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(2021/11/26 追記)

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金正日の料理人
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ルポ・エッセイ
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文庫版まえがき

『金正日の料理人』
[著]藤本健二 [発行]扶桑社


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 本書は私が二〇〇三年六月に発表した『金正日の料理人』、そして二〇〇四年七月に発表した『金正日の私生活』を文庫として一冊にまとめたものである。

 自分で思い返しても信じられないことの連続だった北朝鮮での私の数奇な経験を、まだまだ日本の方々には十分に伝えきれていないと感じ、このたびの文庫化となった。

 私は一九八二年に北朝鮮に渡り、途中の例外期間を除き、二〇〇一年四月二十四日まで、累計十三年間にわたって金正日(キムジョンイル)の傍らで仕事をしてきた。

 金日成(キムイルソン)元帥(総書記)が死去した一九九四年には、私は日本人でありながら労働党秘書室指導員にも指名された。外国籍でありながら、朝鮮労働党のこれほどの重職についた人間は、世界でも私一人だと思う。

 この本は謎の国、北朝鮮の中枢で働いてきた私の日記を基に書き上げた本である。

 二度も日記を没収され、今後日記は書いてはならぬと上司から常に言われ続けていたにもかかわらず、私は没収された次の日から密かに日記を書き続けてきた。

 金正日の安否情報が錯綜している今だからこそ、この本を日本の皆様に目を通していただきたく思う。

 この「まえがき」を書いている二〇〇八年十月現在、「金正日は二〇〇三年に既に死亡している」という主張をされている方もいる。

 しかしそれでは、二〇〇四年に小泉首相(当時)が会った人物は誰だったというのだろうか。
「影武者が代わりに対応していた」などという苦しい見解が述べられているが、他国の首脳を影武者で欺く、そのようなことが果たして可能なのだろうか。

 少なくとも、二〇〇四年に流れたニュース映像は、私が十三年間も間近で見てきた金正日の姿そのままだった。

 北朝鮮国内のメディアに金正日が出てこないと、すぐに話を大きく書き立てる日本メディアは多い。その一方で、韓国のスポークスマンは金正日の生存を報じているが、私はこちらの方が正しいと考えている。

 金正日に健康上何かが起こったことは間違いないとは思うが、いかにブッシュ米大統領が悪の枢軸と名指しした国家とはいえ、一国のトップを憶測や妄想で軽率に死亡と断定してしまっていいものだろうか。

 ヨーロッパからの医師団から情報が漏れたというものもあったが、私から言わせればそのようなこともまた、ありえない。

 金正日ロイヤルファミリーのために訪朝する医師団は、莫大な治療費を受け取っているが、それには当然「口止め料」も含まれている。口外しないことを契約した上での金額なのだ。

 その契約がある以上、マイクを向けても本当のことを話すはずがない。ペラペラと話す人物は逆に疑ってかかるべきだろう。

 あたかも自ら見てきたかの如く「金正日は起き上がることができない」などと書き立てているマスコミには呆れてしまう。

 しかし、私はこのような日本国内のいい加減な報道・主張に憤りを覚えると同時に、金正日を心配している自分がいることも告白せねばならない。

 できることならば、もう一度金正日の前に立ち、寿司を握って食べてもらいたい。そんなことが脳裏に浮かぶことさえある。築地のうまい魚を買い付け、金正日に食べてもらうことを夢にまで見るのである。

 私は金正日の頬に幾度となくキスをした。他の一体誰が、こんな経験をしたことがあるだろうか? おそらく、私一人ではなかろうかと思う。

 宴会の席では彼がお酒を飲んで、気分がよくなるといつも「藤本オラー(来い)!」と呼ばれたものだった。私は小走りで彼のところに行き、お酒をグラスに注ぐと、私にも注いでくれる。

 グラスとグラスを当てて乾杯をすると、彼はいつもこう私に聞くのだった。
「藤本! 私を好きか?」

 私はもちろん「好きです」と答える。すると、金正日は頬に人差し指をあて、ここにキスをしろという仕草をするので、私はキスをする。すると彼は、
「よし分かった。でも裏切ったら、これだぞ!」

 と私を手で刺すような仕草をするのだった。

 しかし、私は結果としては金正日を裏切って、日本へ逃げてきてしまった。彼の言うとおり、刺されても仕方がないのかもしれない!

 私は二〇〇三年、その覚悟を持って『金正日の料理人』を出版したことを思い出す。

 巻末には「金正日以後」に対する私の見解も収録した。本書により、私が北朝鮮で経験したことを、少しでも皆様にお伝えできればと思う。

二〇〇八年十月 藤本健二 
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