『孫正義秘録』
[著]大下英治
[発行]イースト・プレス
孫の目指すのは、ただひとつ。世界一のインターネット環境の実現であった。インターネットを常時接続して、接続料を安くする。さらに、接続スピードもこれまでの五〇倍、一〇〇倍、一〇〇〇倍にする。そのことは必ず、日本の各企業の競争力を上げ、経済力を高めることにつながる。
孫は、新事業の担当に、何人かの責任者を任命した。期限を切って、ブロードバンドサービス事業を立ち上げるように指示を出した。
三カ月後、孫は、担当責任者三人を呼び出し、進捗状況を聞いたが、ブロードバンドサービス事業は、まったく進んでいない。
孫は、思わず口にした。
「おれが直接、陣頭指揮を執る」
孫は、社長室の秘書に言った。
「今日の昼以降のすべてのアポイントを、キャンセルしてくれ」