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バカが武器
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なぜ今バカが必要なのか

『バカが武器』
[著]福留洋之 [発行]扶桑社


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バカなネタは口コミされる

 なぜ今、世の中にバカが必要とされているのか。ここでは、僕が主催する「青春!バカサミット」(※1)にも出演している、先進バカ企業のサービスやプロダクツなどを例にあげ、その理由について書いていきたいと思います。

 まず、時代背景について述べると、今はとにかく世の中に情報が溢れています。数年前と比べても、人が見る情報の量は格段に増えている。また、昔はインターネットで何かの情報を見るにも、自分で検索をして、ホームページを訪れて……という手間が必要でしたが、今はツイッターやフェイスブックなどのSNSをやっている人なら、自然と面白い情報が流れてくるようになりました。

 そのSNSで多くの人に見られる情報とは何か、拡散されるものは何かと考えていくと、実は「バカなネタ」が占める割合はかなり多いんです。「バカ」という言い方が強すぎるなら、「面白いもの」「意外性のあるもの」と言ってもいいかもしれない。

 たとえば、バカサミットにも出演している「株式会社人間」(※2)という会社の、鼻毛通知代理サービス「チョロリ」というウェブサイト。知人の鼻毛が出ていることを、メールで代理通知するというバカなサービスですが、ツイッターでは1万回以上リツイートされ、大きな話題になりました。



 このサイトのベースになっているのは、ごく普通の問い合わせフォームです。その問い合わせフォームにバカな要素を組み合わせて、一つのコンテンツに仕上げているのです。しかも「出ていた穴」や「出ていた本数」を選べたり、伝え方も「やんわり」「強めに」「命令口調で」「軽蔑するように」「抜けとは言わない」など、パターンまで選べる。この芸の細かさが、僕はバカだなと思います。

 この「チョロリ」に限らず、フェイスブックで多くシェアをされるもの、ツイッターでリツイートされるものを見ていくと、「バカ」なものは非常に多い。そして「チョロリ」の場合は純粋にバカなサイトですが、中にはそのバカの拡散能力を、企業や商品のPRに利用するところも出てきています。ビジネスの面から見ても、バカコンテンツの拡散能力に、最近は注目が集まってきていると言えると思います。

(※1) 青春!バカサミット
著者が主催する「日本を代表する先進バカ企業が集う進化系イベント」。2011年4月2日に第1回目のイベントを開催し、以降は半年おきに開催されている。本書第4章でインタビューを行っている4氏ほか、本文中で言及している人物の多くが参加している。

(※2) 株式会社人間
デジタル、アナログにこだわらず、抱腹絶倒のボケコンテンツを次々に発表している技術者集団。花岡洋一氏、山根淳氏の2人が代表を務める(ともに1981年生まれ、大阪府出身)。近年の代表的な作品は、「鼻毛通知代理サービス チョロリ」のほか、誰もが画面上で巨乳を手に入れられるAR(拡張現実)ツール「Kinect巨乳」、カタカナの「ス」の形をしたイス「スイス」など。バカサミットにも出演。



何の役にも立たなそうなネタも実は価値を生む


 SNSをはじめとして、最近のインターネットの世界では、基本的に「面白い情報」はどんどん広がっていくようになってきました。その「面白さ」には二つのタイプがあると僕は思います。

 一つは、「役に立つ」「知ってよかった」というような知的満足感を得られる面白い情報です。着眼点や切り口が面白く、かつ読んでいて勉強になる、仕事や人生に生かせるというようなタイプの情報ですね。

 そしてもう一つのタイプは、面白いだけで「一見何の役にも立たなそうな情報」です。要するにムダなもの、不必要なもの、くだらないものですね。そのくだらないネタが、プッという笑いを生み、張り詰めた空気を緩めてくれたり、和ませてくれたりします。だから一見何の役にも立ちそうもないバカネタは、実はこっそりと誰かの役に立っているのでしょう。

 人が面白いと思う情報は「すごく役に立つもの」と「役にも立たなそうだけど笑えるネタ」というように、両極端に分かれています。そして、役に立つわけでも、まったく役に立たないわけでもない、中途半端な情報は、たくさんの情報の中に埋もれてしまい無視されてしまう。立ち位置が中途半端だから、見る側としてもどういうスタンスで接していいか、わからないのだと思います。

 ツイッターやフェイスブックをやっている人には、くだらない情報を知り合いと一緒に共有し、盛り上がりたいという人が多い。また、バカな情報をシェアすることで、「自分も面白いと思われたい」という気持ちもあるのでしょう。そういう人たちは、まったく役に立ちそうもないバカネタを進んで広めてくれます。バカネタには、そうやって多くの人を巻き込んでいくパワーがあるのです。

 そしてバカなもの、笑えるネタというのは、着眼点が面白かったり、意外と見落とされていた盲点をついていたり、これまでにはない切り口で物事を見ていたりと、何かしらの「新しさ」を含んでいる場合が多い。一見するとムダで不必要なものに思えますが、そこには新しい価値観を生み出し時代を変える、あるいは物事を一変させてしまう大きなエネルギーが潜んでいるのだと思います。


