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1 組織内の個人をブランドにするためのセルフプロデュース

『ブラック・マネジメント』
[著]丸山佑介 [発行]_双葉社


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自分をウリにして価値を高める



 自社の価値を高めて他社と差別化をはかるブランディング。最近のビジネス書では、価値を持たせる対象をビジネスマン本人に置き換えて「セルフ・ブランディング」を解説することも多いので知っている人もいるだろう。上司や同僚から「君は影が薄い」とか言われるので印象を変えたいとか、厄介事ばかり押し付けられるので断れるキャラになりたいとかの願望を抱えている人が頼りにする手法などと言えば、より具体的に思い当たる人もいるだろう。


 ここで裏社会から役に立つ方法が導き出せる。と言うのも、意外かもしれないが、実は裏社会人たちはブランディングの達人であるからだ。むしろ、裏社会ほどブランディングを求められる世界はない。


 関東でヤクザをしているA氏は、今でこそ40代で脂の乗ったヤクザだ。3040代が働き盛りなのは表社会と同じなのだが、彼にとって辛かったのは20代半ばのことだったという。当時のシノギ(業務)は、風俗店の店長だった。部屋住み(ヤクザの新人研修制度、詳しくは序章参照)を終えて得たシノギが、所属団体がケツモチ(トラブルが起きたときに助けてくれるヤクザ組織のこと。対価として渡すお金を「みかじめ」という)している風俗店にドライバーを派遣する仕事だったのだが、派遣先の風俗店が人手不足のために経営者から拝み倒されて、いくつかの店舗での統括をすることになったのだという。経営者と組の兄貴分は旧知の仲であり、店の運営が滞れば自分のシノギ(売上)にも影響してしまう。


 通常、組員が直接お店を経営することなどありえないのだが、期間限定ということで手伝うことになってしまった。90年代末のことなので、現在のように暴対法や暴力団排除条例などで警察が睨みをきかす時代ではなかった。それでもお客はもちろんだが、お店の女子に自分がヤクザであることを知られてはいけなかった。客足にも影響するし、自分のヤクザとしてのイメージにも傷がつく。A氏はそう思っていたのだ。さらに、彼を悩ませる問題があった。それが見た目の若さだった。健康で若いことは男としても歓迎すべきことなのだが、風俗店のような場所では違っていた。


 店に集まる従業員や風俗嬢には30代以上のベテランも多い。

「ヤクザって肩書きが出せない自分では、こわもて(見た目に怖い人)に見せる方法を持っていないことに気がついたんですよ」


 A氏は当時を振り返ってそう語る。確かにヤクザであることを除けば単なる20代の若者が、スレッカラシの風俗嬢を何十人も管理できるはずもない。


 ここでA氏が考案した手段が、自分を「ほかの若者と差別化すること」だった。

・服装を野暮ったく演出

・風貌を髪型と髭で加齢する

・敬語を使わない


 この三点を徹底したのだという。


 まず、普段の服装をジャージからダブルのスーツにした。それも金をかけたセミオーダーではなく、量販店でなるべく古臭いデザインのものを購入した。それをプライベートで出歩くときも着用して短期間で体に慣らした。時には寝るときもスーツを着ていたというのだから、本気で体になじませるつもりだったのだろう。服飾系の専門家に言わせれば間違いなのかもしれないが、ともかくこれにより若者が陥りがちのリクルートスーツ感(スーツを着慣れていない感じ)を排除したのだ。


 次の風貌による老け(加齢)演出だが、少なくとも流行に敏感な若者ではやらないような髪型にしたそうだ。パンチパーマとまではいかないが、短髪にキツ目のパーマを当てたそうだ。さらに口ひげを生やした。最初は無精髭が伸びだだけで薄かったので、彼女が使っていた化粧品で濃く塗って誤魔化していたそうだが、次第に馴染んできて不自然ではなくなったそうだ。


 最後に言葉遣いを演出した。それが敬語の不使用だった。

「Sさん(年上風俗嬢)、ちょっと遅刻。遅れたら罰金になるから」


 このように威圧せず丁寧に言っても、へりくだったりしなかったそうだ。あくまで店長のほうが上であることを印象づけることを徹底したそうだ。これに加えてA氏はもう一つの演出をしていた。それは、口数を減らして極力自分の情報を出さないことだ。

「実際には、ボロが出そうだったんで、なるべく言葉を少なくして余計なことはしゃべらないようにしていただけなんだけどね。俺は元来、おしゃべりなもんで、余計なことを言い始めたら実年齢がバレちゃうと思っていたんだ」


