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1週間で脳から生まれ変わる技術
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生き方・教養
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はじめに

『1週間で脳から生まれ変わる技術』
[著]久恒辰博 [発行]扶桑社


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「やる気が出ない」「生きていても楽しくない」のは脳のせい?


 私は、脳の仕組みを日々研究している脳科学者です。ですが、研究に明け暮れる毎日を送っていると、ふとこんな疑問が湧いてくることがあります。


 ――科学が発達することによって、人間の生活は飛躍的に便利になっているはずである。だが、それが幸福な生活に結びついているのだろうか?


 なんだか哲学的な問いになってしまいますが、今の社会を見ていると、年々増え続ける自殺者や職場でのストレス、勝ち組・負け組など、私たちの周りには数多くの閉塞感を抱かせる事象が蔓延しています。研究室に籠もっている私の周辺でも、研究が行き詰まったり、人間関係に悩み精神的にダメージを受けている学生や研究者が何人もいます。そして、さらに問題なのは、そうしたうつ的な状態にある人に対して、「努力が足りないからだ」とか「自業自得だ」という自己責任で蓋をしてしまおうとする風潮が、科学が発達した今日においてもまだ、根強く残っていることです。

 人生、誰しも壁にぶつかることはあります。そこでつまずいてしまう人もたくさんいることでしょう。ですが、そのままでいいと思っている人はいないはずです。誰もが一度きりの人生を、精一杯楽しむために生きているはずです。

 ですから、人間の生活に幸せをもたらすことが科学の使命であるならば、私は科学者として、脳科学という立場から、壁にぶつかっている人たちに、その壁を乗り越え、幸せな日々を送れるような手助けができればと考えています。

 そこで、まずこれだけは伝えておきたいのが、「すべてが自己責任ではない」ということです。どういうことか説明しましょう。
「やる気が出ない」「生きていても楽しくない」という感情は、人間の“心”の問題です。そして現在の脳科学の世界において、“心”や“感情”は「脳の中で生まれ、体の中を駆け巡る全身的な感覚である」と捉えられています。

 かつては、「心は、すべて脳の中にある」と考えられていた時代もありました。それが21世紀になり、脳科学が進歩を遂げると、ある感情が芽生えるときに脳のどの部位が、どのように活動しているかを最新の医療機器(MRI=磁気共鳴画像装置やPET=陽電子放射断層撮影装置など)で解析できるようになり、それと同時に体に起こる変化も計測することができるようになりました。

 嬉しいことがあると心臓がドキドキしたり、せつないことがあると胸が苦しくなったり、恐怖を感じると背筋が寒くなったりします。その結果わかったのが、「感情が芽生える」→「体に変化が起きる」→「その変化を脳が感じ取る」というプロセスを踏むことで初めて、私たちはきちんとした感情を持つことができるということです。その証拠に、体の変化を感じ取る脳の機能が欠損してしまった人は、感情そのものをうまく理解することができない、ということが知られています。

 このように“心”の問題は、脳だけでなく、私たちの体とも密接な関係があります。ですから、脳の健康状態次第では、人生に前向きな感情が生まれないと同時に、現状を打破するような思い切った行動も取れなくなる可能性もあるということです。

 もし、あなたが「今ある状態をなんとかしたいけれど、何をすればいいのかわからないし、どうすることもできない」と思い悩むようなことがあったら、すべてを自己責任と諦める前に、まずは低下した脳の健康状態を正常に戻してあげることが必要です。そして、この「1週間で脳を健康な状態に戻す」ことこそが、本書の目標であり、そのことで壁を乗り越え、新しい人生の一歩を踏み出してほしい、そう願っています。


脳は生まれ変わる!