無難なコンテンツは埋もれて終わる


 以前からバカなウェブサイトやサービス、プロダクツは存在していました。しかし、それが実際に「ビジネス」の分野に食い込み、企業がバカ要素を積極的に取り入れ始めたのは最近だと思います。

 今の時代は、普通に情報をリリースするだけでは、誰からも注目してもらえません。その中で、一部の大企業でも「やっぱり人を楽しませるバカ要素が必要なのか」と考えるところが少しずつ出てきています。

 というのも、「バカなことをする」というのは、手っ取り早く目立つには最高の方法なのです。しかしビジネスの分野では、大半の企業は社会的な立場や、取引先との兼ね合いなどもあり、「そういうバカなものはイメージにそぐわない」「企業イメージが下がる」などと考えて逃げてしまい、バカなものを取り入れられない。その結果、平坦で無難な情報を淡々と発信するだけで終わっている……という場合が多い。そのような情報発信の仕方を続ける企業は、誰にも見られなくなり、気にされなくなってしまいます。

 SNSなどでの口コミが重視される今の時代、企業は何らかの方法で目立ち、自分たちの存在を知ってもらわなければいけない。その際に役に立つのが、「バカ」なのです。「非難されるんじゃないか」「炎上するんじゃないか」と恐れる企業は多いでしょう。しかし、リスクを恐れて動かないことこそ企業にとっての真のリスクなのです。また、行動力が鈍ると、未来を切り拓くために必要な革新性も失ってしまうでしょう。


小さい企業や個人ほどいち早く「バカ」を武器に


 大きな会社ほどバカなことをしづらいのは、ある意味では当然なので、僕は小さな会社こそが、いち早く「バカ」を武器にしていくべきだと思っています。たとえば僕が代表を務める「変態企業カメレオン」が販売する「妄想ライセンス」(※3)という1枚700円のバカな免許証は、ネットの口コミがきっかけでテレビにも紹介され、1か月に2000枚(140万円)売れたこともありました。また「成功のみかん箱」という、みかん箱を模した1箱5万円の木箱も、日経新聞などで紹介されたことで人気に火がつき、テレビ番組で30分間も紹介してもらいました。



 僕を含めて社員3人という超零細企業の商品が、テレビ番組で30分間も取り上げられるというのは、広告効果で考えると、ものすごいことですよね。そうやって大手メディアに取り上げられるために、有効な手段、武器となるのが、今の時代は「インターネット」と「バカ」なのだと思います。

 ちなみに、このような「バカ」をビジネスに取り入れたパイオニアといえるのは、サイコロで給料を決める制度などでも有名な「面白法人カヤック」(※4)だと思います。カヤックのサービスが世の中で人気を集めるようになったのも、会社なのに面白法人と名づけてしまう大胆な発想と斬新さ、そして時代の流れに関係があると思います。

 また詳しい内容は後述しますが、僕が“アイスマン福留”の名前で行っている「コンビニアイス評論家」のバカな個人活動も、インターネットがなければ不可能なものでした。評論家といっても、僕はひたすらコンビニのアイスを食べて、ホームページにレビューを書いているだけなのですが、最近は取材や執筆などの仕事も多くいただけるようになりました。

 僕の以前にそのような活動を大々的にしている人がいなかったこともあり、最近は「アイス 評論家」と検索しても、「アイス 専門家」と検索しても、僕の名前ばかりが出てきます。アイスについて専門家を探している人、話を聞きたいマスコミの人などは、「このアイスマン福留っていう妙なヤツしかいないのか……」と諦め半分で連絡してきているんだと思います。



 僕のコンビニアイス評論家の活動に限らず、個人が「コレ、面白いんじゃないか」と思って始めた話題性のあるサービスやモノが、ビジネスになりやすい時代になってきています。この流れが本格化すれば、新しいスタイルの働き方がどんどん増え、バカコンテンツの価値も評価され、ますます輝きを増していくでしょう。

 僕は自分が本当にやりたいモノやサービスを作り、情報発信をしています。そして、インターネットで自然に口コミが広がり、少しずつ認知度を上げることにも成功しています。僕が2011年から主催している「青春!バカサミット」も、出演者がネット上で告知をして、ラジオやニュースサイトなどで情報を流してくれたおかげで、5000円という決して安くはない参加料にもかかわらず、ほぼ満員となる500人近い人たちが集まります。バカ要素を取り入れた面白コンテンツを作れば、広告に頼る必要もないのです。

 今の時代はすべてがアイデア次第というか、アイデア勝負の時代になってきていると思います。もちろん実行してカタチにすることが大前提ですが。だからこそ、富も名誉も持っていない人や、つまらないプライドを気にしない人、守るもののない小さな企業などのほうが、身軽に動くことができる。バカという武器で時代を変えることができる状況に、世の中が変わってきているように感じます。

(※3) 妄想ライセンス
著者が代表を務める変態企業カメレオンが2009年に運営を開始した自分の顔写真、実名入りでバカな免許証を作れるサービス。現在は「お持ち帰り許可証」「お姫様認定証」「UFO運転免許証」「うやむや許可証」「地球外生物管理局員証」「魔法使用許可証」「ヨッパライ許可証」など13種類を用意している(価格は1枚700円)。無料のiPhoneアプリも展開中。

