八重は細おもての、美人では百パーセントなかった。
が、籠城戦には男子以上に、役に立ったことは間違いない。彼女は薙刀と西洋流砲術――双方に心得があった。もっとも、敵に向かって薙刀を、戦争中に振り回した話はついぞ聞かないが。
男装=男ものの服装は、弟・三郎の遺品で、彼はすでにふれた鳥羽・伏見の戦いで、会津藩士として戦死していた。八重は弟の仇討ちもかねて、鶴ヶ城に籠城したのであった。
彼女が髪を切ったのは、入城後のようである。
回想録によれば、高木盛之輔の姉ときをに切ってもらったようで、これは城中において婦人の断髪した第一号だったという。