ダイバーシティとか女性活躍推進という言葉を聞かれたことがあると思います。会社を挙げて、それに取り組んでいる組織も大企業を中心に増えてきています。
とはいえ、なぜダイバーシティや女性活躍推進が大切なのかピンとこないし、そもそも正直そんなことに興味がないという人も多いでしょう。
多様な人がいて会社はよくなるのか。今までどおり、日本人男性が会社を引っ張っていってなにが悪いのか。これまでそれでちゃんと会社は回っていたではないか。
職場での女性の活躍は、会社のどんなメリットになるのか見当もつかない。なぜ女性の登用が大切なのか、まったく想像もつかない。そう思っている男性もたくさんいると思います。
女性に活躍してもらうには、まず女性社員を男性の部下と同様に育成しなければいけない。そうわかってはいても、本音は、女性部下には育ってほしいがどうしたらいいかわからない、誰かがやるべきだが自分の役割ではないと思っている男性も多いと思います。
そこで第1章では、「女性活躍推進に対する男の本音」を見つめ直し、男性管理職の無意識の“障害”をどう取り除くかを考えてみたいと思います。
「せっかく教えても結婚や出産で辞めてしまうかもしれない」というのが、私自身も含めた男性の一番の本音であると思います。
確かに、すぐに辞めてしまうかもしれないなら、教えがいがないのはよくわかります。こんな感じでしょうか。
3年間私の部下だったA子さんが、相談したいことがあると言ってきたことがありました。
「あのう、私、○月末に退社させていただきます」「はい、結婚が決まりましたので」と言われて、せっかく苦労してこれまで育ててきた努力が一瞬にして水泡に帰してしまう。
思い返せば、自分が担当した入社試験の面接で彼女は「私は、この会社に採用していただくことができたら、ずっと働きます。それほどこの会社に惚れ込んでいます。会社に貢献したいのです」と言ったではないか。
何のことはない、隣の課の同期のB君とひそかに交際を続けていて、できちゃった結婚というではないか。思わず「面接のときのあの言葉は何だったんだ!?」と叫びたくなってしまった。
これではがっくりくるのはよくわかります。
私の知り合いにずば抜けてよく仕事ができる女性がいました。人間力もあり、幹部として引き上げたい、いずれは役員に登用したいと役員会で話が出たこともある女性でした。本人も「仕事いのち」のようなことを常々言っており、我々は大いに期待をしていました。ところが、結婚相手が働かないでほしいと言ったという理由で、コロッと前言を翻して、会社を辞めてしまいました。「なんだこれは」と一同がっくりきてしまいました。
すべての女性が結婚して辞めるわけではないですが、優秀な女性がいともやすやすと職場を去るのを見て、「やはり女性は……」と思ってしまうのです。
これが女性活躍推進の一番の障害だと私は思っています。男性にとっても女性にとっても、これが理由で女性の活躍が進まない。
女性部下育成に力が入りにくいのもこれが大きな理由です。