 とはいえ、「脳を健康な状態に戻す」といっても、あまりピンとこないかもしれません。本来、脳も人間の体の一部なので、ケガをしたり病気をしたりすることはあるのですが、こと“脳の再生”という方向に話が進むと違和感を覚えてしまうのは、「大人の脳では脳細胞が増えることはない」「年をとるごとに脳細胞はどんどん減っていく」という俗説のせいでしょう。そして、この説の延長線上に、「大人になってから努力しても無駄である」というような一種の諦めムードも存在している気がします。

 しかも、この俗説にはまったく根拠がないというわけではなく、脳科学の世界においてですら、1906年に神経細胞(ニューロン)の構造を明らかにしてノーベル医学生理学賞を受賞したカハール博士以来、約一世紀にわたり通説となっていたのです。


 しかし、結論から言うと、現在の脳科学では、この俗説はまったくの誤解であったとされています。

 つまり、「ニューロンは大人になってからも生まれ続けている」という事実が発見されたのです。


 この「ニューロンの新生(ニューロジェネシス)」に関しては本編で詳しく説明しますが、現在の脳科学では「ニューロンは、一日に数千個が新しい細胞と入れ替わっている」といわれています。新しいニューロンが生まれているのは、脳の中の主に記憶を司る「海馬(かいば)」という部位です。さらに、私たち東京大学の研究グループは2001年、ニホンザルの脳において、海馬のほかにも大脳新皮質という部位においてニューロンの「卵」にあたる神経幹細胞が盛んに分裂・増殖していることを世界で初めて発見し注目されました。

 この「卵」が成長してニューロンになっていれば、いよいよ大発見だったのですが、残念ながらそこまではまだ確認できてはいません。ですが、長い時間をかけて進化してきた人間の脳に無駄な機能があるはずもなく、この大脳新皮質の神経幹細胞にも、必ずや脳の状態を左右する何らかの役割があると私は信じています。そして、最近の研究により、この神経幹細胞がニューロンの働きを活発にしたり、抗うつ的な物質を出すなどの重要な働きを担っているということが明らかになってきています。

 以上のように、ニューロンやニューロンの卵である神経幹細胞が「大人の脳でも生まれる」ことは、脳科学の世界ではすでに常識となっています。ですから、新しい脳細胞を増やすことで、脳を健康にすることは十分に可能なのです。

 しかし気をつけなくてはいけないのが、新しく生まれる脳細胞の数は、環境によって変化してしまうということです。例えば、ストレスフルな環境においては、通常の半分ほどしか脳細胞が生まれません。脳を健康な状態に戻してやるには、まず「脳細胞が生まれやすく、成長しやすい環境づくり」が大切なのです。


脳のネットワークをリフォームする!


 また、脳細胞の新生とともに大切なのが、脳のネットワークのリフォームです。

 脳の中では、ニューロン同士がシナプスという接合部位でつながってネットワークを形成しており、さまざまな情報が1000分の1秒ほどの速さの電気信号によって、網の目のように張り巡らされた回路を駆け巡っています。脳がうまく働いている状態とは、このネットワークが活性化している状態と言い換えることもできます。

 では、どうすれば脳のネットワークを活性化できるのでしょうか?

 そのためには、新しいニューロンを増やすことに加えて、ニューロンのシナプスも強化していかなくてはなりません。ニューロンは、新しい体験や新しい知識に出合うと、どんどん枝分かれしてシナプスを増やし、ネットワークを充実させていきます。このため、頭をよく使っている人は、中高年になっても部分的に脳の容積が増えることがわかっています。逆に、毎日同じことの繰り返しをしていると、特定の回路しか使われず、ネットワークが単調になり、ニューロンも成長しづらくなります。

 ニューロンが生まれる舞台である、海馬を例にとってみましょう。

 海馬は記憶を司る部位ですが、記憶の一種に「エピソード記憶」というものがあります。これは、あるひとつの体験に際して、時間や場所、その時の感情などをエピソードとして記憶したものです。誰もが、子供の頃に褒められた経験があると思います。そして、褒められたときに感じた心地よい感情が記憶として残っているからこそ、もう一度その感情を味わいたくなり、成功しようと頑張ります。こうして新しい成功体験を積み重ねることによって、「どうすれば成功できるのか?」というノウハウを蓄積する回路が発達していきます。反対に、新しいことにチャレンジせず、成功体験に乏しい生活を送っていると、いつの間にか過去の成功の記憶を宿している回路がやせ細ってしまい、いざチャンスが訪れたときに適切な行動を取ることができないばかりか、「成功したい!」という意欲すら失われてしまうのです。

 新しいまっさらな脳細胞を増やし、脳のネットワークに新たな回路を開いてやることは、言うなれば「新しい自分」を獲得することです。今、やる気が起きなかったり、壁にぶつかって悩んでいる人も、脳のネットワークをリフォームすれば、思いもよらなかった「ヒラメキ」やプラス思考が湧いてくるかもしれません。周囲の環境や他人を変えるのはとても難しく、時間と体力も必要です。それよりもまず「脳から自分を変える」ことが、現状打破への近道になるのではないでしょうか。


脳細胞を育てて、現状を打破しよう!


