新卒一括採用を中心とする大企業の人材育成システムは、ネオテニー化する若者を採用して変化の激しい時代に対応するという点で優れていますが、採用スタイルは一層のバージョンアップが必要だと思っています。
採用担当者が、前年とほぼ同様の学歴構成で採用した方が上層部に説明しやすい。そのために人気の落ちた企業は、同じ銘柄の大学卒の中でどんどん「使えない人材」を採用するようになる、というのはある種の合成の誤謬です。行動主体(人事担当者)というミクロレベルでの合理的行動が、全体(会社)を不合理な方向へと追いやる。合成の誤謬は、経済学でよく使われる概念ですが、個々の企業や官公庁の行動分析という視点からも有用な概念で、それが起きていないかをチェックすることは大切です。会社の人事システムに合成の誤謬が起きている場合、個々人に心得を説いても労力だけが多くなり効果はかぎられています。合成の誤謬が起きないように、個人の合理的行動と企業の合理性が結びつくシステムに変換してやる必要があるのです。