夜風が心地よい。白夜で、ほの白い日差しが残るなか、猪瀬知事は走った。5月28日の午後10時。ロシアのサンクトペテルブルク。時差ボケ解消のためか、ストレス発散のためか、知事の足の運びは速かった。
機材トラブルがあった影響で予定より7時間も到着が遅れた。経由地のフランクフルトで航空会社に臨時の専用ミニジェット機を用意してもらい、少しでも早くサンクトペテルブルクに移動する努力はした。だが、スポーツ関係の国際会議「スポーツアコード」の開会式と歓迎パーティーには出席できなかった。
ニューヨーク・タイムズ紙の発言によるイメージ挽回をかけた国際舞台である。ジョギングで汗をかき、気分が少しは晴れたのだろう。猪瀬知事は言った。
「血流がよくなった。走って気分一新です。体調も万全です」
帝政ロシアの首都、旧レニングラードのサンクトペテルブルク。バルト海に開かれた瀟洒な港町、ドストエフスキーの小説『罪と罰』の舞台として知られる。