 では、脳細胞の新生を促し、脳のネットワークを充実させることで、具体的にどんな変化が起こり得ると想定されるでしょうか? その一部を紹介したいと思います。

[新しいアイデアが生まれる]


 新しいニューロンが生まれるのは海馬なので、主に記憶を中心に変化が起きると考えられます。そこで、まず可能性があるのが、新しいネットワークが広がることによって、より多くの記憶のストックを使いこなせるようになる、ということです。思考する際の材料が増えれば、凝り固まっていた思考回路も柔軟になります。その結果、ワンパターンになりがちだった思考から脱け出し、新しいアイデアを生み出せるようになるはずです。

[失恋や仕事の失敗などを引きずらない]


 また、逆に嫌な記憶を選別する機能が高まることも考えられます。

 失恋や仕事での失敗など自分にとって不都合な記憶は、忘れようと思ってもなかなか忘れられないものです。それどころか、何度も思い出すことによって、ますます強く刷り込まれていき、記憶として定着してしまうことになります。

 脳のネットワークを広げることが大切といいましたが、何もすべての方向に広げればいいというわけではありません。人間の成長過程において、生まれたばかりの赤ちゃんはシナプスが急激に増大することがわかっていますが、それは見るもの聞くもの感じるもの、すべてを吸収してネットワークの基礎を作る必要があるからです。ですが、大人になってからもそれを続けていては、あまりに膨大な情報量に、たちまちネットワークは渋滞を起こして、大混乱をきたしてしまうことになります。ですから、成長するにしたがって、必要なネットワークは広げていく一方で、不必要な部分は削っていき、ネットワーク全体としての質を上げていく作業が大切になっていくわけです。

 その意味で、失恋や仕事のミスなど、マイナス方向のネットワークへ向けられるエネルギーを、新しい回路の構築へと注ぐことで、次のステップへと踏み出すことができるようになるのだと考えられます。

[転職先など、新しい環境に対応できる]


 新しいネットワークの構築という点で考えると、環境への適応能力が向上することも期待できます。ずっと同じ環境にいると、思考も硬直化していくものです。つまり、ネットワーク内の同一の回路ばかりが肥大化し、異なった環境への対応力が衰えてしまっている状態です。転居や転職などに際して不安を抱える人は、こうした自分の状態を無意識に感じ取っているのかもしれません。新生ニューロンを増やすことで、不安が解消され、新しい環境にも適切に対応する力がつくことでしょう。

[思わぬモテ期が到来!?


 さらに、新生ニューロンは新しい刺激に敏感なので、今まで気づかなかったような、他人のちょっとした変化やサインにも気づくようになるかもしれません。そうすれば、人間関係が円滑になるのはもちろん、「気づき」が重要な恋愛においても効果を発揮しそうです。

[試験勉強の効率が上がる]


 刺激に敏感な新生ニューロンは、新しい情報を記憶する力に満ちています。それゆえ、海馬の新生ニューロンの数を増やすことが記憶力・学習能力アップにもつながります。記憶力が成否を左右する資格試験などに挑戦する際は、新生ニューロンの働きが大きな助けとなるでしょう。

[脳の老化を防ぐ]


 脳の障害である認知症、アルツハイマー病は、脳細胞が萎縮することで発症する病気です。元気な新生ニューロンの数を増やせば、脳の老化が食い止められ、これらの症状を防ぐことができると考えられます。


 新生ニューロンを増やし、脳を育てることで、これだけの効果を得る可能性があります。「大人の脳は変わらない」のではなく、「大人になってから脳を変える」ことで、人生をリフレッシュさせることができるのです。

 これから始まる本編では、脳の仕組み、ニューロンの成長過程からスタートし、どうすれば新生ニューロンを増やすことができるのか、増えた結果どのような変化が起こるのか、というところまで説明していくつもりです。

 多少、難しい部分もありますが、今の自分から生まれ変わりたい、目の前の壁を乗り越えたい、そう感じている人にこそ読んでもらえると、何かしらのヒントがあるものと私は信じています。
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