私は、子供の頃に「馬面」と呼ばれていた。顔が細くてアゴが飛び出していて、だから馬面。すっごく嫌だった。嫌で嫌でしょうがなかった。
考えた。いい子であれば「馬面」と呼ばれる事、少なくなるのではと。出しゃばったことをせず、矢面に立たぬような過ごし方をすれば、いい子と思われる。私は素直な性格と言われるようになっていた。それでも顔は、相変わらずの馬面。人の見かたは変わったが、面は変わらんかった。人は変わらぬところを持つ。その事を知らぬ幼少時代であった。
今にして思えば、子供の頃から「馬面で結構!」と思い切れていたら、私の青春は変わっていたかも知れない。