と手数料3万6000円が振り込まれていない。彼女は驚いて、会社に電話をすると「手違いなので1週間待ってくれ」と言う。しかしながら、1週間待っても、お金は振り込まれない。再び電話をすると、今度は「盗難に遭ったから、1か月待ってくれ」と言い出し、まったく入金されることはなかった。

 そして翌月、会社から封書が届いた。それを開いてみると、会社が経営破綻したと書かれている。800万円ものお金をどう返せばいいのか。彼女は急に不安に襲われた。その後、説明会が開かれるという封書が届いたので、会場に向かうと100人ほどが集まっていた。

 ここではじめて、彼女は海外で買い付けアルバイトをしたとき、アルバイトらを先導していたIが、この会社の社長であることを知った。面接時に社長は有名人と言っていたが、まったくの嘘であった。

 しかも、彼女はマカオでIに「社長さんはどんな方ですか?」と尋ねていたが、答えてもらえなかった。自分のことを尋ねられているのに、それに答えない。その理由が、この男の悪名がすでに世に知れ渡っていたことへの警戒感からだったとようやく気づいたが、時すでに遅しである。

 しかも説明会が行われる直前に、社長はIから別の男性に代わっていた。その男が壇上に立ち、経営していたIから、この会社を買い取ったと説明を始める。男は「私が代金の支払いに関して必ず責任を取る」と言い、「国外にお金をプールしているので、1か月後に現金化してお返しする」などの説明がなされた。

 借金を背負わされたアルバイトたちから、「信じられるか!」「すぐに金を払え!」の怒号が飛び交う。

 男は、ひとつの提案をする。カードの支払いを「毎月の分割払いにする」という和解の書面に同意してくれれば、この場で「今月分として3万円を渡す」と言うのだ。彼女は、この男と交渉し、書面上は「毎月3万円以上を振り込む」となっているが、実際には毎月20万円を分割で支払うことを確約してもらえたので同意した。

 しかしながら、翌月は5万円の入金しかなく、その後は入金はまったくされず、会社との連絡自体が取れなくなってしまった。

刑事告訴に動いたものの


 この会社の被害に遭った人たちは、その後、国内で警察に被害届を提出したが、これまでにカード代金を支払ってもらっているという事実もあり、詐欺罪と断定するには困難との理由から、受理してもらえなかった。

 もともと元社長であるIは、マカオだけでなく、タイ、韓国でも買い付けアルバイトをさせていた。そこで被害者らは、タイ警察に詐欺の疑いで告発した。アルバイトらに現金の立て替え払いをさせながら代金などを払わなかったとして、国際刑事警察機構(ICPO)を通じた国際指名手配までにこぎつけた。

 当時の新聞では、タイだけでなく「マカオでも100人近くにブランド品の買い付けと称して、クレジットカードで現金化させ、約5億円が未払いになっている」という報道がなされており、被害はかなりの額に上っている。しかしながら、日本とタイは犯罪人引渡し条約を締結していないので、Iが日本国内にいたとしても日本の警察は、身柄を拘束できない状況だという。

 今もなお、ネットの掲示板で「お買い物の代行をしていただける方を募集いたします」というものを見かける。だが、アルバイトをする上で、働く側が最初に多額の金を持ち出さなければできないような仕事にはかなりの危険が伴う。いくらおいしい話が目の前に提示されても、こうした仕事とは付き合わないようにしたい。
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