(※4) 面白法人カヤック
毎月「(サイコロの出目)%×給料」が、+αとして支給される「サイコロ給」、某FCチェーンのスマイル0円からヒントを得た「スマイル給」など、常識を無視したユニークな人事制度でも話題の面白法人。柳澤大輔氏が1998年に学生時代の友人と共に設立した。絵画の測り売りオンラインショップ「ART−Meter」、建築家と出会える家づくりのソーシャルメディア「HOUSECO」、日本最大の音声投稿コミュニティ「こえ部」など、ユーザー数千〜数万人規模のインターネットサービスを幅広く展開している。柳澤氏はバカサミットにも出演。



ユーモアをビジネスに取り入れたサウスウエスト航空


 実は「バカ」を上手にビジネスに取り入れる企業は、昔からありました。古典的な例としては、アメリカのサウスウエスト航空(1967年設立)があげられます。

 この航空会社は「仕事を楽しもう」「ざっくばらんで行こう」「ありのままの自分で行こう」など、ちょっぴりフザケた基本理念を持っています。実際に従業員の採用に際しても、ユーモアのセンスがあることを重要視しているようです。そして機内でも、座席の上の荷物入れから従業員が飛び出てきたり、「みなさま、喫煙できる場所は翼の上だけでございます。そこで火をつけられれば喫煙可能でございます」というような、バカげた機内アナウンスを流したりしているそうです。

 お客さんを楽しませること自体がサービスの一部ではありますが、このバカな機内アナウンスには、実はもう少し深い意味があります。というのも、機内アナウンスは、例にあげたようなバカなネタを少し入れておくだけで、みんなが聞き耳を立ててくれるようになるのです。

 そもそも機内アナウンスというのは、航空機に乗るうえで大切な情報を伝えるために存在するものです。しかし、淡々と情報を流すだけでは聞き流されてしまいます。そこでバカなネタやユーモアを、注意を引くための仕掛けとして取り入れている。非常に理にかなったバカの使い方ですよね。

 機内アナウンスは、お客さんに聞いてもらえて初めて意味が生まれるものです。淡々と説明するだけでは、何の意味もありません。この話、企業のホームページでの情報発信に例を変えても、同じことが成り立つと思えませんか?

 情報を人の頭に入れやすくするために、「バカ」や面白いものは大きな武器になるのです。ただ文章で説明するだけでは説明を読んでくれない人、興味を持ってくれない人が、マンガやアニメだと目を向けてくれる……という話と同じですよね。面白いものならば、人は自分から注意を向けてくれるのです。


バカサイトの旗手、バーグハンバーグバーグ


 このサウスウエスト航空の機内アナウンスと似たようなことを、日本のウェブ上で展開していると僕が思っているのが、バーグハンバーグバーグという会社です。

 そもそもバーグハンバーグバーグという社名自体がすでにバカですが、この会社は「インド人完全無視カレー」「業界初!ヤンキーにシメられながらの夢の対談!えふしん・衛藤バタラ ロングインタビュー」「イケてるしヤバい男 長島からのお知らせ」「ホーケイスナップ presented by 山の手形成クリニック」など、本当にバカバカしいとしか思えないコンテンツ(※5)を量産している会社です。どのウェブサイトも、数千〜数万回ほどツイッターでリツイートされるなど、大きな話題を呼んでいて、バカを活用したプロモーションという分野では、国内で最高の企業と言えると思います。

 バーグハンバーグバーグはウェブコンテンツの制作会社として企業の採用ページなども手がけています。企業の採用ページも機内アナウンスと同じで、興味を持ってもらうことが難しく、なかなか注意を傾けてもらえないものです。採用ページをわざわざ見にきてくれる人は、本当にその会社が好きな人か、その業界で仕事を探している人だけですからね。

 しかし、企業としては、より多くの人に見てもらい、実際に多くの人に応募をしてもらいたい。そこで、採用ページ自体を面白いコンテンツにしてしまうことで、口コミを起こす、バズらせる……というのが、バーグハンバーグバーグの手法なのです。

 たとえば話題作の一つの企業採用ページ「業界初!ヤンキーにシメられながらの夢の対談!えふしん×衛藤バタラ ロングインタビュー」。採用ページを作って人材を募集するということは、多くの企業が行っていることだと思いますが、その人材募集ページがインターネット上で話題になることは、まずありません。しかし、バカという武器を上手に使えば、それがネットニュースに取り上げられるほどの話題になり、多くの人に見てもらうことができる。「多くの人に見てもらう」という、採用ページが最初に乗り越えるべき課題をクリアできるのです。



 しかもバーグハンバーグバーグがすごいのは、ただのバカではなくて、「ハイクオリティ・バカ」だからだと僕は思います。芸が細かいというか、ものすごい技術のムダ遣いをしている。ひと目見ただけでも大いに笑えるのですが、細部までよく見ると、笑えるどころか、感心してしまうくらいの作り込みがされている。最近はバーグハンバーグバーグにインスパイアされたような、バカなサイトを作る会社も増えてきていますが、バカコンテンツづくりの技術の高さは他社を寄せ付けず、突き抜けた存在だと思います。

