一瞬の美を楽しむ
浮世絵に、夜空の花火が美しく描かれる。広重のそれは満開の花火だけではなく、光が夜空に垂れてくるところも描いている。それ自体、江戸の人々の、心から愛した夏の風物詩であった。
日本人は花火による一瞬の美を楽しむ。それはたった数日間の満開の桜の花を楽しみ、それが散っていくのを惜しむ、その心に似ているかもしれない。夜空の大きな桜花を楽しんでいるのである。
日本の花火が世界一というと、欧米とそんな差があるだろうか、という疑問が出るかもしれない。しかし基本的に欧米と異なるのは、その花火球の形の違いで、日本では球形なのに、欧米では、円筒形であることだ。
球形であると、その破裂は円状に広がる。その原動力は「星」と呼ばれる火薬の配置にある。「星」は花火の殻の内側に、花びらのように、同心円状に層をつくって並べられている。それを爆発させるのが「割火薬」で、それが均等に力を発揮させなければならない。