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子供が伸びない最大の理由は、教える側にある

『叱る力』
[著]坂田信弘 [発行]_双葉社


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 24歳でゴルフを始めたが、最初からゴルフ場所属の研修生であってアマ歴はゼロ。


 6カ月でハンデゼロの力量になり、クラブを握って10カ月目にはプロテスト地区予選に出ていたので、その間のレッスン経験は皆無。その皆無の理由は、己の技量を上げることと、所属する鹿沼CCのキャディ業務をこなすだけで精一杯で、人様のゴルフに口出しする余裕が全くなかったがためである。3年11カ月後の27歳のとき、プロテストに通り、翌年からツアーに参戦。ここでも己のゴルフを眺めるに精一杯で指導を求めるアマチュアの方との交流はなかった。そりゃ、プロアマ戦などで同伴競技者からアドバイスを求められて答えはしたが、レッスンフィーを頂戴してお教えすることはなかった。


 その後、ツアー転戦の後、物書きを始め、後、小学校4年生から、6年生までの熊本塾1期生の子供たちへの指導が初めてであった。


 現在、私は小学生から高校生までのジュニア塾生の他に、大学生、そして一般社会人へのゴルフ指導を行なっているが、社会人の皆さんの場合、すべてが旅行社の組んだツアーでのレッスン会という形式だ。だから、未だにレッスンの看板を掲げてアマチュアの指導をした経験はない。有料スタイルの開講を勧められ、その希望、要望多きことも聞くが、レッスンには別なる忍耐が必要だ。私にその忍耐はない。塾生には長所の伸ばし様も短所の矯正も体で教えてきた。お金を払ってくれる方にスイングの悪い処を叩いたり、厳しい言葉で発奮力を起させる訳にはいかぬだろう。やっぱり撫で撫でのレッスンも必要。私にその忍耐はない。


 ただ、子供だけでなく、大人の方々のゴルフも見るようになると、同じゴルファーといえどもずいぶん違うもんだなとは思う。


 幼い時期にゴルフを始めるとしたら、痩せぎすよりは太っていた方がいい。ぽっちゃり型の子のスイングに極端なクセはつき難いし、太り体型の体の記憶力は痩せてる子よりも強いからだ。3倍から5倍は強い。


 一方で痩せた子のスイングには、悪いクセがつきやすい。だからこのタイプの子を指導する場合、まずは太らせる。スイングを覚えるのはそれからでも遅くはない。


 ぽっちゃり型の子の場合、その手間が省ける。だから筋力を鍛えながら、同時にスイングを教えていける。体での物覚えの早さという点でぽっちゃり型は早い。その体自体に記憶本能が宿っているのかと感じるほどだ。だから指導もたやすくなる。


 しかし、体型やスイングタイプに限らず、子供を指導するにあたっては、一つだけ、注意を払わなきゃいけないことがある。


 それは、1カ所を変えると、全体が変わってしまうということだ。その変貌たるや、まさにあっという間だ。


 わかりやすい例が、2009年の石川遼。結果を申せば、石川は日本ツアーの賞金王になったが、春先はおかしなスイングで球を打っていた。その原因は、オフの間のスイング変更にあった。


 たった1カ所、体重の掛け位置を変えただけで、頭を右に3度傾けただけでスイング全体がボロボロになってしまっていた。戻そうとしたがマスターズまでに修正が効かず、マスターズ本番でさえ、スイングを3回変えていた。結果予選落ち。トーナメント中に3回もスイングを変えたら、勝負にはならない。大一番の戦いには土壇場でスイングに頓着する必要がないように、十分に準備して臨まねばならない。


 石川は、親父の助言もあってあるレッスンプロの教えを乞うたが、その変化が、性急すぎたのだろう。


 たった1カ所変えただけで、フィーリングも変わる。気持ちは、新しいフィーリングを受け入れようとしても、体が受けつけない。スイングは変化していく。当然思いどおりの打球は出ない。だんだんと己のスイングというものが見えなくなってしまうのだ。状態の悪い中でのスイング改造は、深みにはまり込むだけだ。


 マスターズ本番での石川は、まさにその悪循環の真っ只中だった。その状況を思えば、よくぞ復帰した。


 石川遼の順応力、最悪へと向かったが最善へと向かう力も持っていた。マスターズ後の2カ月半後、石川は勝った。石川は一つの尾根を越えた。


 一方で、大人のゴルファーはどうかというと、1カ所に変化を与えても、スイングの変化も1カ所だ。全体は変わらない。


 老いは順応力をなくす。だから、子供へのレッスンに比べると、大胆に助言できる。大人へのレッスンは1カ所のパーツを取り替えるようなもので、全体バランスが崩れることはない。難しいか簡単か、という判定なら、大人へのレッスンは簡単で、子供へのレッスンは難しい。これは明らかである。何しろ子供はグリップ一つ変えただけで、ヘッド軌道まで変わってしまう。大人はあくまで、グリップを変更したら、グリップしか変わりません。


 今、日本でもジュニア育成が声高に叫ばれているが、指導に当たる人間が、子供の特性を理解しているかどうかが問題となっていくと思う。


 大人と同じ指導法では、子供は伸びない。「自分はこうやってきた」という経験則だけでも上手くはいかない。


 子供が上達しないと、「スジが悪い」などと言うが、そりゃ大きな間違いだ。面倒を見ている子供が上手くならない理由は、教える側にある。


 子供の持つ順応力と特性に気づかず、それでも上手く育った場合は幸運。たまたま自分流のゴルフがその子に合致しただけのことであり、それは偶然だ。子供たちへのレッスンは難しい。本能を潰してはいけない。やる気、負けん気、へこたれん気を伸ばしていかねばならない。子供への指導には実は大きな責任が伴う、怖い。


 私はツアー観戦記を20年以上も書き続けてきた。自分にはできなかったこと、辿り着けなかった領域を観戦記を書く中で眺めてきた。ジュニア塾開塾後、そこで得た知恵と方法を分析し、子供達にわかりやすいように伝えてきた。


 子供の体、スイングというものは、日々変わる。大きな目で見れば、それは成長といえるのだろうけれど、スコアを競うゴルフだと、その変化がスコア作りに悪影響を及ぼすこともある。だから、確かな目で見極めないと適切な指導はできぬ。これはゴルフに限らぬことかも知れない。


 成績優秀、生活態度も模範だった生徒が、夏休みを過ぎたらガラリ一変してしまったということは、いやというほどある。恋愛にしてもそうだ。子供は失恋すると、心身ともにボロボロになるものだ。飯も食えなくなる。失恋が、全生活に影響を及ぼす。


 そこにいくと大人はどうだ。大人も失恋することはある。そして「私、もうボロボロ」と言って泣くこともあるだろう。しかし、ちゃんと食事して酒飲んで仕事だってこなしていく。ヤケ酒は慰め酒だ。大人は慰めの手段を持つ。子供の持つ慰めの手段は少ない。

「それが大人になること」


 と、言われる。確かにそれは大人が持っていて子供は持たぬ順応力だと思う。子供は体の順応力を持ち、大人は心の順応力を持つ。生きるのには順応力、対応力がいる。体の順応力を欠いても心の順応力強まるのが生きるってことだと思う。心、若ければ老いる暇はない。


 説教癖は心の順応力をなくす。失敗した部下や後輩に説教したい時、ひと呼吸の我慢をするのだ。そして、くどくどではなく、「この阿呆がっ」そのひと言でおしまいだ。このひと言が、部下や後輩の順応力の力を生むと思う。男の値打ちも上げる。


 この答えや、如何に。

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