 たとえバカなものでも、クオリティが低かったり、作り込みがいい加減だったりすると、見ている人は白けてしまうんですよね。テレビで見るお笑い芸人のネタに、歴然としたレベルの違いが存在するように、バカなコンテンツにもレベルの高低は存在する。バーグハンバーグバーグは、どの会社よりも本気で、大真面目にバカを追求しているからこそ、面白いし、それが人に伝わるのです。

 前述の「業界初!ヤンキーにシメられながらの夢の対談!えふしん×衛藤バタラ ロングインタビュー」の場合だと、まず出演者がムダに豪華なことはもちろん、ヤンキー役で出演しているバーグハンバーグバーグのスタッフは、本当にパンチパーマをかけている。別に見た目だけの問題なら、カツラでもいいはずなのですが、その細部へのこだわりがスゴいと思います。

 そうやって細かいところまでこだわっているから、バーグハンバーグバーグの作ったコンテンツは、小さな部分まで見逃せないんです。たとえば採用情報の媒体に、バーグハンバーグバーグが取り上げられたときも、電話番号の下に「ホットペッパーを見たと言ってもらえるとスムーズです」と、ムダな小ボケを仕込んでいたりする。笑いを取るために情熱を注ぎ、大真面目にバカを追求しているので、ある意味、相当危険な人たちです。

 また、彼らは「コレがバーグハンバーグバーグのバカ」というスタイルを確立している。ひと目見てわかる「これはバーグハンバーグバーグが手掛けたサイトだ」という独特の世界観を持っています。仕事も、自分たちのスタイルに合わないものは断っているそうです。だからこそ、一貫したスタイルとクオリティがコンテンツに反映されるのでしょう。

 自分たちの理想とするバカが実現できない場合は仕事をしないという、確固たる信念が彼らにはある。バカなのですが、笑いに対してものすごくストイックなのです。なので、中途半端なバカはやらないのでしょう。バカに対するこだわりが強く、バカについての哲学も持っているのです。

 ここまではバーグハンバーグバーグを例に説明してきましたが、バカサミットの出演者にはいろんな種類のバカがいます。「バカ」の捉え方や定義は人によって違いがあります。僕の場合は思考よりも感情を優先し、まずは動いて失敗を繰り返しながら学習をしていく「行動力バカ」ですが、中には生まれながらバカセンスを持った人もいる。いろんなタイプのバカがいるんですよね。

(※5) 本当にバカバカしいとしか思えないコンテンツ
「インド人完全無視カレー」はインド人シェフのアドバイスを全部無視して作った、日本人の味覚に合ったカレーで、ネット通販で完売した。「業界初!ヤンキーにシメられながらの夢の対談!えふしん・衛藤バタラ ロングインタビュー」は、マインドスコープ株式会社(掲載当時)の藤川真一氏が、元ミクシィCTOの衛藤バタラ氏と一緒に、ヤンキーにシメられながら対談する人材募集ページ。「イケてるしヤバい男 長島からのお知らせ」は謎のイケてるしヤバい男・長島が婚活を行うサイト。「ホーケイスナップ presented by 山の手形成クリニック」は、この世の男の子がどんなペニスなのかわかるサイト。街を歩く男性に自身のペニスの状態(ホーケイ、ズルムケなど)をフリップボードに書いてもらい、そのボードと一緒に撮影した写真を掲載している。



「何でソコ?」という分野に特化した専門家こそ生き残る


 一方では「バカな専門家になる」という道を選ぶ人も最近は増えてきています。僕のコンビニアイス評論家も、その一種と言えます。

 というのも、前に書きましたが、今の時代は、本当に様々な情報が世の中に溢れています。何気なくテレビを見たり、新聞を読んだり、ネットを見たりしているだけで、知らない間にものすごい量の情報に触れています。だから「情報を絞る」ことが、これからの時代は大事になってくるのです。

 現代は、ネットで何でも簡単に調べられる時代です。そのため、昔のように「いろいろなことを平均的に知っている」ことには、あまり価値がなくなってきている。情報を調べる手段がなかった時代は、広く浅い知識があることにも大きな価値がありました。もちろん本当に膨大で広い知識を持っている人は、今も必要とされていると思いますが、時代の流れは変わりつつあると思います。

 それに、人が価値を感じるものは、基本的に資源が少ないもの。いわゆる希少なものです。たとえばマツタケは、すごく高価な食べ物ですが、仮にたくさん生えていて、いつでも食べられるものだったら、今ほどはありがたがられないでしょう。純粋に味だけを比べて、シイタケと数千円、数万円の差があるかというと、そうではない気がします。数が少なくて貴重で、何万円もする……という事実があってこそ、より美味しく感じると思います。

 だから希少性の高いもの、簡単に取り出せないもの、非効率なもの、不必要なものにこそ価値がある……と言うこともできる。そこは効率重視の思考だと見過ごされがちな部分なので、世の中には、価値を見出されていない希少なものが、まだまだ残されていると思います。

 たとえばオフィスを眺めてみると、今は多くの会社にFAX機能などが入ったコピーの複合機が置いてあると思います。あれは昔はただのコピー機だったものに、FAX、スキャナー、PCとの接続など、様々な機能が追加されて生まれたものですよね。ものすごく多機能で、効率のいい機械です。

