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益川流「のりしろ」思考
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■「のりしろ」思考でなんでも乗り切る

『益川流「のりしろ」思考』
[著]益川敏英 [発行]扶桑社


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●ノーベル財団の(こま)やかな、おもてなし

 

 二〇〇八年にノーベル賞をいただき、授賞式に出席しました。

 ノーベル財団の対応はすべてにおいて非常に上品でした。授賞式が行なわれる週を「ノーベル・ウィーク」といって、始めから終わりまで完全にスケジュールをノーベル財団がコントロールしています。

 たとえば、スケジュールに隙間があったとしても、それは、ノーベル財団がお招きした客人に対して、「ゆっくり休養をとってください」という意味で、あえて空き時間をとっているのです。そのことを私たちのアテンダントを務めてくれたカイさんに質問したところ、「そのとおりです」という返事でした。

 ノーベル財団の(こま)やかなおもてなしは、日本の茶道に通じると感じました。といっても、私は茶道の経験はないのですが。
「日本の茶道に通じるものを感じた」という記事は、授賞式から帰国した翌日に朝日新聞に載りました。

 後日、東京の八重洲(やえす)ブックセンターに行ってコーヒーを飲もうとしたら、裏千家(うらせんけ)学園理事の方に突然呼び止められました。
「あの感想は間違っています」と言われるのかと一瞬緊張したのですが、ノーベル・ウィークの出来事などをおたずねになり、後にカラー印刷の美しいお茶の本をいただきました。そのあとで元家元の千玄室(せんげんしつ)さんともお会いする機会があり、お話をすることができました。

 受賞のおかげで、いろいろな文化人にお会いできるようになりました。

 
●「のりしろ」の多い人生とは?

 

 よく「時間活用術」という言葉を耳にしますが、僕には時間の活用術について語ることはできません。

 なぜなら、僕は大変に「のりしろ」の多い人生を過ごしていますから。

 僕は時間の無駄遣いをいっぱいしています。

 たとえば東京で午前一〇時から会議があるとします。

 僕は六時三二分・京都発の新幹線に乗って、東京駅に八時四四分に着きます。それから書店に立ち寄って本を買い、喫茶店に入ってそれを読んで……という具合。会議の始まる時間にちょうど着くように京都を出ることはしないのです。

 以前、東大核研(東京大学原子核研究所)に在職のとき、東大の駒場(こまば)で行なわれる試験にかり出されました。僕は、「会議などが始まる前には、必ず喫茶店に入ってコーヒーを飲む」というルールを作っていたので、そのときもそれをちゃんと守った。

 試験の前日に、当時住んでいた東久留米(ひがしくるめ)を五時半に出て、バスに乗って、中央線に乗り換えて、吉祥寺(きちじようじ)に六時半に着いて、そのあたりに喫茶店があるか調査をしました。「喫茶店があるぞ、さすが東京」と安心して、翌日、その時間どおりに吉祥寺へ行って喫茶店に入り、コーヒーを飲んでから()(かしら)線に乗って集合時間七時四〇分に駒場へ行きました。

 それぐらい僕は、たくさんの「無駄」をしています。

 ただ、最近は、主催者の方から指定席切符が送られてくるので、早めに着いてコーヒーを飲むという自由度が与えられていない。のりしろ文化を発揮できないのがさみしい。

 そう、僕にとっての「のりしろ」とは、「心の自由」とも置き換えることができます。

 
●起床は四時、新聞が配達される前の「思考のひととき」

 

 夜はたいてい一〇時過ぎには寝ます。

 そうすると、夜中の二時半とか三時ごろに目が覚める。そのあともう一度眠ろうと努力しても眠れないときは三時半ごろに起きてしまいます。布団の中で、「寝れん、寝れん」と悩んでいてもしようがない。ですから、朝は比較的早い。

 新聞が来るのが四時半から五時半ごろなので、それまでは前日考えたことの続きを考えます。そうこうしているうちに新聞がくる。新聞は一時間ぐらいかけて一面からじっくり読みます。一面から読むのは下段に本の広告が載っているからです。

 新聞を読んでいると女房が起きてきて、コーヒーを入れてくれます。

 七時台にはテレビを見て、八時二分過ぎには出かける準備をし、そして八時三分に家を出て駅に向かって歩き始めます。

 
●「書店散歩」のススメ

 

 東京に行ったときは、いつも東京駅前にある八重洲ブックセンターに寄ります。

 正確に言うと、その前に朝早くからやっている本屋さんを何軒か回っています。なにしろ、東京駅に着くのはいつも八時四四分。その時間には、まだ八重洲ブックセンターはオープンしていません。

 八重洲ブックセンターに着いたら、まず自然科学系の本が置いてある三階に向かいます。時間があるときは、七階まで上がって洋書コーナーをまわることもある。

 八重洲ブックセンターを気に入っているのは、マイナーな出版社の本もちゃんと揃っているからです。

 自分が読み落としている本はないか、一時間から二時間かけてじっくりと探します。

 そして、買った本を、中二階にあるコーヒーショップでコーヒーを飲みながら読む。そんなことをしていたら、二時間から三時間はあっという間に経ってしまいます。

 それから午後の会議に出席。これが私の東京でのいつものスケジュールです。

 
●「自由とは必然の洞察なり」

 

 僕自身は、こうした「のりしろの文化」を実践していますが、学生にはあまりススメられません。のりしろなんかつくらずに能率よくやったほうがいいに決まってます。
「のりしろ文化」は、僕の学生のときからのクセなんです。

 僕は「のりしろ文化」で生きてる人間ですから、おもしろいことがあったら何でも手を出してしまう。「これをやらなきゃ」と、一つのことだけにガンガンやるタイプじゃありません。

 余裕のない生活は送りたくない。好きなことを自由にやりたい。

 つまるところ、僕はボヘミアニスト。

 いや、“ニスト”というほどではありませんが。

 僕は束縛されるのが嫌いです。
「自由とは必然性の洞察なり」と、僕はいつでも言っています。


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