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嘘だらけの日米近現代史
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歴史
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第一節 ワシントンは架空の人物?

『嘘だらけの日米近現代史』
[著]倉山満 [発行]扶桑社


読了目安時間:9分
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 本書では基本的に各節の冒頭でほとんどの日本人が学校で一度は習ったか、あるいはおぼろげながら抱いている通説を紹介し、実はそれらが歴史的事実から恐ろしくかけ離れているのだという記述スタイルで進めていきます。

 最初は、アメリカ合衆国の建国、特にジョージ・ワシントンから始めましょう。

[通説]
信仰心の篤い敬虔なクリスチャンたちがメイフラワー号という船に乗ってはるばるアメリカ大陸に渡り、厳しい自然や現地インディアンとの戦いなど幾多の困難を乗り越えてフロンティア精神で開拓したのがアメリカ合衆国の成り立ちだ。苦労をしながら開拓した土地からの利益を英国国王ジョージ三世は無情にも搾取したので、耐えかねたアメリカ人たちは独立戦争を起こし、独立を勝ち取って建国したのがアメリカ合衆国だ。


 本書で紹介するアメリカ史は一事が万事この調子で、どこから突っ込みを入れればいいのかわからないほど嘘だらけです。要するに、「英雄ジョージ・ワシントンが独力で大英帝国に真正面から挑戦し、勝利した」というのが、彼らの建国神話なのです。これが事実だったとしたら、日本の『記紀』の「神代編」だって全部史実です。何なら、手塚治虫のマンガだって実証主義になります。こういう「火の鳥の生き血を飲んだら永遠の命を得られる」級のSF話を信じこまされているから、日本人はアメリカ合衆国という国の正体がわからなくなるのです。

 通説の誤りを逐一指摘していきましょう。

 まず、イギリスの「落ちこぼれ」がアメリカ大陸へ流されたのがメイフラワー号です。何がどう落ちこぼれかを説明しましょう。当時のヨーロッパは三十年戦争の最中です。三十年戦争とは、ヨーロッパのすべての国がカトリックとプロテスタントの陣営に分かれ、殺し合いが行われた宗教戦争です。その中心であったドイツ地方では国土の三分の二が荒廃し、人口の四分の一が消滅したといわれます。この戦争を境にヨーロッパ人は「宗教はほどほどにしようね」というふうになっていくのです。具体的には、「火あぶり」「魔女狩り」「錬金術」「魔法」といった迷信の世界と最終的に決別し、大人の社会に成熟していくのです。これを「近代化」と言います。

 1620年にメイフラワー号に乗ってヨーロッパを離れた連中は、「近代化なんて嫌だ」という宗教原理主義者の皆さんです。実態はメイフラワー“サティアン”とでも言ったところでしょうか。

 彼らメイフラワー“サティアン”の連中は苦難の末にアメリカ大陸に漂流し、餓死しそうになります。そこでかわいそうに思った現地人(一時期は「インディアン」の呼称は差別的とかで「ネイティブ・アメリカン」と呼びました)が食べ物をくれたのでメイフラワー“サティアン”の皆さんは助かったというわけです。さて、問題です。ここで“サティアン”の皆さんは誰に感謝したでしょうか。

 彼らは「神様(ゴッド)、このような幸運を与えていただき、ありがとうございます」と叫びます。彼らの信仰によれば、「神様は我々に試練を与えた。しかし、この絶体絶命の危機に、彼ら現地人を差し向けるように計算されていたのだ」ということになるのです。現地人になどまったく感謝しません。その後、“サティアン”の連中やその後にやってくる“自称”開拓者たちが、現地人を殺しながら土地を奪うのですから、恩を仇で返すとはこのことです。教科書的理解だとメイフラワー号の子孫だけでアメリカ大陸を開拓したかのように思えますが、彼らは食い詰め者のなかの一部にすぎません。結局、イギリス本国からのヒモ付き支援で東海岸を開拓し、それが十三の植民地になるのです。

 ここで確認します。現代アメリカの支配層はWASP(White Anglo-Saxon Protestant)と言われます。これはイギリスが「白人で、アングロ・サクソンで、プロテスタント」の国ということに起因します。アメリカは先に入った移民が後から来た移民を差別する国ですので、WASPが威張っているのです。つまり、現代の我々が想像するアメリカ人とは、「イギリス人の落ちこぼれ」の子孫なのです。その“落ちこぼれ”が、こともあろうか本国に喧嘩を吹っかけたのが、アメリカ独立戦争です。


 一七六三年、七年戦争に勝利した大英帝国は世界の覇権国家となります。アメリカ大陸でもフランスやオランダを叩き出し、植民地をほぼ独占します。これは諸外国の反感と警戒心を買うことでもあります。だからイギリス本国は防衛費を現地に負担させようとしました。これに現地人は反発し、五人が殺された暴動事件を「ボストン大虐殺事件」と言ってプロパガンダを始めます。輸入品のお茶を片っ端から海に投げ捨てたことから「茶会事件」として教科書に書かれている事件です。

