K‐POPの最大の特徴は、合理的で緻密な計算に基づいた運営システムにある。
まず事前の入念なマーケティングによってグループのコンセプトを確立。そしてひとたび「絶対に売れる」勝利の方程式を確立すると、コンセプトに沿ったアイドルを育てるために長い練習期間を通じて徹底的にトレーニングさせていく。厳しいトレーニングで鍛え上げられた練習生たちは、「完成された商品」として市場に出される。東方神起や少女時代のパフォーマンスレベルが高いのは最初から当たり前の話なのである。
韓国のアイドルで驚かされるのは、外国語を流暢に話せるメンバーが非常に多いことだ。たとえば実力派グループとして知られる2NE1は物理学者の父親の都合で世界を転々としたCLがフランス語と日本語と英語。フィリピンで芸能活動を行なっていたダラがタガログ語と英語と中国語を自在に操る。他のメンバー2人もミンジが中国語と日本語を、ボムが英語を得意にしている。また少女時代には2人、KARAにはアメリカ国籍のメンバーが1人おり、f(x)には台湾系アメリカ人、中国人、韓国系アメリカ人が在籍。miss Aはメンバー4人中2人が中国人という多国籍軍ぶりだ。
これはグループ結成当初から海外での活動を見越しているからで、大手の事務所は世界各地で定期的に「グローバルオーディション」を実施。アメリカやアジアの主要都市にキャスティングマネージャーを駐在させ、常にスターの卵を発掘できる体制を整えている。日本でいう「アイドル」とはスケール感がまるで違うのだ。
ときにはグループ内で分業制を敷くケースもある。その代表的な例がSUPER JUNIORだ。中国での活動をメインにする「SUPER JUNIOR‐M」、トロットを歌う「SUPER JUNIOR‐T」など多数のユニットを擁しており、さらにメンバーそれぞれが司会、俳優、モデル、DJ、芸人なども務めている。
きちんと歌えて踊れるのは当たり前で、お笑いから演技まで何でもこなさなくてはならない。分業制によって活動範囲が多岐に渡るため、消費者としてはグループを好きになる裾野が広くなるというわけだ。
こうしたシステマティックな成り立ちから、韓国アイドルは「芸能サイボーグ」などと揶揄されることも多い。まず最初にゴールを決め、そこから逆算したプロセスを最短距離で駆け上がっていく。個人個人の才能や魅力に頼るのではなく、コンセプトとプロデュース力でスターを作り上げていくのである。