上杉謙信と織田信長──。

　享(きよう)禄(ろく)三年（一五三〇）生まれの謙信と天(てん)文(ぶん)三年（一五三四）生まれの信長、二人の年齢差はわずかに四歳である。

　一方は「毘(び)沙(しや)門(もん)天(てん)の化(け)身(しん)」と呼ばれ、もう一方は「第六天魔王」と自称し、共に敵からは人間を超えたもののように畏(い)怖(ふ)された二人。この二人の肖像画を見比べてみよう。

　林(りん)泉(せん)寺(じ)蔵の謙信像は、法(ほつ)体(たい)ながら豊満なしもぶくれの輪(りん)郭(かく)を持つ顔で、一見すると人が良さそうな印象を受けるが、よく見るとその目は三(さん)白(ぱく)眼(がん)といってもいいほどに座っていて、何かを一心に見つめ続けている風情(ふぜい)である。