 この騒動に飛びついたのが、ヨーロッパ諸国です。特にイギリスへの復讐を狙っていたフランスは、現地アメリカ人をそそのかします。こうしてイギリスの“落ちこぼれ”が敵国フランスの後ろ盾で一七七五年に始めたのがアメリカ独立戦争です。この戦争はイギリスでは「謀反」と呼ばれますが、こちらのほうが実態に近いでしょう。

 さて“落ちこぼれ”たちは独立戦争をしかけたはいいものの、連戦連敗です。当たり前です。西部劇に毛が生えたような連中が、世界最強の大英帝国に喧嘩を売って勝てるはずがないのです。せめてもの希望は、アメリカ大陸がイギリス本国から遠いということだけです。物資の輸送をフランスなど他国が邪魔してくれることで、何とか持ちこたえていました。ちなみに、この“謀反”人たちは、いくつかの例外的な小競り合いを除いて、戦闘ではまるで勝っていません。ひたすら逃げ回るだけでした。ちょうど、のちのシベリア出兵の赤軍や支那事変の国民党と同じです。しかし、実はここに独立戦争が成功した秘訣があるのです。

 赤軍や国民党は、世界最強といわれた大日本帝国陸軍と真正面から戦うことをせずにひたすら逃げ回り、油断したところを後ろから不意打ちをして心理的に参らせる、という戦法を繰り返しました。独立戦争におけるアメリカ人も同じです。アメリカ合衆国は、ゲリラ戦で成立した国です。

 この時のヨーロッパでの主流戦法は密集隊形と呼ばれ、銃を持った軍隊が四角形に固まって太鼓の音に合わせて前進するというものです。なぜ密集するかといえば、当時の兵隊はカネで雇われた傭兵なので、いざとなれば逃げてしまう忠誠心ゼロの集団です。だから逃げられないように、密集させるのです。

 ただ、逃げられないということは、敵の弾をよけられないということです。逆にアメリカ“謀反”軍は、負けたら逃げる場所がないので必死です。逃げて散っても、仲間を裏切ることはありません。こうして生まれたのが散兵戦術です。アメリカ“謀反”軍は、敵に弾を撃っては逃げるという戦法を繰り返しました。自由自在に動けるアメリカ“謀反”軍に対し、イギリス傭兵軍は苦戦します。ちなみに、密集隊形のマヌケさを余すところなく描いた映画が『パトリオット』です。アメリカ“謀反”軍は、勝てないなりに粘り強く頑張っていました。

 そうこうしているうちにフランスなどがイギリスに宣戦布告してくれます。ほかのヨーロッパ諸国もイギリスに反感を抱いていますから、陰に陽にイギリスに嫌がらせをするので、物資や援軍がアメリカ大陸に届かなくなります。そして遂にイギリスはフランスに敗れ、一七八三年のパリ講和条約で、アメリカ合衆国(United Statesof America)の存在が容認されます。ここで晴れて“謀反”軍ではなくなりました。

 United States of Americaの初代President(現在の訳語は「大統領」)には、旧“謀反”軍の最高司令官だった、ジョージ・ワシントンが就任します。

 アメリカ人は「強大な帝国軍に対して自由を求める戦士が長く苦しい戦いを続けた末に独立を勝ち取った」と『スター・ウォーズ』のような話をしますが、実際はフランスが対英包囲網を敷いたおかげで勝利できたのです。真に受けては笑われます。

 むしろ特筆すべきは、アメリカ人に内輪もめをさせなかったワシントンの統率力でしょう。八年間ほぼ連戦連敗でありながらゲリラ戦を続け、勝利の日まで根性で頑張り続けたのですから。


 ところで、最近の日本史学では「聖徳太子は架空の人物だった」という学説が流行しています。その中身は「確かに、ウマヤドノミコという人物は実在したが、聖徳太子として伝わっている事跡はすべて一〇〇%の立証ができないものばかりだ。だから聖徳太子は架空の人物なのだ」というものです。よくわからない説ですが、学界では真面目に語られています。その筆法に従いましょう。

 アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントンは架空の人物です。

 どういうことでしょうか。もちろん、ジョージ・ワシントンは実在の人物です。しかし、「アメリカ合衆国初代大統領」がポイントなのです。

 確かに一七八三年にワシントンに率いられた十三のイギリス植民地がUnited States of Americaをつくりました。この時のUnited States of Americaは今のEUのようなもので、一つの国家ではありません。そのような国家連合のPresidentは、文字通りの議長であって、大統領ではありません。また、“謀反”軍もNATOのようなものです。ついでに言うと、抜けぬけと「世界で最初の近代憲法を持った国」と威張っていますが、当時の「アメリカ合衆国憲法」は、十三の州が結んだ条約です。

 このようにアメリカは、最初から歴史の捏造と記憶の改変で成立した国なのです。

 ということで、しばらくUnited States of Americaを「アメリカ連邦」と訳します。

 
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