 一方で、そこに付け加えられない面倒な機能を持った道具は、今もポツンとオフィスに残り続けている。その残っているものには、あまり価値が感じられないかもしれないですが、「替えの利かない存在」という意味では、希少なものだとも言えます。たとえばハサミのような道具は、これからの時代もずっと売れ続けていくでしょうね。

 このように複雑な機能を持った機械と同様に、一個の機能だけに特化した単純な道具にも、実は希少性や価値が隠されていたりする。それは人や企業の場合でも同じだと思います。

 ネットで多くのことを簡単に調べられる時代には、中途半端にいろいろなことを知っていることに、あまり価値がなくなってきたのと同時に、「何か一つのことにすごく詳しい」という人の存在価値は高まっていると思います。ほぼ全教科の勉強ができないけれど、この教科だけなら誰にも負けない……というような、特技を持っていることが、これからの時代は大きな武器になると思うんです。

 僕の「コンビニアイス評論家」という肩書も、アイスの、しかもコンビニに置いてあるものだけに特化したものです。これが「グルメ評論家」では広すぎるし、「スイーツ評論家」でも、まだ広いと思います。もちろんスイーツ評論家として活躍している方もいますが、これからその人たちと勝負することは難しいでしょう。やはり先行者メリットもあると思います。今の時代に、それだけの広い分野をカバーする専門家として勝ち残るには、ものすごい努力が必要になります。一方で、より細分化したところで勝負をすれば、ライバルは少ない。今までにない分野を開拓すれば自分自身がその分野で第一人者となることができ、早くに専門家として独り立ちもできるでしょう。

 たとえばバカサミットの出演者で、離婚式プランナーとして知られている寺井広樹さん(※6)は、「試し書き」の収集家、専門家でもあります。寺井さんは、文房具売り場にあるペンの書き心地を試す試し書きを“無意識のアート”と考えて、5年間で48の国や地域の試し書き2000枚以上を収集しており、日経新聞などでもその活動が取り上げられています。「なぜそんなものを集めているんだ」「そもそもそんな専門家が必要なのか」という意見もあると思いますが、余人をもっては代えがたい存在だと言えます。



 しかも寺井さんは知り合いにも協力してもらい、世界各地の試し書きを送ってもらっているそうです。そうやって変わったこと、バカなことに特化して活動していると、なぜか多くの人が自然と協力してくれるのです。

 試し書きの収集は、一見本当にムダ以外の何物でもないように思えますが、ムダなことだからこそ、何か滑稽な感じもしますよね。「なんで、試し書きなんて集めてるの?」と笑いながら聞いちゃうというか。すごいなと思うけど、どこかで見下せるというか。

 この「何でそんなことしてるの?」と言われるような、バカなことをすることは、実は「愛される秘訣」でもあるのです。バカが愛される理由の一つは、自分が上から目線になれる「見下し」の感情と、「スゲぇな」という尊敬の感情が入り混じっているから。だから見ている人は「くだらないけどスゴイな」「スゴイと思うけど、自分はやりたくないなぁ」と思ってしまう。その感覚が不思議と心地よいのだと思います。仮にすごい才能や実力を持った人でも、やっていること自体はバカなことやユニークなことだと、妬まれないし恨まれないのです。

(※6) 離婚式プランナーとして知られている寺井広樹さん
1980年生まれ。離婚式プランナー。「結婚式があってなぜ離婚式がないのか」という疑問をもとに、別れを“再出発”としてポジティブに考えるための儀式・離婚式のサービスを2009年に開始。過去に140組以上の離婚式をプロデュースしている。「親族や友人の前で夫婦が離婚に至った経緯を説明する」「最後の共同作業として夫婦が結婚指輪をハンマーでたたき割る」など、大胆かつ斬新なアイデアが話題を呼び、海外からの取材も多数受けている。なお5年ほど前から世界の「試し書き」の収集も始め、様々なイベントも開催している。バカサミットにも出演。



笑いを誘うものにお金を使う時代に


 以前、東京ビッグサイトで開催されたデザインフェスタに行ったときに、「オシャレなもの、がたくさんあるなぁ」と思いながら会場を歩いていたのですが、最終的に僕が買ったのは、カタナ型の傘“かさな”というものでした。傘の柄の部分が刀の柄になっていて、つくりも手が込んだものです。人はバカなもの、面白いものには惜しげなくお金を使ってしまうのです。

 傘なのに刀の形で“かさな”って……やっぱりバカですよね。それで自分が持っている姿を想像したら、何だかたまらなく欲しくなっちゃったんです。雨のときに使う分には傘なのですが、閉じた状態で体の前に構えると、何だか武士みたいな佇まいになる。電車に乗っているときなどは特に目立ち注目されます。飲食店などに差していくと店員さんは大体驚いて話しかけてきます。そう、バカは一つのコミュニケーションツールにもなるのです。

 この傘の例は、僕が特別バカなものが好きだからかもしれないですが、誰でも自分の趣味には、惜しげもなくお金を使います。でもそれは、趣味が違う人から見ると、考えられないお金の使い方に思えるでしょう。

