読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

犬耳書店はRenta!へ統合いたします

(2021/11/26 追記)

犬耳書店の作品をRenta!に順次移行します。
詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

0
-1
kiji
0
1
1073084
0
孫正義秘録
2
0
1
0
0
0
0
ビジネス
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
原発との闘い

『孫正義秘録』
[著]大下英治 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:5分
この記事が役に立った
1
| |
文字サイズ


 二〇一一年三月一二日、東京電力福島第一原子力発電所が水素爆発。過酷な原発事故が、福島を襲った。


 二〇一一年三月二二日、ソフトバンク社長の孫正義は福島入りする。福島県田村市の総合体育館に設けられた避難所で、一人ひとりの被災者に涙ながらに語りかけた。

「一刻も早く、一キロでも遠くに逃げてください。九州への移動費用は、わたしが持ちます。住まいも雇用もなんとかします。あなたがよくても、子どもたちが可哀想すぎます」


 臆病だと言われても、危機においては三十六計逃げるに如かず、安全が確認されてから戻っても遅くはない、というのが「3・11」当時の孫の判断だった。


 孫が優れているのは、津波被害にあった少女が海に向かって、「お母ーさん」と泣き叫ぶ映像に涙しながら企業の社会的責任を痛感し、震災孤児の支援にいち早く乗り出すいっぽうで、福島入りする以前に孫の地元佐賀県をはじめ西日本の知事に直接掛け合い、三〇万人の被災者の受け入れを準備する戦略家の側面を併せ持っていることである。


 しかし、日本政府の対応は、後手後手に回り、無用な住民被曝、風評被害と信用不安を広げただけだった。孫の明解で卓越した危機対応策を受け入れることはなかった。



 大震災の余震がつづき、東京電力福島第一原発事故による放射能汚染の広がりに、全国民が不安を覚えていた二〇一一年四月二二日、ソフトバンク社長の孫正義は、自由報道協会主催の「東日本大震災について」の会見で熱く語った。

「今、まさに国難の時であります。わたくしも先月、福島に行ってまいりました。本当に言葉に言い表せないような、胸を締めつけられるような思いに駆られました。これはとてつもない長期戦になります。かつ、何が起こってもおかしくはない、危機的な状況が続いております。福島第一原発事故による福島の方々の悲しみというのは、地震と津波によって被害を受けられた被災者の方々とはまた別の、重層的な悲劇であろうと思います。


 これから触れるわたしの発言が、被災者の皆さん、国民の皆さんにとって、逆に風評被害や、心理的につらい思いを増幅させてしまわないか大変危惧しておりますが、重大な国民的関心事だと認識しておりますので、単なる批判に終わらない、エネルギー政策転換のための建設的な解決策を議論するため、私見を述べさせていただきたいと思います。


 わたくしどもの会社にとっての本業は、携帯電話、インターネット、それにかかわる情報関連の事業です。多くのユーザーの皆さんから『震災問題、原発問題に対して口をはさむ暇があったら、さっさと本業の携帯電話を早く繋げ!』とツイッターなどでご批判をいただいているのも、重々承知しております。もちろん、ソフトバンクの携帯電話の電波が、一日でも早く、一人でも多くの方に繋がるように、わたくしも先頭に立って、エンジニアを中心に日夜、頑張っております。地震、津波の直後、そして大きな停電の直後は、携帯のネットワークも寸断されました。しかし、おかげさまで、今日現在(二〇一一年四月二二日現在)では、東北、関東における携帯の基地局は、九九までネットワークが回復し、われわれの責務を少しでも果たせるという状況になってきました。


 わたしは原発問題は、日本だけの問題でなく全世界に影響を与える、人類へのチャレンジ、試練であると受け止めております。そういう意味で原発は怖い。しかし、原発は今後も必要なのか、原発は止めるべきなのか、止められるのか。福島第一原発事故の問題だけでなく現在も世界中で稼動している原発について、われわれはどう考えればいいのか、本当に一カ月間悩み続け、必死に勉強致しました。


 そもそも事故一年前の二〇一〇年三月に、東京電力福島第一原発1号機ができて四〇年が過ぎたと。それを継続して運転すべきか審議がなされて、二〇年追加して運転できるという技術評価書を得て、東京電力は今後一〇年間の保守管理方針を原子力安全保安院に申請し受理されたと。歴史にIFはありませんが、もしその時点で厳密な安全審査がなされて、そこで運転が停止していたなら、皆さんご存知の大事故は起きなかったのであります。


 いまや小学生でも知っている単語の原子炉圧力容器は、四〇年間中性子を打ち続けられると巨大地震、あるいは停電、異常な熱と気圧の上昇によって、著しく圧力容器そのものが壊れるリスクが高まるというのです。


 日本の法令上、三〇年経ったら継続運転すべきか審査するルールがありましたが、なぜそこでパスすると一〇年も延長されるのか。世界の原発の廃炉平均値は二二年であります。どう考えても四〇年は長すぎ、そもそも寿命がきているのではないか。今回の事故を受けてもう一度、警鐘を鳴らすべきだと思うのです。


 世界を見ても、すでに原発建設ラッシュのピークは一九八五年で終わっているのです。


 世界のエネルギー政策のトレンドは、原発依存からシフトしている。原発依存の発電容量は明らかに減ってきています。それを日本では、原発は環境にやさしい未来のエネルギーだ、発電コストが安いと。平たい言葉で言えば、プロバカンダ、まるで洗脳されたごとく信じ込まされていた。本当に『安全神話』という情報統制は、恐ろしいですよ。


この記事は役に立ちましたか?

役に立った
1
残り:0文字/本文:2144文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次