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嘘だらけの日韓近現代史
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歴史
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おわりに――今、日本で何が起きているのか、そして「戦後レジーム」の正体

『嘘だらけの日韓近現代史』
[著]倉山満 [発行]扶桑社


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 安倍晋三政権が、平成二十六年四月からの消費増税を正式に発表してから、本書を脱稿することになりました。


 安倍政権は、アベノミクスに支えられて高い支持率を維持し、選挙に勝ち続けてきました。安倍首相がやろうとしている「戦後レジームからの脱却」、すなわち「敗戦国からの脱却」には多くの抵抗勢力が存在します。敗戦国である日本から利権を得ている勢力にとって、間違いなく安倍政権は邪魔な存在です。こうした抵抗を安倍首相は撥ね返し、かなりうまくやっていました。


 アベノミクスで景気は回復軌道にのりました。これは日本へのデフレ円高誘導で巨万の利益を得ていた中国経済を直撃し、さらに韓国をも危殆に瀕せしめました。


 日米同盟を強化しつつ、中韓以外のアジア太平洋諸国との友好関係を強化し、英仏をも招き入れるダイヤモンド構想は、久しぶりの自主外交の姿でした。


 長年の懸案であった集団的自衛権の解釈変更に関しても道筋をつけ、戦後最強の官庁と言われていかなる政権も介入できなかった内閣法制局長官人事で意中の人物を送り込みました。


 安倍首相の向かうところ敵なし、連戦連勝の強い政権でした。


 何より、もしかしたら日本は立ち直るかもしれないという希望を持てました。


 ところが――、



 安倍政権の命綱は、アベノミクスによる景気回復です。しかし、回復軌道に戻ったというだけで、まだまだデフレ不況のままです。飛行機で言えば離陸には成功したが、いまだ水平飛行に移れていない、最も危険な状態です。そんなときにエンジンを切ればどうなるでしょうか。墜落しかねません。


 アベノミクスにとってエンジンを切る行為とは、消費税の増税です。デフレ不況に突入した原因が三%から五%への消費税増税です。それまで自殺者二万人台だったのが、一気に三万人台に跳ね上がりました。今この瞬間に国民全体に波及する恒久増税を行うなど、自殺行為にほかなりません。経済学以前の知見です。それを八%にまで一気に引き上げようとしている。


 これは断言しますが、安倍総理は経済政策に関して、歴代首相のなかで最も正しい見識を有する政治家です。間違いなく、今の増税には反対です。アベノミクスの自殺行為だからです。政権の命綱で自分の首を絞めるようなものです。


 しかし、参議院選挙が安倍自民党の勝利に終わった直後の七月二十三日、首相の盟友を気取る麻生太郎財務大臣が即時の増税を迫りました。麻生財務相は盟友気取りの言動とは裏腹に、日銀人事など、常にアベノミクスを妨害してきました。むしろ、秋葉原で演説するとき以外は、財務省の強硬な増税派と同一歩調を取り続けてきたのです。閣内では甘利明経済財政政策担当大臣が続き、ほかの閣僚はいつの間にか口を挟めない状況になっていました。気がついたら首相の忠臣たちは引き離され、官邸に安倍首相と菅義偉官房長官が孤立しているという状況です。


 自民党は財務省増税派と一心同体の税制調査会を拠点に、一斉に増税を迫ります。税調には派閥の領袖が軒並み入っていますから、党内の圧倒的多数派が蜂起したのと同じ効果になります。保守派、リフレ派の安倍首相支持議員も次々と増税を首相に突きつけました。まるで草(スリーパー)として眠っていたスパイが、その本性を現したかのようでした。


 連立与党の公明党は挙党体制で増税要求です。自民党内で最も強硬に増税を要求した派閥は宏池会(公式には岸田派、実態は今でも古賀派)です。公明党も、古賀誠元議員も親中派として知られています。


 経済界でも、経団連と連合が揃って増税を突きつけました。


 マスコミでは、増税派の御用学者、御用評論家の意見だけが流され続けます。すべてのメディアは連日「予定どおりの増税」を報じ続けます。そして「首相、増税決断」の報道が十数回なされました。明らかに異常事態でした。


 まるで、「決まったことだから、選挙で選ばれた首相も逆らってはならない」とばかりに。何かに似ていると思えば、対米開戦も同じような空気だったのかと感じました。誰もがしてはいけないことだとわかっているのに、「決まったことだから」と押し付けてくる悪しき空気。これこそが日本を敗戦に至らしめ、いまだに敗戦国のままにさせているものの正体なのだ。社会の動向に関心を持っている人なら気づいたでしょう。


 そして、「東京オリンピックの開催が決まったから、増税をしても大丈夫だ」との、悪しき空気は圧倒的な圧力で首相に襲いかかりました。


 間違いなく、首相の本音は増税延期でした。しかし、抗しきれない何かがあったのか、圧倒的な悪しき空気の前に判断力が鈍ったのか。


 十月一日午後六時、自らの死刑執行書ともいうべき「予定どおりの増税」を記者会見で発表しました。前日まで首相官邸が否定し続けた日時です。いつもの自信満々の安倍首相とは違い、顔面は蒼白でした。原稿を読む声が棒読みで自分の言葉になっておらず、自信なさげに何度もトチっていました。それもそのはず、安倍首相の経済政策を一貫して追ってきた人間からすれば、安倍総理自身がこれまで否定し続けてきた内容を読み上げていたのです。「私は長州人です」と二度も繰り返していたのが物悲しい光景でした。