 相手に自分の情報を出さないことでキャラクターを独り歩きさせることは、裏社会のブランディングの基本的な手法である。自分のイメージは大きく強いほうがいい。まだ面識のない相手であろうとも威圧できるイメージを作りあげるのだ。また、アウトローたちがシノギに応じて適切なセルフブランディングをしている例は多い。


 では、いざ一般企業の人間がこれを実践するとしたらどうすればいいだろうか。


表社会で使える裏社会のブランディング



 組織内でのブランディングは、つまりほかの社員と差別化するためのもので、大きく二つのタイプを目指してもらいたい。

A:親分豪快タイプ

B:参謀完璧主義タイプ


 Aの「親分豪快タイプ」は細かい失敗を気にしないでとにかく積極的に上司や先輩にぶつかっていく。特に組織内で厳しいとされる人に取り入ることでポジションを獲得しつつ、個性を認めてもらえる。上司と部下というよりも師匠と弟子のような関係を目指すタイプだ。

「参謀完璧主義タイプ」は、とにかく失敗をしないようにして、ミスを極力減らす。このタイプの特徴は、同期よりも先輩や上司との距離のほうが近いことだ。失敗が少なく同期を冷静に見ていることから、先輩や上司から職場内の問題について意見を求められることが多い。どちらのタイプも組織内で新人であればあるほど、上司や先輩のウケがいい。


 ブランディングして目指すタイプは無限にあるだろう。だが、ビジネスの現場に限って言えば、新人のうちはどちらかのタイプを完璧に演じるだけで事足りる。


 もし、壁にぶつかったとしたらプラスアルファの要素が必要なのだ。


 最低でも5年以上10年未満も勤務すれば社内では「中堅」に位置づけられる。そうなってからは別タイプをそれぞれに加算すればいい。

A:親分豪快タイプ+参謀完璧主義タイプ(戦略的思考)

B:参謀完璧主義タイプ+親分豪快タイプ(人間味)

「親分豪快タイプ」は突破力はあるが、それだけでは出世競争を勝ち抜くには不十分。ある程度の年月、ブランディングしたキャラクターはすでにあなたの個性である。そのため、周囲からいまさら細かい計算をめぐらすキャラを求められることはないだろう。とは言え、「とにかく突っ走る」タイプでは、大きな仕事は任されることはない。そこで、周囲の力を借りてもいいので、自分の突破力を発揮する大まかな戦略を組み立てていくのだ。その戦略で固めた大枠のなかで、持ち前の突破力を発揮すれば思考や行動は「大外し」することはない。


 簡単に裏社会での例を挙げれば、若頭になったとして組全体で動いていくシノギを「これからは不動産を集中してやっていく」と決める。さらに「土地転がしをメインにする」と戦略を立てる。こうしておかないと自分はもちろん、下の者も動けない。


 新人や中堅前のサラリーマンのときは、この動く範囲の枠組み設定を上司が担う。その役割を自分がおこなうときこそ、プラスアルファのブランディングの見せ所となる。


 一方、「参謀完璧主義タイプ」は、失敗が極端に少ないイメージを周囲から持たれている。他人との距離をほどほどに保ち、常に冷静に仕事に向かっていれば大きな失敗をすることは少ないだろう。だが、それだけでは、どうしても欠けてしまうものがある。それが人間味や親しみである。


 この場合、やるべきことは「極力どうでもいい失敗」をすることである。お茶と思ってコーラを買ってくるとか、スリッパのままで出かけたとか、実際に職場の人から目撃されて、そのときに困ったように笑うだけでいい。失敗のほどよいアピールは可愛げにつながるからだ。


 実はヤクザの幹部連中の私服には、可愛らしい動物がプリントされたトレーナーや可愛い色のものが多かったりする。こうした私服のセレクトは家族が任されているようだ。この趣味の部分に関しては、ヤクザライター業界内でも諸説あるが、奥さんたちがこわもての旦那を少しでも可愛げがあるように見せようとしている説があるのだ。


 実際、私もそうだったらいいなと思ったりもする。こわもてのヤクザにもそんな一面があったら、少しだけ付き合いやすく感じるではないか。


 ブランディングに必要な要素は戦略的に演じ分けていこう。そうすれば組織内での自分のキャラクターも安定して認識されていく。組織内では自分が自分をどう思っているのかは関係ない。他人にどう見えるのか、どういう人間として評価されているのかが重要で、それ以外のことはこの際思い切って捨て去ってもらいたい。


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