 ゲーマーにとってのゲームでも、何でもいいのですが、彼らは自分の食事代を切り詰めてでも、好きなゲームを買いますよね。そういう趣味のモノは、「なくても生活に支障がないもの」「好きな人以外は絶対に買わないもの」、もっと言ってしまえば「不必要なもの」です。



追い風が吹く場所を見つける


 僕は今、コンビニアイス評論家として様々なメディアで紹介してもらっていますが、なぜ急にそのような状態になれたのかというと、“たまたまそこが、世の中で追い風が吹いている場所だったから”です。風が吹いている場所を“偶然”見つけられただけなのです。

 追い風が吹いている場所で走れば、当然加速もしやすい。逆に、向かい風が吹いている場所では、いくら一生懸命に走っても、なかなか前に進みません。努力が報われないので、自然とやる気もなくなっていくはずです。つまり、風も吹いていない場所で、自分の適性に合わないことをしている人は、いくら努力をしてもなかなか良い成果は得られないでしょう。

 一方で、追い風が吹いている場所を発見し、そこに自分の適性がハマったときは、人はバカになり、突き抜けることができます。辛いはずの努力も辛くなくなり、心地よく、楽しく走ることができるのです。そして、大した努力をしなくても結果が出るようになっていく。

 凧揚げを例に話してもわかりやすいかもしれません。凧を揚げるために必要なのは助走と強い糸、あとは風ですよね。助走は、いわば自分の努力。強い糸は道具だったり設備だったり環境だったり、自分が持っている様々なツールでしょうか。でも一生懸命走ったり、良い道具を揃えたりしなくても、強風が吹いていれば、誰でも一発で凧を空高く掲げることができる。風というのは、それくらい重要なものなのです。

 その風こそが、「時代の流れ」であったり、「ポジション」だったりするのです。努力をしたり、設備に投資をしたりする前に、「風が吹いている場所はどこなのか」「風とは一体何なのか?」を日々の行動から感じ取ることに、大きな意味があると思います。

 世の中で活躍し続けている人というのは、自分の適性に合った、追い風の吹いている場所を、偶然に見つけられた人なのです。でも多くの人は、なかなかその場所を見つけられません。あるいは、最後まで見つけられずに人生を終えてしまう場合もある。では、見つけるためにはどうしたらいいのか。それにはバカと言われようとも、無謀と言われようとも、とにかく積極的に動くしかないんです。

 世の中で何か大きなことを成し得たいなら、「恥ずかしい思いはしたくないから今のままでいい」と思うか、「人からバカにされてでもチャレンジをしたい」と思うか、両者を天秤にかけてみればいいと思います。もちろんすべての人にバカな生き方が向いているわけではないので、どちらを選ぶかを冷静に考えてみましょう。僕の場合は、バカにされてでもとにかく何かをしたい、自分を変えたいという願望が強かったので、PCを使えない状態のまま、トラックドライバーからIT業界に転職するというバカな行動を起こしたわけです。

 その後、コンビニアイスとの出合いがあった。アイス好きな人は、みなさんの想像以上に多いのですが、専門家は僕以前に誰もいなかったので、あまり努力しなくても結果が出やすかったのです。

 だから、古くから言われている「努力は必ず報われる」という言葉を、僕は100%は信じていません。すべての努力がムダだというわけではないですが、結果が出やすい場所・ポジションというものが、絶対に存在します。しかも、その場所は一つや二つではなく、いくらでも転がっている気がします。

 それでも多くの人は気がつかないし、その場所を取りに行くどころか探そうともしない場合が多い。そして、自分の適正に合っていないことに時間を使い、なかなか良い成果が出ないことを理由に「自分には才能がない」と言って片付けてしまう人もいます。そうやって失敗やリスクを恐れることで、自分の新たな可能性にチャレンジしないのは、本当にもったいないことだと思います。少しの努力でも結果が出る場所、つまり自分の適性に合った場所があることを信じて大胆に行動してみる。これが大切です。自分が情熱を注げる場所で本気で努力をしたら、簡単に突き抜けた存在になれるはずですから。


 僕は元々トラックドライバーで、パソコンができないままIT業界に入りました。そして、今は「自分のやりたいことしかやらない」と決めています。どんなに苦しくてもです。いくらお金を生み出せる仕事でも、そこに貴重な時間を取られるのはイヤなのです。そうやって、好きなことしかやらないと決めておけば、人生にもブレがなくなります。

 ほかの分野でも、同じことはいくらでもできると思います。今は新しい試みや、面白いことをした人には、即座に反応が返ってくる世の中になってきました。自分が好きなモノにいろいろとチャレンジをして、様子を見て反応が良かった分野に、集中して力を注いでみる。そのくらいの柔軟さが必要です。


出る杭を打たれない場所に出る


 昨今の唐揚げブームの仕掛け人である、日本唐揚協会・専務理事の八木宏一郎さんがバカサミットで「杭を打たれない場所に旅に出ろ」と言っていましたが、それも凧揚げの風(ポジショニングと努力)の例と同じことを言っていると思います。

