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なぜ日本の教育は間違うのか
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教育
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■フィンランド・イデオロギー本の出自

『なぜ日本の教育は間違うのか』
[著]森口朗 [発行]扶桑社


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 こうして眺めると、フィンランド・イデオロギーによって導かれる結論は、日教組(民主党・社民党系組合)や全教(共産党系組合)をはじめとした左翼陣営の主張とほぼ一致することが判ります。最後の教員養成を大学院でという主張だけは、左翼陣営というよりも教職員組合と文部科学省を含めた教育利権一家の悲願です。研究レベルも入り口の偏差値も教育レベルも低い教員養成系大学は、いまや存亡の危機にありますが、フィンランドのように教員養成を専門の大学院で行うことになれば、現職教授の職も文部官僚の天下り先も確保されます。

 ちなみに『競争やめたら学力世界一』(朝日選書、2006年)、『格差をなくせば子どもの学力は伸びる』(亜紀書房、2007年)、『フィンランドは教師の育て方がすごい』(亜紀書房、2009年)などを著し、フィンランド・イデオロギー本の代表的な論者である福田誠治氏は、もともとソビエト教育の研究者でした。1977年の東大大学院時代には日本教育学会で『ソビエトの発達理論:ヴェ・ア・ウルチェツキーの発達論』という発表を行い、続いて『ルビンシュティンの発達論の内的条件』(「東京大学教育学部紀要」、1979年)、『ソビエト新教育プログラム研究―1―』(「都留文科大学研究紀要」、1981年)、『全面発達概念の検討1〜5』(「都留文科大学研究紀要」、1984〜1989年)などの論文を発表しています。

 

  ※全面発達概念というのは、青少年の精神的、身体的な諸力の全面的な発達を目指すもので、共産主義国家において教育の根本目的とされるものです。マルクスは、階級対立と古い分業体制を残す資本主義社会ではその実現が制約されるが、社会主義社会では全面発達が可能になると主張しました。

 

 福田氏はその後、教育の保守的な改革を進めるイギリス批判なども行っていますが、現在ではすっかりフィンランド教育紹介の第一人者になりました。彼の出自を追っていくと、フィンランド教育の紹介がイデオロギーにまみれていることも理解できるのではないでしょうか。日本の学界というところは変わったところで、ソ連研究者はほとんど全員が親ソ連だし、フランス研究者は概ねフランスびいき、中国研究者は中国の代弁者のような人ばかりになっています。敵国の研究を怠らないという国際常識がないのです(評論家の福田和也氏はフランスの親ナチス政権時代を研究してフランスびいきの学界から排除されました。このことが日本の学界体質を物語っています)。

 ということで、福田誠治氏が親ソ連派の共産主義者である(あった?)可能性はきわめて高いと思います。フィンランドの教育を紹介している方が皆、左翼ではないと信じたいところですが、第一人者である福田氏にミスリードされ、左翼に都合のよい部分だけが誇張されていることは否定できません。

 左翼系の教育関係者がフィンランド好きなのは、北欧のような福祉国家が自分たちに都合のよい主張を引き出しやすいからだけではありません。

 フィンランドは国家の体制は資本主義なのですが、国際政治的にはソ連が滅びるまで東側の陣営に位置づけられていました(ソ連崩壊以降、抜群の国際政治的センスを発揮して、今ではEUにも加盟し完全にヨーロッパの一員になっています)。これまで、左翼は情報入手困難な国を理想化し、それと対比することで日本がいかにダメであるかを指摘してきました。ところが、スターリンのソ連も、毛沢東の中国も、金日成の北朝鮮も情報が流出し始めたとたんに、ことごとくとんでもない独裁国家であることが明らかとなりました。これに対してフィンランドの場合、そのリスクはありません。フィンランドが教育界左翼の理想の国に昇格したのはソ連が崩壊し東ヨーロッパ諸国の情報がオープンになってからなので、今回ばかりは自分たちの地上の楽園が崩壊する心配はないのです。

 こうして教育界の左翼たちは、安心して、理想の国フィンランドを絶賛しながら日本の教育正常化を否定し、日本の教育を一層ダメな方向に誘導しようとしているのです。

 
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