 安倍さんもダメだったか。


 私の率直な感想です。安倍内閣は決して弱い政権ではありません。むしろ、かなり強い政権でした。安倍首相個人も強く卓越した資質の政治家です。しかし、その安倍首相ですら「決まったことです」という同調圧力には逆らえなかった。


 今回の消費増税は、増税派も含めてすべての人が景気を悪化させると確信しています。しかし、日本の指導勢力のほとんどすべてが「決まったことです」という同調圧力で首相を押し切り、自ら宣言させた。


 その直後からメディアは、「安倍増税により庶民の生活が悪化する」と、さっそく安倍叩きを始めています。わかり切っていたことです。


 増税を押し切られた安倍政権を弱しと見たのか、公明党の山口那津男代表は、「中国や韓国の空気を読んで、靖国神社の秋の例大祭に行くな」と言いだしました。そして、そのとおりになりました。今回の増税問題は、単なる経済政策なのではなく、政権の浮沈にかかわる政局の次元だったのです。


 そして、安倍首相の増税決断に米欧のメディアは戸惑いを隠しませんでしたが、ひとり新華社通信だけは大はしゃぎでした。



 言うまでもなく、増税を最も推進したのは木下康司事務次官率いる財務省です。私はささやかながら大蔵省以来の財務省の歴史を研究していますが、木下次官ほどの実力次官をほかに知りません。強い安倍首相を倒した、さらに強い木下次官。十月一日の凄惨としか言いようのない会見を押し付けた財務省の強さ。もはやある種の尊敬の念さえ抱きます。


 木下次官が日本をどうしたいのか、あるいは何も考えていないのかはわかりませんが、いずれにしても財務省増税派の増税に対する強い意志だけは恐ろしいほど感じました。今回の増税騒動で、あまりにも多くの人が普段は「保守」だの「愛国」だの「日本」だの、綺麗事を言いながら、ある者は財務省を恐れ、ある者は同調圧力に転び、信念を曲げました。あるいは、最初からその人たちにとって、「保守」「愛国」「日本」は商売の道具にすぎなかったのかもしれません。


 安倍首相とともに戦後レジームから脱却する側に回ってくれれば、これほど頼もしい味方はいなかったと思うのですが、残念ながら財務省は麻生大臣を前面に押し立て省を挙げて増税を推進、そしてアベノミクスを腰折れさせる側に回ってしまいました。



 アベノミクス、ひいては日本の行方がどうなるのかわかりませんが、いずれにしても「戦後レジーム」の壁の厚さを思い知りました。しかし、誰が本物で誰が偽者かもまたわかりました。口では愛国を唱えながら、結局は日本を守ろうという本物の国士があまりにも少ないという、残念な結果でしたが、闇雲なファンタジーを描くよりも良かったのではないかと思います。



 何を、日韓近現代史の本で延々と時事問題の、しかもゼニカネの話をしているのかと思われるかもしれません。しかし、直接の軍事的衝突がない状況での経済政策は重要です。


 何より、なぜ今回の増税騒動をあえて「おわりに」で取り上げるのか。


 悪しき空気、誰もが悪いと思っていることを「これは決まったことです」と押し付けてくる同調圧力こそが、日本を敗戦へと追いやった、そしていまだに日本を敗戦国のままにさせている体制そのものだからです。


 それを歴代総理のなかで最もわかっている安倍晋三でさえ負けてしまった。だから問題にしているのです。


「嘘だらけシリーズ」三部作で私が問い直したかったのは、日本人の歪んだナショナリズムと歴史無知に基づくコンプレックスです。


 はっきり言えば、アベノミクスや増税延期ごときができなくて何が戦後レジームの脱却か、というのが正直な想いです。


 もしかしたら、増税による景気の腰折れを防ぎ、アベノミクスによる政権の求心力が続くかもしれない。自殺者は増えないかもしれない。そうあってほしいと思います。


 しかし、二十年続いた不況がさらに二十年続いたら。私と同い年のロストジェネレーション世代は、人生の最も重要な四十年間を希望のない時代として過ごすことになります。そうさせないためにも、私は今後も微力を尽くしたいと決意しています。


 私は自分にしかできない仕事は何かを常に問い続けています。


 今は、日本人が間違ってしまった歴史認識に対し、処方箋を示すことだと思っています。日本は敗戦国のままでいいのか。


 一人でも多くの日本人が、このことを考えていただけたら、私の仕事は成功だったのかなと自負しています。



 このような問題意識で次の著作では、いったん「嘘だらけシリーズ」を中断し、『保守の心得――戦後レジームを脱却する処方箋(仮題)』に取り組みたいと思います。御期待ください。



 なお、以下の文章、前書と瓜ふたつで申し訳ないのですが、またもや私の不徳の致すところの事実なので、心を込めてここに公式に謝罪(笑)を致したいと思います。



 最後に、扶桑社の犬飼孝司さんには三作連続で多大なご迷惑をかけながらも、ここまで仕上げていただきました。お詫びとお礼を記させていただきます。

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