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ニッポン犯罪狂時代
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ルポ・エッセイ
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エピローグ◎誰が身体を張ってあなたを守るのか?

『ニッポン犯罪狂時代』
[著]北芝健 [発行]扶桑社


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 大統領候補の一人とも目されたこともあるルドルフ・ジュリアーニ氏は、ブルックリン生まれの陽気なイタリア系。しかし一九九三年(平成五年)、ニューヨーク市長に就任した直後にとった治安対策は、他に類をみないほど厳しいものだった。

 それまでのニューヨークは犯罪のメッカであり、観光客も激減していた。

 ルーディはニューヨーク市警のトップにウイリアム・ブラットンを採用。

  1 ブロークン・ウインドウ(割れ窓理論)

  2 コンセプト・プログラム

  3 警察官の増員

 といった施策で、社会環境の大改革に着手した。

 割れ窓理論とは、わずかな窓の破損でも放置しておくと、犯罪を誘発する可能性があるので、見逃すわけにはいかないというものだ。目から入ってくる環境情報が犯罪を引き起こすという考え方である。

 実際、ニューヨークのスラム街や倉庫街でよく見られた割れたガラス窓やグラフィティ(落書き)、道ばたに投げ捨てられた吸い殻は一掃。空き巣やひったくり、路上での押し売りや車の窓ふきまで徹底的に取り締まり、観光バスでさえ路上駐車をためらうほどになった。殺人などの凶悪犯罪は激減した。

 その後の同時多発テロの際も、見事な危機管理で名を上げたジュリアーニ氏は、徹底した封じ込めの思想の持ち主なのである。

 日本の治安はかつてないほど危機的な状況にある。もはや一刻の猶予も許されない。われわれもジュリアーニ氏の施策に学ばなくてはならない。そして、その一つである、警察官の大幅増員に着手しなくてはならない。何よりも最優先にすべきことと考える。



 平成一六年八月三日午前三時二〇分頃、大阪府警天満署地域課のパトカーは北区四つ橋筋交差点で信号無視した赤い国産高級車を見つけ、サイレンを鳴らして追跡。車は約一五〇メートル逃走し、ビルの地下駐車場へ逃げ込もうとしたが、シャッターが閉まっていたため停車した。パトカーは駐車場への入口を封鎖したが、車はバックで二度、三度と体当たりをし、制止しようと車を降りていた藤田義樹巡査長(五〇歳)を右前輪に巻き込んだまま約五〇メートル引きずった。藤田巡査長は午前六時四五分死亡が確認された。

 犯人の暴力団組員(四四歳)は覚醒剤を使用していた。


 平成一六年一〇月二〇日、京都府久美浜警察署佐濃駐在所の村でたった一人の警察官、比留木彰巡査部長(三〇歳)が、台風二三号による大雨で増水した川へ転落し、命を落とした。比留木巡査部長は嵐の中、陥没した道路にカラーコーンを設置し、通行する車両の安全を確保しようとしていたところ、事故に巻き込まれたという。

 全国の警察関係者で警官殉職のニュースを聞き、エリをたださぬ者はいないだろう。警察を離れて長い私でさえ、時には涙を禁じ得ない。


 東京都中央区京橋にある警察博物館三階に殉職警察官の功績を讃える「顕彰コーナー」がある。ここには多くの殉職警察官の遺影や遺品が残されている。浅間山荘事件で連合赤軍の兵士に打ち抜かれたジュラルミン製の盾や、血に濡れた制服は生々しい。

 現場の人間は文字通り身体を張っている。このような職務は自衛隊や海上保安庁など一部の職種に限られる。

 たとえば、凶悪犯が人質をとって立て籠っているとしよう。現場の指揮官が部下を一堂に集め、
「突入できるものは手を挙げてくれ」

 と聞いてみる。その場にいる警察官で即座に手を挙げぬ者はいないだろう。

 護民官としての強烈な意識は、キャリアで固めたトップから末端の交番に立つ若い制服警官まで貫かれている。これだけは間違いない。なにがなんでも人々を守るんだという矜持は全国二七万の警察職員すべてが胸に抱いているのだ。これだけはわかってほしい。私が本書で一番言いたかったのはこのことである。

 あなたが何者かに襲われたとき、一体誰が守ってくれるのだろうか。少ない給料ながら、この陸の上で命にかえても市民を守るのは警察官だけなのである。
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