信繁の正室として一般に知られているのは、大谷吉(よし)継(つぐ)の女であろう。

　しかし、信繁はそれ以前に妻を娶っている形跡がある。『真田家系譜稿』によれば、信繁の長女（阿菊(おきく)）と二女（九度山で早世）の生母を「堀田作兵衛興(おき)重(しげ)女」としている。堀田興重は真田家の家臣のようである。

　一方、長女の嫁ぎ先である小県の小領主石合氏の家記によれば、「右十蔵道定妻は、真田左衛門佐信繁女にて、堀田作兵衛興重妹の腹に出生、作兵衛養女に仕る」とあり、堀田興重の妹としている。

　その後、この妻の名前が見えなくなるので、死別したか離縁されたのだろうか。なお、信繁の舅(しゆうと)興重は、『石合家記』によると、「真田左衛門佐御内。