◆攻撃されない守りの基本
まず本章では、極力相手を調子に乗せない。攻撃されても動揺しない。
そんな最低限の心構えや対処方法をお教えします。
いざあなたが他人から攻撃を受けた。
そんなときに、もっともやってはいけないのが動揺を悟らせること。
なぜなら相手はそんなあなたの反応を見たくてやっています。
◆反応があるから、したくなる?
心理学者カッツェフとミシマ(1992)は、こんな実験を行いました。
まず彼らは大学の近くに、「古紙リサイクルコーナー」を作ったのです。
まぁなんていうか、ただのリサイクルなわけで、持ってきたからといって別にトイレットペーパーと交換してもらえるとか、そういう幸せはありません。
よっぽどのことがないと、誰だってわざわざ学校まで持っていきたいとは思いませんよね。
実際、1日の回収量は平均して8.57ポンドでした。
1ポンドはだいたい0.5キログラムですので、4キロちょいが集まったことになります。まぁまぁの量です。
さてここからがメイン。
ここで実験者たちは、「昨日の回収は○○ポンドでした」というように、前日の結果を示す看板を立てたのです。
すると次の日から、回収量がほぼ2倍の、約15ポンドまで増えました。
しかしその1週間後、今度はその看板を取り去ってしまいました。
すると1日の平均回収量は、12.7ポンドまで落ち込んでしまったのです。
この実験から導き出される結論は一つ。
相手の行動をハッキリと「結果」として示してあげることが、相手の気持ちを動かすことになったのですね。
◆もっと反応が欲しい!
でもリサイクルの話で思い出すのが、中学生の時の友達。
一度学校で「環境のためにリサイクルをしよう」という運動が起こったことがありました。
そのとき運動の担当だったのが、きれいな教育実習の先生。
ほとんど男子校みたいなものだったので、もうみんなすごい勢いで、その先生の所に古い紙や新聞を持っていっていました。
もちろん褒められたい一心です。
なかでも革新的だったのが、同じクラスのアンドウくん。
彼は自慢げに、「オレ、もうノートでも破いて持ってっちゃうから」。
それ、絶対に趣旨が違ってる。
僕はそう思いながらも、「がんばれよ」と言いました。
どう考えても環境に優しくないリサイクルが重ねられてた気がします。
◆とっても大切、「フィードバック」
少し話がそれましたが、「結果が見えるとやる気が出る」というのが人間心理。
これはみなさんも納得できるのではないでしょうか。
自分がせっかく何らかの行動をしているのに、相手からレスポンスがないと、やる気も少しずつ失われていってしまうもの。
でも逆に、どんな形であってもその行動による変化を感じることができれば、確実に「よしもっとやってやろう…」と感じることができるはずです。
このように、ある行動によって起こった結果が、行動をした人に分かりやすく示され、そしてそれによって行動が変わることを「フィードバック」と言います。
よく募金などで「おかげさまで○○円集まりました」という表示をしていることがありますよね。これも一種のフィードバック。
やはり人間の気持ちを高め、「よし、もっと募金してやろうか…」という気持ちにさせるわけです。
一方で、嫌がっているのを悟られた場合も「よし、もっとやってみよう!」と思われてしまいます。
よく小学生が好きな女の子をいじめたりしますね? それと同じです。
それは「嫌がる」という、マイナスのストローク(何らかの行為による反応)を相手に与えているということなのです。
ストロークがありさえすれば、この実験でみんなが古紙の収集に協力したように、積極的な行動を続けてきます。
要するに、あなたへの攻撃を続けたくなるということ。
つまりは、相手にあなたが嫌がってるところを見せないことが重要なのです。
◆その攻撃を「なかったこと」に
では、具体的に相手が喜ぶストロークとはどんなものなのでしょう。
相手に攻撃されたとき、うつむいたり、席を立って足早にその場を離れたりして、気持ちの乱れを態度に出してしまう。
また、妙に早口になったり、相手の要求を満たそうと、オフィスを走り回って、自分の動揺に拍車をかけてしまう。
これはぜひとも避けてほしい反応です。
あなたが傷ついたり、慌てたりする姿を見せれば見せるほど、相手の喜びは大きく膨らんでいくのです。
こんな場合は、「〈見た目〉落ち着いた感じ」を演出することからスタート。
一瞬にして、「相手をその気にさせない外見」を作ることが最優先事項です。
それには、まずその場で深呼吸。
単純ですが、その場で何の道具も使わずに数秒でリラックスするには、これがベスト。
ほぐれたら、背筋を伸ばして目線を少し上にあげて堂々と。
しゃべりも、動きも、ややゆっくりで、くつろぎモード。
あなたが落ち着いた反応を見せれば見せるほど、相手はがっかりします。
「つまんない」と思わせれば、あなたの勝ち。ですから、攻撃を察知した瞬間、深呼吸。
「自分なんて」とクヨクヨしている時間はありません。
心ではなく、まずは身体を動かしてみることが先決なのです。
ここぞとばかりに落ち着いた態度を見せつけて、相手の攻撃を「なかったこと」にしてしまいましょう。