保守と右翼なるものは、明確な相違を見せつつ、かつ不可分なところもあり、なかなか説明がしづらいところがあります。ここで、戦前の二人の思想家、北一輝と安岡正篤を対比してみたいと思います。その対比によって、その違いがおぼろげながらも見えてくるかもしれません。
北一輝は二・二六事件の理論的指導者として知られ、そのイメージから軍国主義時代の右翼の大物と誤解する向きもありますが、実像はまったく異なります。
『日本改造法案大綱』を著した北一輝には、あくまでも「自分が作りたい世の中」の理想像がありました。そして、その理想は、極めて端正なヨーロッパ型の古典的な社会主義社会であり、したがって、その理想を追い求めると、必然として革命にならざるを得なかったのです。