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小泉純一郎・進次郎秘録
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政治・社会
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はじめに

『小泉純一郎・進次郎秘録』
[著]大下英治 [発行]イースト・プレス


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 小泉構造改革とは何であったのか──。


 様々な論考が小泉政権当時から現在まである。その評価は歴史がなす。間違いなく言えることは、「郵政解散」に象徴される()(いずみ)(じゆん)(いち)(ろう)総理の決然とした態度は、国民大衆が熱狂し望んだ絶対的宰相の姿である。


 現在、安倍政権が推し進める原発再稼働に異議をなす「原発ゼロ」を生涯を賭けた仕事と()()(けん)(こう)に活動する小泉純一郎が触発されたのは、3・11後に精力的に毎月欠かさず被災地を訪れ、現場の声を復興策に盛り込もうと努力する次男・()(いずみ)(しん)()(ろう)の政治家としての姿からではなかったか。

「昭和の妖怪」との異名を持ち、憲法改正を目指した祖父・(きし)(のぶ)(すけ)の後継を自認する()()(しん)(ぞう)総理は、今年五月二〇日、祖父の総理在任日数一二四一日を抜いて、戦後では歴代六位となった。


 その安倍総理と、小泉純一郎・進次郎父子との関係は、複雑にして微妙である。


 第一次安倍内閣は、小泉純一郎の()()なくして実現できなかった。


 なにより在任五年五カ月(一九八〇日)と()(とう)(えい)(さく)(よし)()(しげる)に次ぐ戦後歴代三位の長期政権を誇った小泉純一郎は、安倍を後継者として特別に育てた。電撃的な北朝鮮訪問にも随行させた。このことは、安倍が総理となる重要なポイントである。


 さらに平成一五年九月、小泉総理は、安倍を幹事長に据えるという「サプライズ人事」を断行した。大臣経験もない当選三回の若手議員を与党第一党の幹事長に就任させるのは前代未聞であった。


 平成一七年一〇月に発足した第三次小泉改造内閣では、内閣官房長官に起用し、初入閣させた。いかに小泉が安倍を重用し、安倍政権誕生の礎を築いたかの証である。


 ところが、3・11後、小泉純一郎は「反原発」を標榜し、原発再稼動を強引に推進する安倍総理と対峙している。


 しかし、安倍総理に会う機会があっても、あえて「直言」することはない。宰相経験者故の微妙な距離の取り方といえよう。


 いっぽう、安倍総理と小泉進次郎との関係も、微妙である。


 進次郎は、安倍総理のネット上の言動に苦言を呈したり、平成二六年二月、父純一郎が強力に支援した(ほそ)(かわ)(もり)(ひろ)元総理の東京都知事選出馬の対応でも、自民党の推す(ます)(ぞえ)(よう)(いち)の応援を拒んだ。


 さらに、昨年一一月二一日、衆議院解散に踏み切った衆議院本会議場で、万歳をしなかった。進次郎は、その理由を語った。

「多くの国民の反応は、なぜ、今、解散なのかと。万歳している姿が、余計に国民との心の距離を生むんじゃないか」


 直後の安倍総理が檄を飛ばした両院議員総会を進次郎は欠席した。


 かといって、安倍官邸も、自民党青年局長を経て、現在、(いし)()(しげる)地方創生担当大臣の(もと)で内閣府大臣政務官として活躍している小泉進次郎を、選挙の応援弁士の「三本槍」の一人として使い、距離を置くことはない。


 万が一、進次郎が「アンチ自民党」に(かじ)を切り、小泉新党でも結成すれば、自民党にとっては大変な危機である。



 現在、フライシュマン・ヒラード・ジャパンの代表取締役社長を務める()(なか)(しん)(いち)は、小泉純一郎、進次郎親子を独特の視点から見ている。

「小泉さん父子は、とても(つな)がりがありますね。メッセージの発し方も、特徴的でしっかりと言い切りますね。それから、表現する言葉が上手いです。


 また、話しているようで、実は話していない。つまり、今の世の中は何かを発信することが危険な時代です。特に政治家は、情報発信せざるを得ない立場ですが、小泉純一郎さんも進次郎さんも、そうした時代状況を心得て発信されています。たぶん、日本の政治家の中では、二人ともその意識は群を抜いていますね。言葉に無駄がないんです。非常に優れた発信者ですね。


 日本の政治家の多くは、発言に無駄が多過ぎるんですよね。


 立ち位置がしっかりしているから、ブレがない。それがリスクのない表現に繋がる。それが一番評価できるところじゃないですかね。政治家にとって話すことは武器ですから、その武器を絶えず磨かないといけません。


 無駄のない発信で、明確に立ち位置がつくれて、リスクがない発信を絶えず磨いているんです。純一郎さんは、どちらかというと天性でやっているところがありますが、進次郎さんは、絶えず磨いている感じがします。


 たぶん、これからの時代の政治は、イデオロギーじゃダメなんです。英語でいうと、イデオロギーからアイデンティティーが問われる。アイデンティティーは、日本語で“立ち位置”を指します。イデオロギーは、どちらかというと“思い込み”に近いんですよね。周りが『役に立つね、この人は』というと、その人の立ち位置が出来上がるわけです。立ち位置は自分で決めるものではなくて、周囲が決めるんですね。


