さて、本書の主題である朝鮮です。歴代国王のなかで、愛国心と自己犠牲の精神があり、大国を向こうに回して祖国の利益を守り抜いた国王は一人も発見できませんでした。李氏朝鮮から学べるのは、宮廷の派閥抗争の激烈さと、常に周辺の大国に翻弄される朝鮮半島の悲劇だけです。
十九世紀半ば、欧米帝国主義の波は東アジアにも押し寄せます。ヨーロッパ人は自分たちの対立を外の世界にまき散らしながら、地球上のあらゆる地域を侵略して回ります。これに危機感を抱き、行動に移したのは我が日本です。
江戸時代初期には日本を侵略できる国など存在しませんでした。ヨーロッパの白人がやってきても、江戸幕府は「武装中立」を貫きます。