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映画の神さまありがとう〜テレビ局映画開拓史〜
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ルポ・エッセイ
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●黒澤明 「ソ連を悪者にするスパイ映画は撮れない」

『映画の神さまありがとう〜テレビ局映画開拓史〜』
[著]角谷優 [発行]扶桑社


読了目安時間:21分
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 ぼくが「七人の侍」を初めて見たのは、高校生のころだった。その圧倒的なパワーと描写、訴えるものの強さに圧倒された。いまでもこの作品は、自分の見た映画のベスト3に入っている。その後も「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」……語るべきものを寸分のムダなく、美しい画面構成と適切なテンポ・手法でスクリーンに凝縮し、見る者をぐいぐいと引っ張り込んでいく。なんて映画らしい映画の作り方をする監督なのかと圧倒され、夢中になった。その巨匠と、仕事の話を交わし、ぼくの話にも親しく耳かたむけていただける日が来たときには、そのこと自体、感動だった。

 最初に直接お目にかかったのは、主要作品を初めてテレビ放送することが決まり、そのご挨拶にうかがった1979年、「影武者」に入るちょっと前だったと思う。ほとんどの黒澤映画の版権を持つ東宝から、少し前に、全部のテレビ放送権をまとめて買わないかという打診があった。売値は、1本1億円以上という高額で、まとまるととんでもない巨額になる。でもぼくは、自分が責任を持っている放送枠で黒澤作品を独占し、フジの心意気を見せたかった。社内に諮ったところ、全部が白黒の映画にそんな高い放送料を払っても商売にならないと営業部などは反対だったが、同じく映画好きの石田達郎副社長(当時)が後押しをしてくれて、契約をまとめることができた。「今後、順次放送させてもらいますのでよろしく」というご挨拶に、石田副社長と一緒に砧の編集室を訪ねた。監督はニコニコと、副社長の世間話にも付き合ってくれた。

 1980年の4月第1週、最初の放送作品には、「用心棒」を選んだ。続いて翌週「椿三十郎」、ちょっと間をあけて11月に「天国と地獄」という予定を組んだ。ところが難問がいくつかある。監督側の条件の1番目は〈ノーカット〉である。「椿三十郎」は96分だから2時間枠でちょうどよいが、「用心棒」は110分、「天国と地獄」は143分ある。放送枠を延長するとなるとニュースの時間も動かさなければならないし、ネットを組んでいる地方局との調整が難しく、映画に合わせてその都度時間枠の長さを変えるわけにはいかない。

 2番目は〈画面サイズ〉。シネスコ作品は全編横長のままやってくれということだった。普通はタイトル部分はシネスコのままにするが、本編については、各カットごとに、設定された9つのマスク枠のどれかを指定してトリミングを行いながら放送用プリントを焼き直すのが、当時のやりかただった。しかし、たしかに「用心棒」などの場合、対決する二人を両サイドに収めた構図では、トリミングは難しい。
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