 そもそも八木さんは、唐揚げとは関係のない、IT企業で働いていました。その会社で、知り合いから頼まれた唐揚げの催事イベントを請け負い、そこで初めて唐揚げと本気で向き合いました。それから唐揚げに関することを調べ始めて、洒落で唐揚げ色(金色)の「カラアゲニスト」の名刺を作ってしまった。それを飲み屋で女のコに見せたら、すごくウケた。そこから、唐揚げの活動に本腰を入れ始め、検定試験などを作り始めたそうです。つまり、仕事の中で、一つの偶然を掘り当てた人なのです。「杭を打たれたくなければ、誰も杭を打てない場所を開拓し、自らマーケットを作ってしまえばいい」。それが八木さんのシンプルな考えです。八木さんも過去にいろいろな仕事をしてきた人ですが、もともと食べることが大好きな人です。いつ会っても、「食べることが大好きなんですよ。だから、今後も食に関する分野だけをやっていきたい」と言っている。いわば、「食バカ」です。そして八木さんは「自分が幸せに働けるのは食の分野しかない」という思いのもと、2008年に日本唐揚協会という組織を立ち上げてしまいました。



 八木さんはいろんなバカ要素を持っている人だと思いますが、「日本唐揚協会」と、「日本」を付けちゃうあたりのセンスがものすごくバカだと思います。これはかなり勇気が必要です。「どんだけ立派な団体なんだ!」と思われてしまうはずなので。最初は、「悪ノリにしてはやけに本格的だなぁ」と誰もが感じたと思います。しかし、今では「日本唐揚協会」は、日本の冠を背負った名前にふさわしい素晴らしい団体になっています。

 八木さんは、思考回路が非常にシンプルです。「どうして唐揚げを選んだんですか?」と質問すると、「え? 福留さん、唐揚げ嫌いですか?」と逆に聞き返してくる。「いや、好きですけど……」と言うと、「でしょ? だからですよ。みんな唐揚げは大好きじゃないですか」と。

 好きだから、それを仕事にする。みんなが好きだから、仕事が成り立つはず。非常に単純な話ですが、これまで誰も、それを唐揚げでやろうという発想がなかった。そこに気がついたことが、本当にすごいことなんです。シンプルな発想と思考が、見えない価値を掘り起こし、盲点を見つけることに繋がるのでしょう。この唐揚げの例のように、世の中にはまだまだ発見されていない価値はあると思います。


もう真面目なフリはしなくていい


 コンビニアイス評論家も、日本唐揚協会も、名前だけでバカっぽいですが、世の中には需要がありました。まだまだ日本の社会全体に、バカな会社もバカな人も足りていません。つまりバカ不足なのです。正確に言うと、バカな人が少ないわけではない。バカの潜在能力の高い人は、かなり埋もれているはずです。現在のバカサミットの出演者(先進バカ企業)にも負けない、もしくはそれ以上の才能を持った人も、たくさんいると思います。

 そのようなバカセンスの高い人たちが覚醒していかないと、これから世の中はダメになっていくし、窮屈でつまらなくなっていくと思います。だから僕はバカセンスの高い人たちに「もう真面目なフリなんてしなくてもいいんですよ」というメッセージを贈りたい。バカは一つの個性で、バカなりのポジションに収まればいい。そこで、誰も考えたことがないバカなモノづくりや、バカなサービスづくりに全力で取り組んでほしいと思います。普通にすごいモノやサービスを作って結果を出すのもいいですが、誰も取り組まないような斬新で突き抜けたバカコンテンツで結果を出せれば、将来が広がるし、何よりも楽しい世の中になると思うのです。

 また、3・11の後に、ちょっとしたバカやユーモアの価値というのが、改めて見直された部分があると僕は思っています。
「普通に笑えること」は、すごく大切なことだし、幸せの証しだと思うんです。だから、プッと笑えるくだらないものの価値が見直された。これまで不必要だと思われていたことが、意外と必要なものだったのだと現在は認識され始めている気がします。こうしてオセロのように、今まで見えなかった価値がある日突然ひっくり返り、大切なものとして認識されていくことが、これからたくさん起こってくると思います。


 第1回のバカサミットを開催したのは3・11のすぐ後の4月2日で、そのときの盛り上がり方はすごかったです。当時はあらゆるイベントが自粛もしくは中止に追い込まれていて、何をしても不謹慎だと言われる雰囲気でした。参加してくれたお客さんの多くも、ストレスを溜め込んでいたのだと思います。

 バカサミットの出演者たちには「存在そのものが不謹慎」ぽい人が多いのですが、不謹慎と言われることはやっぱり怖い。特に出演してくれた面白法人カヤックの創業社長・柳澤大輔さんなどは、僕らと違って会社の規模も大きいし、東北出身の社員の方もいらっしゃるので周りにも随分気を使っていました。一時は「厳かな感じでクラシックを流そうか?」という意見も出ましたが、イベント名も「バカサミット」なので、最終的には不謹慎と言われるのも覚悟で、イベントのオープニングでは、『勇者ライディーン』のテーマソングをかけました。最終的には柳澤さんも「ああ、そっか。バカサミットだもんなぁ」と、なかば諦めムードで一緒に楽しんでくれました。

 3・11はみんなにとって衝撃的なものでしたし、「また同じような災害があってもおかしくない」と感じるようになった人も多いでしょう。そこで生き方を見直す人たちも出てきましたし、生きている僕たちは、より前向きに毎日を過ごしていかなければいけないと感じました。

