七世紀の建築が今なお生きている
奈良の法隆寺が世界一であるという理由は、まずこれが七世紀に建てられた、現存する世界の木造建築で最も古いものである、ということである。同時に、その建築を取り囲む寺院自体が今なお活動し、営みを続けている結果、それが死んだ過去の建築の美しさではなく、生きた美しさを持っていることによる。
なるほどアテネのパルテノンの神殿も美しいが、しかしこれは廃墟である。死んでいる建築なのだ。よく見るとその白亜の殿堂が、破壊され掠奪され、歴史の無残さを感じさせる(傷んだ彫刻の多くはロンドンの大英博物館にある)。
ローマのサンピエトロ大聖堂は確かに法隆寺同様、カトリックの大聖堂として生きて使われている。そのミケランジェロの作であるドームも、その内部も美しい。しかし、その前面のファサードは凡庸なマデルナの作で、前の広場の列柱はベルニーニのバロック的な建築である。決して統一されたものではない。