4つ下の後輩の行動に関してご相談があります。私のいる金融業界はセクハラに対する意識が薄いのか、男性が平気で「東京のオンナと大阪のオンナを呼び出して、3Pした」だの、性豪ぶりを自慢しているような職場です。そのせいか、後輩の女性社員も男をとっかえひっかえしています。飲み会があれば、必ずと言っていいほどその場の一人の男性と夜をともにしてしまいます。私が紹介したマジメな大学教授と付き合っていたときも、すぐに別の男性と浮気し、それを多少悪びれながらも私に報告してきました。私としては友人をコケにされたような気分だったので、彼女とこれからどのように接したらいいのかわからなくなってしまいました。何か、私が彼女にアドバイスできることはあるのでしょうか?
PAN(ペンネーム) 金融 29歳 女性
回答 セックス好きは、心に苦しみを抱えている
金融業界だけでなく、外務省もセクハラに対する意識が相当薄いです。レイプ疑惑を抱える輩が幹部ポストに平気で居座っています。私が外交官だった頃、外務省の若手女性職員から「某幹部にダンスに誘われたとき、耳をペロペロなめられて気持ち悪かった」「課内旅行のときに、課長に無理やり林に連れ込まれ、キスされそうになったのですが、何とかならないでしょうか」という類いの相談をよく受けました。私は「人事課は上の味方だから、報告してもあなたが損をするだけだ。うまい方法を考えておく」と言い、その後、セクハラをした当人と一対一で会って「××局長(課長)、実は変な噂があるんですけれど」と前置きし、その上司がしたセクハラの話に膨らし粉と辛子粉を入れて、大スキャンダルになると牽制をかけました。だいたい出世に響くことを示唆するだけでビビリます。私はセクハラを憎みます。部下がやる気をなくし、組織の力が落ち、結果として日本の国力が弱体化するからです。かつて私は『外務省ハレンチ物語』(徳間書店)という官能小説を上梓しましたが、その結果「あんな暴露小説を書かれたらかなわない」と、セクハラ大魔王として有名だった外務官僚(複数)がおとなしくなったという話を聞きました。ただし、まだ外務省のセクハラ文化は根絶されていないようなので、続編を書いています。
PANさんの相談には、会社のセクハラ体質を後輩が上手に使っているところと、後輩がもともとセックス好きであるという2つの要因が混在しているように思えます。前者については「オンナを使って仕事していると、まともな社会人として相手にされなくなるわよ」と親身になって助言することです。他方、後輩のセックス好きについては、深くかかわらないほうがいいと思います。世の中には一定数、セックスがとても好きな人がいます。また、男と女の関係は、理屈で割り切れないところがあります。
李恢成さんの小説『伽倻子のために』を読むことをお勧めします。この小説で主人公は、決して幸せな結末を迎えるわけではありませんが、恋愛において無理はいけないということを教えてくれます。頻繁に相手を乗り換える人は男であれ、女であれ、何か心に原因があります。セックスを楽しんでいるのではなくて、苦しさから逃れようとしているのだと思います。あるいは自分が苦しさに気づかないようにするため、頻繁に付き合う相手を(無意識のうちに)代えているのかもしれません。その原因に気づけば、おのずから軌道修正されます。
後輩のことを心配しているならば、彼氏を紹介するような、過度な干渉と受けとめられることは避けたほうがいいです。それよりも「この小説、面白いわよ」と、『伽倻子のために』を贈るとよいでしょう。自分が抱えている問題に気づくきっかけになるかもしれません。
【参考文献】『伽耶子のために』李恢成 新潮文庫
朝鮮人の家庭に育った日本人・伽耶子と、朝鮮人として差別と偏見に晒されながら生きる林相俊の恋愛を描いた小説。
国、民族、性の壁がふたりに立ちはだかる。'75年刊