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デラックスじゃない
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エンタメ
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はじめに

『デラックスじゃない』
[著]マツコ・デラックス [発行]_双葉社


読了目安時間:6分
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生きることは泣くことよ


 


 


 

~ずっと迷って生きてきました。いまもまだ迷っているんです~


 


 


 こないだ、アタシの住むマンションの1階にあるコンビニで、懐かしいアイスを見つけたの。で、1個買って、部屋着に着替えてから食べたら、これが久しぶりの味だったもんで、すっごく感動。それで、もう1回、服を着替えて、その店にあった14個、すべて買い占めたわ。だって、「食べたい」と思ったとき、それがなかったら大変でしょ。

「住んでいるマンションの1階にあるコンビニなんだから、食べたくなったら、すぐに降りて買えばいいじゃないか」と考える人もいるかもしれない。だけど、食べたくなったとき、勇んで降りてったのに、そこになかったときのショックたるや、耐えられないわ。


 そういうときは、もういてもたってもいられなくなって、コンビニ放浪の旅に出ちゃうね。実際、これまでも何度か、放浪の旅、やっているのよ。「アレを食べたい」と思ったら、半径1㎞ぐらいのコンビニを探し回る。


 あるとき、これまたアイス(別のブランドよ)を求めてコンビニを10軒以上探しまくったんだけど、これがなかなか見つからないのよ。だいたい、マンションの1階のコンビニ・チェーンに置いてあったからといって、同じチェーンのほかの店にあるかというと、そうでもないのね。だから、いろいろなコンビニ・チェーンを放浪というか、徘徊するわけ。


 十何軒目ぐらいでやっと発見したんだけど、達成感があったと同時に、後先考えずに「コンビニ」「コンビニ」とツブやきながら、街をさ迷っていたもんだから、もうここがどこなのか、さっぱり分からなかった。仕方なく、そのコンビニの店員さんに、「すいません、ここ、どこですか?」と聞いて、地図を描いてもらって、やっと家に帰ることができたのよ。


 そんな苦々しい思い出があるから、「見つけたら即、すべて購入」は、アタシの心に深く刻まれているの。


 マンションの1階の店で大量に買ったら、「アレ、1人、バカみたいに買っているヤツがいる」と店長さんが思って、今後も大量に仕入れてくれるかもしれないじゃん。または、たった1人の気まぐれのために、大量に入荷していいのだろうかって思うかもしれない。こういうせめぎ合いをしているはずなのよ。


 あのコンビニ店長、けっこう「攻める人」で、どんどん新製品に入れ替えるの。で、アタシの好きなものも、すぐに店頭から消えてなくなっちゃうことが多いの。だから、大量買いすることになるわけ。


 アイスの前は炭酸飲料だった。もう家に必ず炭酸飲料が置いてあった。それもあんまり甘くないヤツね。ただの炭酸も置いてあって、家に帰ると3本ぐらいグワーッて飲んでいたこともあるの。


 その炭酸ブームが去って、アイスブームがきて、今度は何ブームがくるんだろう。たぶん、疲れているのね。


 でも、そんなことをしても、心は満たされないの。まったく自覚はないんだけど、強いストレスがあるのかしら。といっても、ストレスで痩せることはないのよ。ま、この身体を見れば分かるよね。


 アタシって、言いたいことを何でも語って、心も身体もスッキリしていると思われがちだけど、実際はそうじゃないのよ。ずっと、心はさ迷っているの。たまにコンビニ目当てに街をさ迷うこともある。


 


 


 


 迷っていることは、まだまだいっぱいある。例えば――。


 学校とかで、「LINEにすぐに返信しないと仲間外れにされる」というニュースに接して、アタシたちが「最近の子どもたちはかわいそうだ」なんて思っていても、当の子どもたちからすると、「大人たちは、いちいち会って話をしろと言うけど、そんな面倒くさいこと、したくないね」と考えているかもしれない。


 彼らに「ノスタルジーばっか、語っているんじゃない」と言われたら、「はい、おっしゃる通りです」と返すしかない。


 友達に電話して話をするなり、会って激論を交わすなどの作業は、ある意味、ものすごくおもしろいし、楽しいことだと思うの。でも、それが面倒になったら、深い話し合いから何かが生み出されることを知らないまま過ごしてしまう。


 どっかでそうなってほしくないっていう希望があるのね。でも、それはあくまでもアタシの主観や希望であって、若い人たちの中にはそのほうが居心地のいい人も多いんだろうね。もしかしたら、そのほうが効率はいいかもしれない。


 ということで、ちょっと本気でSNSに接しようかと思っているの。ある人から「ツイッターとかフェイスブックに真実なんてない。でも、それはやったからこそ、分かるんだよ」と言われたの。そのとき、アタシ、やっぱり現実から逃げているんだなと思ったの。


 こうしてSNSのことを語りながら、SNSを実際に、リアルに体験したこともないの。それで知っているつもりでいたのね。だから、自分の限界みたいなものを感じているのよ。だいたい、年がら年中、スマホをいじくっている人たちが、何をいじくっているのか、分かってないからね。


 一瞬、SNSに触れただけで、「はい、理解しました」みたいに思ってしまうのは、Yahoo!の1行ニュースやウィキペディアを見ただけで、もう何もかも知ってしまったと勘違いしている人と変わらない。こんなふうに思ったわけ。ということで、「いよいよ、やりましょう」と自分で十字架を背負ったの。


 ただ、そうは思いつつも、アタシみたいな人間が生きていく世界ではなくなってしまったという思いもあるの。SNSにのめり込んだらどうなるのか、恐怖心もあるんだよね。


 だから、のめり込むかどうか、まだ迷っているわ。人生、ずっとさ迷いっ放し。でも、いいのよ。


 初めて『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演したとき(確か、2010年の春だったわ)、感動的な言葉をいただいたの。


 徹子さんも子どものころはオマセさんで、所在がなく生きてきて、そこがちょっとアタシと似ているかなって思っていたの。そういう話で盛り上がったんだけど、その中で、アタシが「いままでずっと迷って生きてきました。いまもまだ迷っているんです」と言ったら、徹子さんったら、真面目な顔で「私だって、この歳になっても、まだ迷っているわよ」というお答え。


 それ聞いて、感激したわ。あんな地位を築かれた人でも迷うのよね。人間って、どんなに称賛を浴びようと、地位を築こうと、どんなに経験を積もうと、年齢を重ねようと、迷うんだなと思ったの。


 あまりにもその言葉が衝撃的だったから、その前に何を話していたのか、忘れてしまったぐらい。これからも、人生、デブで女装で趣味もないアタシは、迷い続けるのね。


 こんなアタシの毎日なんて、つまんないもんよ。さ迷い、流されてばかりよ。「しょーもないヤツだな」って笑ってくださいな。


 


 

2014年6月某日深夜


 

マツコ・デラックス
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