読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-1
kiji
0
1
1061667
0
だてマスク依存症〜無縁社会の入口に立つ人々〜
2
0
0
0
0
0
0
ルポ・エッセイ
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
◎赤の他人に自分の内面を語るというカタルシス

『だてマスク依存症〜無縁社会の入口に立つ人々〜』
[著]菊本裕三 [発行]扶桑社


読了目安時間:5分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ

菊本 よろしくお願いします。本書は、最近、若い人を中心に流行している[だてマスク]という、風邪でも花粉症でもないのにマスクをつけて、人とのあいだに“壁”をつくっている人を私なりに検証した内容です。また、私が代表を務めている「聞き上手倶楽部」に電話をかけてくるクライアントさんの話を中心に、友人や身内にも本音を明かせない人たちの心理にも言及しています。

 
「『オレなんかに、自分の内面を晒して大丈夫なの?』って思いますね(笑)」(春日・写真右)
「まったく同感です(笑)」(菊本)

 
春日 実は昨年、生まれてはじめてタロット占いに行ったんです。料金は1時間6000円だから、ちょうど「聞き上手倶楽部」と同じでした。インターネットで下調べしてみると、まぁ、そんなに怪しくはなさそうだったから(笑)。
菊本 真剣に占ってほしいことがあって行ったんですか?
春日 ええ。なぜ、そこに占ってもらいに行ったのかというと、怪しくなさそうだというのは大前提として、相談内容が非常に言いにくいものだったからなんですよ。私は物書きという仕事を自分なりに一生懸命やってはいるんだけど、いまいち“色物”としてしか見られないし、そういうような状況がもうイヤになっちゃいまして(苦笑)。こういう悩みって、まず仕事仲間には相談できないし、女房に話すのもナンだし……かといって猫に聞いてもらってもねぇ。
菊本 とにかく話をしたかったわけですね。
春日 それが一つと、嘘でもいいから、具体的な答えを示してほしかった。「東の方角に黄色いものを置きなさい」でいいから。延々と喋ったんだけど、これが実に気持ちのいいものだったんですね。つまり、ここでなら安心して喋れる。そして、自ら話して、一線を越えている感じが、ある意味、すごくエロティックなことをしているように思えた。何か、他人に自分の内面を晒している感じが、とてもよかったんです。だから、話し終えるとすごいスッキリしたんです。ただ、実際のタロット占いの結果はというと、ろくでもないカードばかり出てきて、また、占い師の言うこともひどくて……。「あなた、自分で勝手に孤立したがってるんだから、当分はこのまんまですよ」とか。おまけに「夫婦関係も危ない」とか言ってくるし。
菊本 そこまで聞いてないのに……(苦笑)。
春日 そんなに危なくないはずなんだけど、「もしや!?」と思って、女房が「クルマあってもいいよね」って言っていたのを思い出して、翌週、クルマを買いにいっちゃいましたよ(笑)。まったくの他人に話すということが、カタルシスとは少し違うけど、私にすればやましいことをしているような、勝手に秘密を相手に押しつけたような気持ちよさというか、確かに喜びを感じたんです。ただ一方では私自身、精神科医として人の話を聞いていますが、理屈では人の話を自分が聞くことでそれなりに役に立っているということはわかっていても、もう少しマシな人に話すならまだしも、「オレなんかに話して、大丈夫なの?」って思いますけどね(笑)。
菊本 まったく同感です(笑)。話を聞くことを仕事にしているものの、話す側からすればやっぱり怪しい(苦笑)。「聞き上手倶楽部」のクライアントさんはいろんなことを話してくださるんですが、「そんなこと僕に話していいの?」って思うこともあります。それでも、この仕事を始めた当初は、悩みを抱えている人を何とか救ってあげようとしていたんです。でも、仕事を続けていくと、救うという意気込みは違うなと気づいたんです。僕は神様じゃない、と。
春日 はい。
菊本 以前、話すことに不自由した経験がありまして。美容師をやっていた若い頃、イギリスに留学したんです。当然、授業も英語で。すると日本語が話したくて仕方なくなるんです。それで日本人観光客をつかまえては、誰彼なく話していました。まったく関係のない赤の他人に自分の近況をベラベラと(笑)。そのとき痛感したのは、話すことは人間の大きな欲求の一つなんだなということでしたね。
春日 美容師って、客がしょうもない話をしてくるじゃないですか。あれは苦痛じゃないんですか?
菊本 あれはですねぇ……正直、苦痛でした(笑)。ただ、その頃、指名客がたくさんついている先輩の美容師をよくよく見ていると、聞き役に徹しているんです。特に女性のお客さんは喋りたがりますからね。話の内容自体は春日先生がおっしゃるとおり、本当にしょうもないというか、どうでもいい話ですよ(笑)。「今日は日曜っていうのに、旦那は家でゴロゴロしてるし、しょうがないから美容院にきたの」といった夫へのグチとか。「ああ、そうですか」としか答えようがないような。でも「ああ、そうですか」と、ただ返答しているようでは指名につながらない。やはり、「興味がありますよ」という態度で聞いてあげると、お客さんはどんどん乗ってきますね。
春日 へぇ、そうなんですか。
菊本 次回は指名してくれるようになって、それはありがたいんですが、お客さんはヘアスタイルの話なんてしないんですね。「で、この前の続きなんだけど……」って、いきなり“第二話”が始まる(笑)。僕、一応、美容師なんですけどって思うけど、お客さんはそれで満足なんです。これは「聞き上手倶楽部」のクライアントさんにも通じる話で、単なる雑談がしたくて電話をかけてくる人も多いんですが、彼らにすればウチに電話をしてくるエクスキューズがいるんでしょう。僕らは“お土産”と呼んでいますが、悩みや相談事がないと電話をかけてきにくいようなんです。では、そういう人たちがどんな話をするかといえば、相談事は5分程度で、メインは雑談だったりするんです。相談事は雑談をするための“手土産”なんですね。
春日 大義名分になっているわけですね(笑)。

 
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:0文字/本文:2370文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次