 そういう立ち位置を取れるかどうかは、リーダーにとってものすごく重要です。リーダーは、周りからある意味、生かされている。どういうことかというと、周囲から存在価値を認められている。支持が広がるリーダーというのは、立ち位置が明確なんです。


 ですから、政治家だけではないと思いますが、これからのリーダーは、イデオロギーよりも立ち位置を持つことが求められてくるだろうと思いますね。進次郎さんの(したた)かなところは、無駄のない発信、リスクのない発信です。何が最も強かな発信かがわかる人なんです。最大の発信は言葉じゃなく行動です。だから、ずっと被災地に行き続けることがどれだけ強烈な発信になるか。発信というものの本質を知っているような感じがします。もちろん、小泉元総理の影響もあると思いますが」


 小泉進次郎は、原則的にメディアの取材を一社独占では受けない。複数社でのインタビューしか受けていないのだ。その点について、田中は次のように分析する。

「原理原則からいうと、基本的に発信ということを考えたら、一社よりも複数あった方がいいし、独占でやると、マスコミとの等距離外交が取れなくなります。マスコミとの関係は等距離が基本なので、逆に、一社独占というのは、どちらかというと王道ではないんですよね。これは想像ですが、進次郎さんは、かなり中長期的に物を考えられる人だから、万遍なくいろいろなところに出たほうがよいと考えていると思います。


 もう一つは、複数社での“ぶら下がり”会見ですが、それはどういう場なのかというと、本人は別に記者会見を開かないので、ぶら下がりしかないわけです。ということは、見方を変えると、ぶら下がりしか限定されないわけです。だから、基本的には非常に情報発信を制限していますね。これは非常に重要な発想で、政治家も企業家もタレントもそうですが、発信があればあるほど劣化が激しくなる。その劣化の部分をどうマネージメントしていくかという戦略はすごく重要なんです。むやみやたらとメディアに出ないところが素晴らしいですね。


 進次郎さんの場合は、ぶら下がりの国会の中で、あるいは、現場に行ったとき、そこにたくさん聴衆のいる一瞬だけに勝負をかける。これは小泉元総理も同じですよね。そういうところが、非常に無駄のない発信=はっきりしたメッセージになっています。


 コミュニケーションの力学からすると非常に理に適ったやり方です。やはりコミュニケーションというのは、原理原則の力学が大きく作用するわけです。少なくとも、小泉父子の情報発信はそれに適っていることは事実です。


 危険のない有効な発信をどうつくるかというのは、侍が自分の武器である刀を絶えず磨いて、それをどう使うかの技を絶えず鍛錬するのと同じなのです」



 現在、安倍内閣の内閣官房副長官を務め、かつて小泉純一郎総理の郵政解散の広報を取り仕切った()(こう)(ひろ)(しげ)は、小泉純一郎と小泉進次郎父子をどう見ているのか。

「進次郎さんは、話し方やワンフレーズの切れ味のよさは、小泉元総理に似ていますね。それから、これはお父さんの教えかどうかわかりませんが、とにかく現場を見て、取り組もうとしていますね。そこが非常に立派だと思います。被災地にもよく足を運んで、現場を知った上で政策をつくるということに徹していますね。小泉さんの息子だという財産はすごいし、僕が見ていても、若いけれど、人脈構築で汗をかいていますね。彼は必ず大成すると思います。


 選挙の際にも、有力な弁士です。激戦地に入る弁士は、何票ひっくり返せるかという弁士でないとダメですからね。安倍総理が入ると、二〇〇〇票はひっくり返ります。ということは、いわゆる相手との差、つまりいってこいで四〇〇〇票ということです。それぐらいの効果が総理の遊説にはありますが、進次郎さんだって、一〇〇〇票ぐらいひっくり返せる効果は十分あると思います。


 また、小泉進次郎さんの登場で、二世議員についての議論も変わりましたね。二世議員でも良い人はいるという視点になりましたよね」



 小泉政権時代、自由党党首、民主党代表として激しく対峙した()(ざわ)(いち)(ろう)(現・生活の党と山本太郎となかまたち代表)も、実は小泉進次郎を評価している。

「彼は、いい感覚を持っている。やっぱりアジテーターとしてのパフォーマンスは、政治家に必要な一つの要因だからね。わたしは、それがないから、その点では彼を評価しています。


 ただ、まだ具体的な政策論は、全然聞いてないから評価のしようがないけれども。


 進次郎君は、雄弁だし、今も、岩手県担当の復興大臣政務官ですが、アピールするわけでもなく、メディアに取り上げられなくても、黙々と毎月、被災地を訪問しています。そういう面では、いい資質を持っている。小泉元総理には、そういう真面目さはありませんでしたから(笑)。