 何も考えずに、何となく毎日を過ごしていくだけではもったいない。自分のやりたいことをして、人生を楽しみながらも、社会をより良い方向に変えていきたいと僕は思っています。そのために、僕はこれからもバカなことに全力で取り組んでいくつもりです。


バカが世の中の新しい価値観を作る

「いつの時代も、世の中を大きく動かすのは誰の言うことも聞かない大バカもの」


 これは僕がバカサミットのために考えた言葉です。

 大げさに歴史の例を出しますが、アインシュタインの相対性理論も、ガリレオの地動説も、世の中に認められるのは提唱してから何年も経った後ですよね。それを提唱したときは「なんてバカなこと言ってんだ」「ありえない」と思われ、周囲の人から笑われていたことが、何年かした後で世の中すべての人が認めるようになったわけです。

 そのように、現時点では「ありえない」と思われていることでも、数十年先の世の中では、常識になっているものがあっても何の不思議もありません。そう考えたときに、僕が真っ先に思い浮かべるのが、寺井さんが考案した離婚式です。

 もしかしたら数十年後の世界では、離婚式は、離婚した人の誰もが行うスタンダードな行事になっているかもしれない。結婚式場と同じように、立派な離婚式場なんかもできているかもしれない。

 寺井さんは、そのような可能性を真顔で大真面目に語る人です。「日本人というのは『区切り』や『けじめ』が好きです。学校で言えば入学式と卒業式があります。あとは結婚式やお葬式。毎年、年初めには初詣に行き、年末は年越しを祝う。それだけ区切りを大事にします。でもなぜか、離婚式だけがありません」というように、本当に「それっぽいこと」を話すんです。
「離婚式は卒業式と同じで『別れの式』ではないんです。再出発の式なのですよ。何かを引きずってズルズル終わらせるのではなく、ここで式をあげて、気持ちよくリスタートをしましょう。離婚式の『り』はリスタートの『リ』でもあるのです」というように、何だかうまいことも言う。だから僕も、「そんなバカな……」と笑いながらも、悔しいですが心の裏側では「そうかもなぁ」と深く納得をしてしまうんです。



 もしかしたら寺井さんの考えた離婚式は、日本の習慣を変えてしまう可能性があるのでは……と僕は思っています。今の段階だと「離婚式なんてありえない!」という状態ですが、その常識自体が変わるかもしれない。実際にNHKでもBSプレミアムで2012年3月に『離婚式〜人前でサヨナラを誓う夫婦たち』として離婚式がドラマの題材にされましたし、寺井さんは離婚式のマナー講座なども開催して人気を得ている。世の中の動きを見ていると、「これは、もしかしたら……」と思えてくるのです。

 僕は、もう悔しいことに離婚と聞くと「離婚式」を思い浮かべてしまいます。「離婚」は「バカ」と同じで強いキーワードなので、強く印象に残るのでしょう。寺井さんが以前、あるイベントで「離婚式を世の中に浸透させるためにはどうしたらいいか」とお客さんに意見を求めていました。僕もその問いを考えてみました。きっと有名人が離婚式をあげたら、一発で有名になるでしょう。

 有名人が離婚式をあげれば、世の中の離婚式に対するイメージが変わります。

 考えると、ちょっと恐ろしくなります。おそらく寺井さんのことだから有名人のカップルの離婚のニュースを日々チェックして、虎視眈々とチャンスを狙っていると思います。

 この離婚式に限らず、今は、新しいムーブメントを起こすには最適な時期だと思います。今までの社会の延長線上に希望が感じられず、「日本は終わったな」と感じる人も多い時代だからこそ、今までになかった飛び抜けた発想や、多くの人が理解しにくいことに本気で取り組んでいる人にチャンスが訪れるのです。世の中の流行や、歴史の流れを無視して、自分たちが正しいと信じる価値基準を、世の中に打ち立てることができるはずなのです。

 そして、そういう無謀なチャレンジをする人は、いわゆるバカな人だと思います。みんなが「あっちだ!」と言っているときに、「いや、こっちでしょ」と真逆に全速力で走っていく人。そういうバカな人が、新しい時代の流れを作り、それが世間に広がり、新しい常識をつくり、やがて世界を変えていくんだと思います。

 そもそも「日本は終わった」「先が見えない」などと言う人は、世の中の多くの人が集まり、息苦しくなっている場所、先細っている場所にいるから、悲観的にしか世界を見られないだけだと思います。世の中の何かを大きく変えるには、まずはそのような場所から離れなければいけない。新しい時代の流れは、想像もつかない変な場所から始まるものだと思いますから。あなたがこの本を読んでいる今この瞬間にも、誰も見向きもしないような場所で、バカな人が勝手に新しいモノや価値観を生み出しているはずです。

 そうやって、良い意味でも悪い意味でも、世間の予測とは違う動きをするのが、バカの役割であり、使命だと思います。予想通りに進んだら、世の中がダメになってしまうのが目に見えているのであれば、バカが活発に動いて、その予想を裏切るしかない。「お前、何バカなことやってんだよ」という人が、得てして世の中の流れを変えるものなのです。


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