 まだ、若いから、しばらく一生懸命、本来の才能を磨くように、修行したらいいんじゃないかな。そうすれば、政治家として光る、いいセンスを持っていると思いますよ」


 脱原発の論戦を張る小泉純一郎には、自民党に所属する息子の進次郎がいる。可愛い息子の将来も考えずに、実の父親が政府自民党と反対の路線を打ち出すはずがない。


 小沢は思った。

〈小泉さんは、息子も脱原発の路線で行けると踏んでいるのだろう〉


 自民党の小泉進次郎復興政務官は、青年局長時代に被災地訪問団「TEAM‐11(チーム・イレブン)」を結成し、毎月一一日に福島、宮城、岩手の被災三県を訪問してきた。平成二五年九月三〇日に復興政務官に就任直後からも、精力的に被災地を訪問している。大震災と原発事故の惨状を目の当たりにし、数多くの被災者たちの声を聞き、検証してきた進次郎が、果たして党の政策を鵜呑みにし、原発推進に積極的な姿勢のままでいられるだろうか。それに遅かれ早かれ、日本はいずれ脱原発に向かって大きく舵を切っていかねばならない。


 父親の小泉純一郎元総理が「脱原発」を訴え始めたのは、進次郎が復興政務官に就任した時期とほぼ一致している。


 小沢は思った。

〈息子のほうも、いずれ脱原発を発してくるのだろうな〉


 人気のある進次郎の影響力は大きい。そうなれば自民党内の議論も国民の間でも脱原発の流れはますます大きくなっていくだろう。すると、今度は「内部告発」が出てきてこれまで(いん)(ぺい)してきた新事実がどんどん表沙汰になる可能性がある。そうなれば、日本は本当に脱原発への舵切りが実現するかも知れない。



 小泉元総理の次男の小泉進次郎について、財務事務次官を務め、小泉内閣の総理秘書官であった(たん)()(やす)(たけ)(現・日本たばこ産業会長)はどう思うか。

「小泉総理に似て、弁舌さわやかで、言葉の表現力が優れています。


 積極的に被災地を訪れていることからもわかるように、とても行動的だと思います。


 復興担当大臣政務官として、今年四月に開学した『福島県立ふたば未来学園高等学校』の設立にも尽力しています。


 小泉総理は、脱原発についての活動をしていますが、そのいっぽうで、進次郎議員は原発については、『オヤジのいう問題提起はそうだけれども、もし本当に原発を廃棄することになったら、自分は、詰めなければいけない話がたくさんあると思う。例えば、福島県(ふた)()(ぐん)(おお)(くま)町は三分の二の人が原発関連の産業で生活していた。そういう地域が全国にあるから、その地域をどうするか、米国との関係なども詰めなければいけない』といっていました。


 小泉総理は進次郎議員との考えの違いについて、『進次郎は、もう一人の人間なのだから、親が何を言おうが関係ない。戦国時代なんか見てみろ。信長は、一四歳で(うい)(じん)だ。進次郎は進次郎で考えればいい』とおっしゃっていましたね。


 もちろん、親子としては、とても仲の良い親子なのですが、一人の政治家、一人の人間として、尊重し合っていると思います」


 小泉純一郎は、進次郎にいっているという。

「人に会わないで、その人の評価をするな。まず会って、自分なりの評価を定めろ」



 自民党幹事長時代、石破茂は、筆者にはっきりと語った。

「小泉進次郎は、自民党にとっての財産だ。これから、何代か先には、自民党のトップリーダーとして小泉進次郎の名前が挙がっていたとしても、なんら不思議ではない。その意味では、今は自民党青年局長として、国会議員のみならず、全国にある地方組織の若手を束ねるとともに、党の政策や姿勢を全国に知らしめる広告塔的な役割を果たしている。しかし、いつまでも青年局長をやらせるわけにはいかない」



 いっぽう、安倍官邸の一部には、次のような声がある。

「安倍さんの手で東京オリンピック実現に漕ぎつけた。二〇二〇年の東京オリンピックも、安倍総理の手で開催して欲しい。そのためには、安倍政権は九年は続けるべきだ」


 もし、安倍政権が九年続けば、ひょっとしてポスト安倍は小泉進次郎の可能性もある、との声もある。


 経団連の御手洗(みたらい)()()()名誉会長が、自民党の議員にいったことがある。

「小泉純一郎は、ある時に化けた。だが、進次郎は最初から化けている」


 筆者が、小泉純一郎元総理と行きつけの料理屋で飲んだ時、さりげなく「進次郎さんはどうですか」と()いた。


 小泉元総理は、好きな冷や酒を飲みながら、ぽつりといった。

「オレより上だな」


 筆者は、「小泉さんの若い時に比べてですか」とたたみかけて訊こうとしたが、そうした雰囲気ではなかったので、()えて訊かなかった。


 我が子ながらやるよ、という感じは十分に()み取れた。


 小泉政権時代、「偉大なるイエスマン」を自認していた(たけ)()(つとむ)幹事長の息子である衆議院議員の(たけ)()(あらた)は、進次郎から直接、聞いたことがある。

「オヤジがやらなかったことを、わたしはする」


 その言葉に、「オヤジを越える政治家になる」という強い意志を感じ取ったという。



  二〇一五年五月

(おお)(した)(えい)()

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